「 尿路感染症 」と聞くと、あまり耳馴染みのない病気だと感じる方が多いと思います。しかし大人だけではなく、発症するのは乳児、つまり 赤ちゃん にもしばしば発症することがあるのです。
代表的とされるものは「膀胱炎」ですが、「たかだか膀胱炎だろう」と治療を行わずにいると、ほかの病気へと移行してしまうことがあります。今回は、誰にでもかかる可能性のある尿路感染症について詳しくご説明します。
尿路感染症―赤ちゃんから高齢者まで―
感染した部位によって変わる症状と高齢者の場合の自覚症状
原因となる細菌は、ほとんどが大腸菌だとされています。感染する経路は尿道⇒膀胱⇒尿管⇒腎盂とされ、どこに炎症が起きたかにより症状が変わってきます。
まず、感染経路の開始位置となる尿道です。これは尿道炎と言います。症状としては、排尿時の痛みと、それにプラスして尿道のかゆみや、尿道口からの膿があります。
高齢者や子供がかかる場合には、汚れた手指で陰部に触れたことが原因に上がる場合があります。
膀胱炎の場合にも、上記と同じく、排尿時の痛みがあります。頻尿や血尿の症状が出る場合や、残尿感等があります。尿道炎と膀胱炎には、発熱が伴いません。
尿道から膀胱に菌が侵入し、さらに進行が進むと腎盂腎炎という症状が起きます。腎盂腎炎の場合には悪寒や高熱があります。他には身体に震えが出る場合や、腰の痛み、混濁尿と呼ばれる不透明な尿が出ることもあります。
基礎疾患として前立腺肥大のある人が、排尿機能に異常が起こり、残尿量が多くなることで、尿路感染を併発しやすくなり、前立腺炎が起きる場合があります。前立腺炎の症状が出ると、悪寒や高熱が出る場合や、目に見える状態として、身体に震えがある場合があります。
他に外陰部の痛みや混濁尿が出る場合もあります。前立腺肥大は高齢の男性に多いとされます。
高齢者の場合、残尿感や痛みの訴えがあったり、尿が赤く見えたり、うっすらとピンク色になる程度の血尿が出る場合があります。膀胱炎は、尿道の短い女性に多いとされますが、60代を過ぎた位からは男女での差異はなくなってくるとされています。
高齢者の基礎疾患と尿路感染症発症により起こることとは
高齢者の方の中には基礎疾患として、泌尿器科以外の病気や、尿路感染症以外にも、泌尿器科の病気を患っている方が多いとされます。
それにより、急性の尿路感染症であったものがもともとの疾患と合併してしまい、複数の菌による「慢性複雑性尿路感染症」というものになる場合があります。
すると、通常であれば発熱のない膀胱炎が、腎盂腎炎に移行したため発熱してしまうということが起きます。基礎疾患の治療時に抗菌薬を投与された経験があると、尿の中に抗菌薬への耐性菌がでてきてしまい治りづらくなる場合もあります。
ですので、抗菌薬・抗生剤の投与は原則として、検査を行った結果で細菌尿や膿尿が認められていたとしても、発熱や腎部への疼痛等がない場合は行わないのが良いとされます。
基礎疾患として多いのは、尿路結石症や排尿障害といった、尿が出にくいものや膀胱に尿が多く残るもの、尿路悪性腫瘍などがあげられます。尿を出すための管を装着している場合や結石などの「異物」がある場合などに尿の流れに問題が起こります。
意思表示の難しい高齢者や赤ちゃん(乳児)
意思表示の可能な場合には、排尿時の痛みで自分の意思で受診をすることが可能ですが、認知症の高齢者や寝たきりで言語障害などのある高齢者、症状の訴えができない赤ちゃんの場合には日ごろの様子を見ながらの判断が必要になります。
一般的には38.5度以上の高熱が出る、怒りっぽくなる、機嫌が悪くなる、食欲の低下、嘔吐や下痢などの症状が見られます。一見すると風邪のような症状でもあるため、尿の色が赤くなる、尿から腐ったような臭いがするなどの特徴がないか、注意することが必要です。
おむつを装着している場合には、日頃からおむつの交換時の、清拭による外陰部等を清潔に保つ衛生管理が重要になります。
尿の停滞を回避するためにも寝たきりの高齢者の場合には体位交換の際に、上体を持ち上げることで腎から膀胱へと尿の流れを良好にするように心がけることも重要です。お茶などの利尿作用のある飲料を多く摂取することで排尿を促すことも効果的になります。
まとめ
尿路感染症―赤ちゃんから高齢者まで―
感染した部位によって変わる症状と、尿路感染症の種類
感染した部位によって変わる症状と高齢者の場合の自覚症状
高齢者の基礎疾患と尿路感染症発症により起こることとは
意思表示の難しい高齢者や赤ちゃん(乳児)