「糖尿病の合併症が起きる順番と目安の年数とは(前編)」では、糖尿病で起こりうる合併症をご紹介いたしました。後編では、 糖尿病 による 合併症 を 順番 をおいながらご説明いたします。
合併症へとつながらないよう、しっかりと予防いたしましょう。
糖尿病の合併症が起きる順番と目安の年数とは(後編)
糖尿病の合併症「神経障害」と年数目安
おおよその糖尿病の方が最初に起きる合併症が神経障害です。血糖コントロール不良によって、高血糖状態が続くことで、神経に障害が出始めるのです。
特徴的な症状として、両対、左右対称に起こるということです。手や指先、足の裏の痺れを感じるようになります。痺れをまとったような感覚や、ジンジンする、ピリピリする、熱さを感じるといった症状です。
他にも、足がつりやすいことがあげられます。この神経障害のことを「異常知覚」と言い、糖尿病が進行すると痺れや痛みを感じることなくなります。
小さなトゲが刺さっていたのを気が付かず、足が黒くなったので受診したら「切断」と言われたなんてことも少なくないのです。糖尿病の合併症の怖さは、感覚神経を鈍麻・麻痺させてしまうことです。糖尿病によって、感覚神経が麻痺すると、自律神経や運動神経にも影響が出てきます。
自律神経は、体のあらゆる調節機能になっているので、食べ物が飲み込みづらくなる嚥下障害や、発汗やめまいが起きるだけでなく、血糖コントロールを乱し、無自覚で低血糖状態や高血糖状態となり、無痛性心筋梗塞や無痛性の脳梗塞による突然死ということもあり得ます。
神経障害は血糖コントロールの状況によっても変わってきますが、合併症の発症目安として5年とされています。合併症の神経障害を有する人が、適正な血糖コントロールをすると、痺れ感を強く感じることがあります。これは、神経の感覚が戻ってきたために起こる現象です。
糖尿病の合併症を発症させないことが大切ですが、発症した場合であっても、血糖コントロールを含めた生活改善を行い、進行を遅らせる努力が必要です。
糖尿病の合併症「血管障害」と年数目安
血管障害というと、狭心症や心筋梗塞・脳卒中などが思いつきますが、これらの梗塞は比較的大きな血管で起こります。糖尿病の合併症における血管障害は、大小の血管において障害が出ます。
よく発症するのが、糖尿病性網膜症です。細小血管障害で、成人以降の失明原因の第1位の病気です。
中には、糖尿病性の白内障も存在しますが、どちらの合併症においても、徐々に見えづらくなり、やがて失明に至ります。見えづらくなってきた、針に糸が通せなくなったなどの自覚があるので容易に気が付くでしょう。
糖尿病の発症において、高血糖状態で血管に負荷がかかる上に、脂肪性物質(アテローム硬化斑)が形成されやすい状態が多く、血管の硬化現象によって、血管障害が起きやすいのです。
狭心症や心筋梗塞以外にも、下肢の血管障害が起きれば、歩行障害・壊死してしまうと、下肢切断ということもあるのです。
糖尿病と診断されたときに、高血圧・高脂血症もしくは、血液検査でコレステロール値の指摘を受けたことがある方は、「血糖・血圧・脂質」の3点においてのコントロールを注意深くコントロールしていく必要があります。
指摘されない場合であっても、今後の合併症リスクを下げるためには、食事や運動などでコントロールをするのが望ましいでしょう。血管障害の合併症の発症目安は7年くらいとされていますが、状態によっては急にということもあるので注意が必要です。
糖尿病の合併症「腎症」と年数目安
糖尿病性腎症と言えば「透析」を思いつかれる方も多いですが、実際に糖尿病による腎症で透析を受けておられる方は、透析患者の方全体の30%になります。透析になると制限がたくさんあって、大変そうだとアバウトなイメージでおられる方も少なくありません。
糖尿病性腎症になったら、すぐ透析になるわけではないのが現実です。腎臓において、血液内の不純物を取り除く役目を担っている糸球体の機能が低下することで発症します。尿中にふくまれる血性たんぱく質(アルブミン)が少量ずつ出始めるのです。
たんぱく質が顕性症状となる頃には、尿試験紙で容易に判断がつくようになります。たんぱく質が尿中に多量に排泄されるために、血中のたんぱく質不足から、むくみが発生します。この状態においても、食事指導や服薬による指導があります。
糸球体の機能が低下・停止すると、ろ過が出来なくなり体に不純物が溜まった状態の尿毒症すなわち腎不全になります。このままでは生命に支障が出ると医師が判断したときに、透析が開始されます。
合併症の腎症の発症目安は約10年と言われていますが、適正なコントロールを行っていた場合にはこの限りではありません。透析は血糖・血圧・脂質などに加えて、生活上における行動制限も多くなるので、合併症の予防に努めることが大切でしょう。
糖尿病の合併症は予防が肝心
糖尿病の診断を受けたら、合併症の予防に努めていくことが肝心です。糖尿病が治るなどの謳い文句をよく聞きますが、糖尿病は今の医学ではまだ根治に至っていません。だからこそ、血糖や血圧などの健康管理が重要です。
合併症の発症する順番は神経症状・血管障害・腎症ですので、遅らせることは十分可能です。血糖コントロールができていたとしても、感染症や受傷への注意は怠れませんが、入浴時に体に傷がないかなど確認する習慣をつけることで悪化や最悪の事態は免れるでしょう。
糖尿病においては、血糖値ばかりが注目視されますが、体重や食事量・飲酒を「適正にする」ことを意識することが望ましく、食事に偏りや運動不足であることも否めません。
極端な方法は長続きしませんので、自身が糖尿病を意識し問題点を明確にすることで、合併症予防への道筋が見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
糖尿病の合併症が起きる順番と目安の年数とは(後編)
糖尿病の合併症「神経障害」と年数目安
糖尿病の合併症「網膜症」と年数目安
糖尿病の合併症「腎症」と年数目安
糖尿病の合併症の予防が肝心