近年、膵臓の疾患にかかる高齢者の割合が増加の傾向にあり、膵臓がんでは患者数のうち8割を高齢者が占めています。 膵臓の疾患を早期に発見する上で、「アミラーゼ」の数値が指標のひとつなっていることをご存じでしたか?
今回は アミラーゼ の基礎知識と、その数値が 高値 になる原因、またなり得る可能性のある疾患について詳しくご説明していきます。
膵臓の健康を左右する!?アミラーゼが高値になるのは何故?
アミラーゼの基礎知識と高値になる原因
そもそもアミラーゼとは、膵臓と唾液腺からの分泌物のひとつで、私たちが普段食べている食事からデンプンなどの糖分を分解し、消化を行ってくれる酵素でありがたい存在なのです。
しかし、本来唾液腺や膵液に含まれているアミラーゼが、何らかの異常により血液中に流れ出すことで、血中のアミラーゼの数値が高くなり、膵臓か唾液腺、どちらかに異常をきたしている可能性を示唆しています。
また尿中にもアミラーゼは排出されるので、両方の値を比べることでより精密に調べることができます。
血液中に含まれるアミラーゼのうち、膵臓由来である「P型アミラーゼ」が約40%、唾液腺由来である「S型アミラーゼ」が約60%を占めています。
血液検査を行うことで、いずれの型のアミラーゼの数値が高いか、低いかで膵臓と唾液腺のどちらに原因があるのかを調べることができます。
アミラーゼの数値は暴飲暴食や喫煙、ストレスが原因で高くなると言われており、またさまざまな病気が潜んでいることがあります。
血中におけるアミラーゼの基準値は男女ともに40~132U/Lが平均的です。腎不全や高齢者の方の場合、アミラーゼを尿中に排泄する機能が低下するので、その値はやや高値~180になる傾向にありますが、年齢による変動は比較的緩やかです。
ではここでは冒頭に述べたように、とくに膵臓由来であるP型アミラーゼが高値になることで考えられる疾患についてみていきましょう。
急性膵炎
急性膵炎とは、その原因の多くは飲酒と言われていますが、他にも胆石や、原因が特定できないものがあるとされます。いずれかの原因により、アミラーゼを含む膵臓の消化酵素が自身の膵臓を消化してしまうことで発症します。
ほとんどの場合みぞおちから上腹部への激しい腹痛を伴い、嘔吐・吐き気や背中の痛み、発熱、食欲不振などの症状がみられます。
また、アミラーゼ数値は平均の5~10倍に上昇します。特に男性に多くみられる病気と言われています。平均年齢は62.4歳でとくに70歳以上の高齢者の方は重症化しやすい傾向にあり、その原因のひとつに痛みに対する感覚が低下しており、初期症状が現れにくいこととされています。
慢性膵炎
慢性膵炎の場合は、膵臓の細胞が破壊されることで繊維化し、機能が低下して繰り返し炎症が引き起こされるものを指します。
アミラーゼの数値は平均の2~3倍の値に上昇するとされていますが、急性期には急性膵炎と同程度の数値を示すことがあり、末期の場合には逆にその数値が低くなることが見られます。
症状としては、倦怠感、腹痛、下痢などがあげられ、食後にとくに痛みがでることが多いようです。
膵臓がん
膵臓がんは、初期症状に特徴的なものがなく、早期に発見することが困難ながんのひとつであると言われています。きわめて予後が悪く、5年生存率は5%と部位別がんの中でも最下位です。
食欲不振や背中の痛み、黄疸、嘔吐・吐き気、体重減少などがみられることもありますが、他の疾患でもみられる症状であり、またある程度進行してから出現するようです。
アミラーゼの数値は平均の2~3倍値になりますが、患者のうち高値になるのは20~30%であり、また数値の上昇は初期のみで以降は低値になる傾向にある為、がんであるかを調べるにあたってひとつの指標として捉えられています。
冒頭で述べたように、膵臓がんはとくに高齢者の方に多くみられる疾患です。他のがんであれば、高齢になるにつれ進行はゆるやかになっていくと言われていますが、膵臓がんは年齢に関係なく進行が早いことが特徴的です。
どのような人がなりやすいか、という点では未だ研究途中ですが、要因のひとつとして糖尿病の既往歴がある方や身内に膵臓がんの方がいるような場合はリスクが高いと考えられていますので、定期的に検査をすることがなによりも早期発見のために重要といえます。
まとめ
膵臓の疾患と密接に関係するアミラーゼの高値
アミラーゼの基礎知識と高値になる原因
急性膵炎
慢性膵炎
膵臓がん