ベル麻痺 は、顔面の片側が麻痺してしまう病気ですが、ほとんどの場合で治療しなくても自然に治ってしまいます。ただし、高齢者になるほど後遺症が残る割合が高くなりますので注意が必要です。
また、顔面神経に完全麻痺があるような重傷の場合には、深刻な顔面神経麻痺や味覚麻痺が残ってしまうこともありますので、早期に治療することが大切です。
ベル麻痺ってなんだろう?
ベル麻痺とは?
ベル麻痺とは、特発性片側性末梢性顔面神経麻痺とも呼ばれる原因不明の顔面神経麻痺であり、片側の表情筋を動かすことができなくなります。
顔面神経麻痺には脳腫瘍や脳卒中、ライム病によるものなど原因がはっきりしているものと原因がはっきりしないものがありますが、ベル麻痺は顔面神経麻痺のなかでも原因のはっきりしないもののことです。
ベル麻痺の特徴とは?
ベル麻痺になった人の最も顕著な特徴は、麻痺した側の顔面が垂れ下がるということです。他にも、目が閉じにくい、涙が止まらない、口角から唾液が漏れる、味覚が無くなる、などの特徴があります。
顔貌が大きく変化するために患者のショックも大きく、生活に及ぼす影響も大きい病気ですが、実はそのほとんどが治療しなくても自然に治癒してしまいます。
ただ、不全麻痺の状態であればほとんど後遺症も無く治癒しますが、完全麻痺になってしまった場合には多くの場合後遺症が残ってしまいます。
また、初期には不全麻痺であったものが、一週間程度経過してから完全麻痺に移行してしまうケースもあり、軽度の麻痺だから安心とは限りません。重症化しないためには早期に耳鼻科に受診することをお勧めします。
どんな治療をするの?薬物治療
ベル麻痺の治療には、急性期では副腎皮質ホルモンと抗ウィルス薬が使用されますが、その有効性や薬剤の適量については不明確な面が多いというのが現状です。
原因不明の顔面神経麻痺であるために、有効な治療法も明確になっていないというのも仕方がないのかもしれませんが、現状ではこの治療が最も有効だとされています。
抗ウィルス薬の使用については賛否両論ありますが、急性期の患者の唾液や治療で採取された神経組織の一部から単純ヘルペスウィルスが検出されることから、ウィルスとの関連が強く疑われ、抗ウィルス薬を使用することが推奨されています。
その他の治療法
薬物以外の治療法としては、星状神経ブロック、鍼灸、高圧酸素療法などが行われていますが、有効性についての信頼に足る報告は無く、こういった治療を行うべきかどうかの判断は困難な状況です。
ただ、高圧酸素療法については、ランダムな比較実験での有効性が報告されており、完全治癒率が高くなると言われています。
ただし、入院が必要となることや、気圧外傷や酸素中毒など副作用もゼロではないことなどマイナスとなる要因もありますので、薬物治療よりも勝るのかどうかは微妙なところです。
後遺症は残らない?
顔面が大きく変化することから、後遺症のことがとても心配になりますが、不全麻痺の状態であれば、治療しなくてもほとんどが良好に治癒します。
ただし、完全麻痺がある場合や、不全麻痺から一週間程度経過して完全麻痺に移行する場合には、予後はかなり悪くなってしまいます。
後遺症を残さないためにも、一週間程度経過してから悪化する危険を考慮して、早めに薬物投与を行うという選択が推奨されています。10日間ほど副腎皮質ホルモンと抗ウィルス薬の点滴を行うのが一般的です。
後遺症が残ったら
完全麻痺であっても、薬物投与を続けることで1ヶ月以上経ってから回復する場合もありますが、中には全く回復しないケースもあります。回復しない場合には、慢性の顔面麻痺、味覚麻痺などの後遺症が残る他、角膜感染症などの合併症も起こってきます。
合併症の角膜感染症に関しては、睡眠時に閉眼することができないためですので、程度に応じて眼帯やテープ、眼軟膏、人工涙液などを使用します。
また、重度の顔面神経麻痺に対しては、顔面神経減荷術という外科的治療も大学病院で行われており、術後半年程度で顕著な回復を得ているとの報告があります。
こんな後遺症も
隣接する神経同士がくっついて治癒していまい、病的共同運動が残ってしまう後遺症もあります。こういった場合、口を動かそうとして目も一緒に動いてしまうとか、食事をしていて涙が流れてしまう、顔面の運動に伴って耳鳴りやめまいがする、などといったことが起こります。
こういった後遺症に対しては、ボツリヌス毒素療法や手術的治療が行われています。ボツリヌス毒素療法を行うには投与資格が必要になりますので、専門的な治療を行っている医療機関を選ぶ必要があります。
手術的治療に関しても、経験の豊富な医師や医療機関を選ぶことが大切です。
まとめ
ベル麻痺ってなんだろう?
ベル麻痺とは?
ベル麻痺の特徴とは?
どんな治療をするの?薬物治療
その他の治療法
後遺症が残ったら
こんな後遺症も