微小血管狭心症 という病気をご存知ですか?更年期の女性に起こりやすい病気として、近年注目されています。夜、寝る前など安静にしているときに起こりやすく、急に胸が痛くなり、発作の時間が長いことなど、新しく認知されたこの病気の特徴をまとめました。
閉経前後は要注意!女性に多い微小血管狭心症とは?
微小血管狭心症とはどんな病気でしょう?
微小血管狭心症は狭心症の一種です。一般的に知られている狭心症は冠動脈という大きな血管が狭くなり、心筋が酸素不足を起こし胸に痛みが生じる病気ですが、微小血管狭心症は、名前が示すとおり、冠動脈ではなく、小さな細い血管が痙攣を起こし狭くなり発作を起こす病気です。
一般的な狭心症と違い、検査をしても異常が出ないため、診断がつきにくいのも特徴です。日本循環器学会が2010年に発表したガイドラインで初めて病名が書き込まれたばかりの新しい病気のため、まだまだ認知度が低く、医師の間でもあまり知られていない病気のひとつです。
どんな症状が起きるのでしょう?
一般的な狭心症は、階段を上がる・重いものを持ち上げる・強いショックを受けるなど、心臓に大きく負担がかかったときに発作が起きることが多いです。
一方、微小血管狭心症では、寝る前などの安静にしているときに発作が起きます。胸が締め付けられるような痛みが出たり、針で指されるような痛みが出たりします。
また、胸だけではなく、肩・あご・歯・背中などの広範囲にわたって痛みが出ることもあります。胃に不快感があり、吐き気がしたり、喉が詰まったように感じるなどといった症状があらわれることもあります。
発作の際に出るこれらの症状が一定ではなく、発作ごとに違った症状になることもあります。いわゆる不定愁訴といった症状が多いのも特徴です。
痛みが続く時間は人によって異なりますが、一般的な狭心症の痛みが5分程度と短時間なのに比べ、10分~20分と長い時間続くことが多く、半日くらい痛みが続くこともあります。
検査では診断がつきにくい病気です
狭心症の発作が起こっているのに、検査結果では異常が発見できないのが、微小血管狭心症の特徴です。つまり一般的な狭心症の病変がなく、症状のみがある場合に疑われる病気なのです。
発作を起こしているときでも心電図に異常が出ないこと。心臓カテーテル検査でも冠動脈には狭窄がみられないこと。痙攣を誘発させる試験をしても症状が出ないことが確認できて、はじめて微小血管狭心症の可能性が考えられます。
X線血管造影検査では写らないような細い血管が原因と考えられるため、病変を確認した上での診断ではなく、推定にとどまるしかありません。
このため、診断がつきにくく、病気自体の認知度が低いことと相まって、胸の痛みはあるのに「異常なし」といわれることも多い病気です。
微小血管狭心症は更年期に起こりやすい病気です
微小血管狭心症は閉経前後の更年期の女性が発症しやすい傾向にあります。30代なかばから60代なかばの発症率が高く、ピークは40代後半から50代前半です。原因は更年期に女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減少するためと考えられています。
エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれ、女性らしい体を作るホルモンです。その働きの中に、血管を広げるという作用があり、その分泌量が減ることで血管が収縮しやすくなります。エストロゲンは45歳~55歳くらいまでの間に分泌量が大きく減少します。
微小血管狭心症の発症年齢と重なるため、関連性が高いと考えられています。
有効な治療と予防法
微小血管狭心症では、一般的な狭心症の治療薬であるニトログリセリンの舌下が効かないことが多く、このことからも狭心症ではないと判断されがちです。ニトログリセリンは冠動脈など大きな血管を広げる作用がありますが、小さな血管には作用しません。
そのため、微小血管狭心症では、血管を拡張する働きがあるカルシウム拮抗薬が有効で、副作用も少ないことから多用されています。さらに、状態によっては女性ホルモンの補充なども強化治療として考えられます。
予防としては高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病にかからないような生活をすることが重要です。
また減少したエストロゲンの代替として、似た作用を持つイソフラボンを多く含んだ食品をとるなど食生活を見直すことも有効です。ストレスや睡眠不足を避けて健康的なミドルエイジを楽しみましょう。
まとめ
閉経前後は要注意!女性に多い微小血管狭心症とは?
微小血管狭心症とはどんな病気でしょう?
どんな症状が起きるのでしょう?
検査では診断がつきにくい病気です
微小血管狭心症は更年期に起こりやすい病気です
有効な治療と予防法