膀胱がんの話に入る前に泌尿器系のことを説明しておきましょう。泌尿器系は尿を作る腎臓、そして、その尿を排泄する尿路があり、尿管、膀胱、尿道からなっています。
私たちの身体は生命活動を日夜維持しています。そうなれば当然老廃物が生成されるわけで、これを体外へ排出するわけですが、その役割を、腎臓をはじめとするに泌尿器系が担っています。
尿は腎臓が作っています。普通であれば一日当たり1.5L程度の尿は腎盂、尿管、膀胱、尿道を通って体外へ排出されます。
今回のテーマである膀胱がんは、その尿路の一角で重要な役割を果たしている膀胱に出来るがんで、最近は増加傾向にあります。
その 膀胱がん の機序、そして、現在の膀胱がんの治療はどうなっているかを明らかにすることにいたします。
膀胱がんは怖くない!でも、油断しないで!(前編)
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膀胱がんって、どんな病気?
膀胱はこぶし大の大きさで、泌尿器系の中の腎臓が作った尿を貯蔵する働きをしています。この膀胱の容量は個人によって違います。おおよそ500ml前後が普通で、ここに300~400ミリ程度貯蔵されると脳に信号が伝わり、今度は逆に排尿指令が伝わり尿を排出するわけです。
膀胱がんは、その膀胱内の上皮内腔の移行上皮に発生するがんです。この膀胱がんは泌尿器系尿路がんの中でも比較的死亡率が高いのが特徴です。年齢別に見て行くと、60歳を超えると増加傾向を示し男女比は圧倒的に男性にほうが多く、約4倍となっています。
膀胱がんは大きくは2種類のタイプに分けられます。一つは表在性の膀胱がんで、膀胱内腔にカリフラワーのような形をしている乳頭状に増殖し、膀胱がんの7割はこの表在性がんで、膀胱筋層に浸潤していないため、直接生命に影響を与えるようなことはありません。しかしながら、再発をすることが多く、それも何回も繰り返すのが特徴です。
もう一つは浸潤性の膀胱がんで、これは性質が悪く膀胱内腔の壁に浸潤するがんで、進行も早く、その上転移がリンパ節や他の臓器に見られます。
これら二つとは別に数は少ないがんがあります。上皮内がんというものがあります。これの特徴は腫瘍の形にはなっていません。CT検査で診ても画像的には腫瘍を同定できないことが多く、浸潤性のがんに移行しやすいといわれています。
膀胱がんの症状
膀胱がんの症状の特徴として一番に挙げられるのが血尿です。もちろん肉眼で視認できるような場合もありますし、採尿した尿から顕微鏡下で視認する場合もあります。その血尿ですが自然に止まることもありますので、油断をしないで、引き続き診断を受けることを怠らないようにすることが大事です。
中でも症状がなくて血尿が見られる場合が最も多く、過去の報告の中には、このような症状で受診した患者さんの13~28%で膀胱がんが見つかったことがあったそうです。
つまり、視認できる血尿は病気を知らせるサインでもあり、治療を求めるサインでもあります。膀胱がんでは85%が血尿の視認から発見されている事実があります。
次に挙げるのが膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感)です。中でも排尿痛は排尿時に痛みを感じます。特に、排尿終了時に痛みがひどくなるようです。
この痛みは膀胱炎の痛みと似ているらしいのですが、膀胱炎の場合は抗生剤の服用でよくなる場合がありますので、それの服用で治る気配がないとしたら、膀胱がんが疑われることになりますので、改めて医師の診断を早めに受けるようにするのが賢明です。
それから頻尿です。実際には乏尿なのですが1時間もしないうちにトイレに行きたくなります。ひどい時は我慢ができずに漏らすような事態になることも起きるのです。それだけでなく、夜間頻尿も多くなってきます。これらの症状は前立腺肥大症の症状にも見られますので注意をしてくださいね。
次いで、背部痛を感じることがあります。これは膀胱がんが拡大すると尿管口を閉じることがあります。それによって、腎臓で作られた尿が尿管を通って膀胱までに到達しないことがあるのです。その結果、腎盂、尿管が拡張するようになると、背中に鈍痛症状が出る水腎症になります。
中編では、膀胱がんの原因と膀胱がんのステージについてご紹介いたします。
まとめ
膀胱がんは怖くない!でも、油断しないで!(前編)
膀胱がんって、どんな病気?
膀胱がんの症状