大動脈解離のほとんどは、高血圧による動脈壁の損傷・劣化が原因で起こります。胸部、背中の肩甲骨に激痛が発生します。 大動脈解離 を治療しないとき、2週間以内の 生存率 は約25%です。退院2週間後の5年生存率は60%で、10年生存率は40%です。
大動脈解離の合併症による2週間以内の死亡率は約33%です。
大動脈解離が起こるとその生存率は?(前編)
大動脈解離とは
体幹中心にある大動脈は外膜・中膜・内膜の3層構造になっています。何らかの原因で、弱くなった中膜隙間に血液が流れ、外・内膜が解離する状態が大動脈解離です。突然の激痛におそわれ、その解離部位が移るにしたがって激痛も移動し、他の関連症状を発現します。
血管の外側に解離・破裂すれば、心膜炎の重篤な合併症である心タンポナーデ、血胸などの症状が、また、解離により心臓、脳、肝・腎臓などが虚血状態となり、心筋・脳梗塞などの症状を呈します。解離が心臓にまで達すると、大動脈弁に大きな損傷を与えます。
今回は、大動脈解離が起こった場合の生存率についてお話します。
大動脈解離が起こると、脳、心臓などの主要臓器に血液が流れなくなり、全身状態が急激に悪化します。大動脈解離を発症すると、医療機関到着前に約20%の人が死亡します。すぐに治療が実施されない場合、10人中9人は助かりません。
治療を受けた場合でも、解離が発生した部位によって生存率は異なります。心臓に近い部位で発症の場合では約70%、離れた部位では90%の生存率です。
治療後も解離の再発、動脈瘤が形成したり、また、大動脈弁の閉鎖不全などの合併症などにより、5年生存率は約60%、10年では約40%となっています。
冠動脈が閉塞して心筋が虚血しやすいこと、大動脈弁の閉鎖不全が起こりやすいことなどから、心臓に近い部位で解離が発生すると、低い生存率になります。
大動脈解離の原因
大動脈解離の主な原因は、加齢にともなう動脈硬化で、大動脈中膜を損傷、脆弱化することです。長引く高血圧は、中膜の弾性繊維へ大きな負荷となり動脈硬化を起こします。過度な塩分摂取も動脈硬化の原因になります。
他の原因として、大動脈縮窄や動脈管開存症などがあります。遺伝的に大動脈壁が弱い病気にマルファン症候群があり、高頻度で大動脈解離、大動脈破裂、水晶体のずれ、気胸などが起こります。
大動脈解離の分類と特徴
大動脈解離は発生した部位に基づき、スタンフォードA型とスタンフォードB型に分類されます。
A型は、解離が発生する範囲が上行大動脈で、その発症割合は約60%となり、医療機関到着前の死亡率は70%に、院内死亡率は約35%となっています。これに対し、B型は下行大動脈などに発生し、発症割合は38%程度です。
病院到着前死亡率は約7%、院内死亡率は約15%となっています。発症から2週間の急性期の治療は、A型ではステントグラフ治療などの手術で、B型では主に内科的治療です。
まとめ
大動脈解離が起こるとその生存率は?(前編)
大動脈解離とは
大動脈解離の原因
大動脈解離の分類と特徴