「 動悸とは、高齢者にみられる症状と疑われる病気について(前編)」では、 動悸とは どのような症状であるのかご紹介いたしました。後編では、動悸から疑わられる病気や治療についてお伝えいたします。
動悸とは、高齢者にみられる症状と疑われる病気について(後編)
動悸から疑われる病気について
時に重大な病気による動悸があります。放置することなく早めの受診をお勧めしますが、ここでは動悸から疑われる病気についてご説明いたします。
心臓に原因のある場合の病気と心臓以外に原因がある場合の病気の大きく2つにわけてみました。
心臓に原因がある場合
心不全、弁膜症、肥大型/拡張型心筋症、不整脈(心房細動・心房粗動・発作性上室性頻脈・期外収縮・徐脈頻脈症候群など)があります。
心不全というのは病名ではありません。心臓のポンプとしての機能が低下することで全身の臓器が必要とする血液を十分に供給できない状態のことです。その原因として心筋梗塞や心筋症、弁膜症などがあげられます。
心不全は左心室の収縮機能が低下し、十分な血液を送り出せない収縮不全と考えられていました。しかし、最近では、心不全の症状があるのに収縮機能は正常である拡張不全というタイプの心不全が多いことがわかってきました。
拡張不全といわれるこのタイプは、高齢者や女性が高血圧や糖尿病を持っている方に多いという特徴があります。弁膜症になってしまうと、冷や汗や吐き気をともなうこともあります。
不整脈のなかでも脈拍の間隔が平常時よりも短く、速く打つものを頻脈と呼びます。何度も繰り返しているのにそのまま放置すると痛みやめまいなどが伴ってきて重篤な症状になる可能性もあります。
極端な頻脈の場合は急に意識がなくなったり失神することがあります。夜のトイレやお風呂で動悸がして気分が悪くなるなどの症状がある場合は、心疾患の可能性が高くなります。
心臓以外に原因がある場合
貧血(出血・鉄欠乏性貧血など)、甲状腺機能亢進症、呼吸不全、心臓神経症、パニック障害、低血糖などがあります。
鉄欠乏性貧血では、息切れ、疲れやすい、全身倦怠感、顔面蒼白などが症状としてあげられます。もちろん激しい動悸がして歩くのも困難な場合もあります。
発汗過多やふるえ、集中力散漫、体重減少、眼球突出などが見られる場合は甲状腺機能亢進症が疑われることもあります。
パニック障害の場合は、呼吸困難、ふるえ、不安感、冷や汗、吐き気などの症状がでます。
これは疑われる病気の一部であり症状はそれぞれ違う場合もありますので、取り返しのつかない状況になる前に身体の異変に気付き、早期に対策をとるようにすることが一番大切なことです。
動悸の診断と治療について
動悸の診断には動悸を感じたとき、症状が発症しているときの状態がとても重要になります。いつ始まったのか、症状は続いているのか、繰り返しているのか、どのようなことをしているときに起こったのかなどは忘れずにメモしておくことも大切です。
診察は脈を診たり、心音を聞いたりして心臓の病気の可能性を判断します。全身のむくみや貧血などの有無を判断します。心臓の病気が否定できない場合は、心電図をとったり心臓の超音波検査をおこなったりして心臓の動きや血液の逆流がないかということも調べます。
受診をしたときに動悸がなくても、心電図をつけて1日を過ごす24時間心電図検査を行うこともあります。また、心臓以外の原因が考えられる場合には、血液検査や貧血、血糖値、甲状腺ホルモン量の測定を行います。
治療については動悸のすべてが治療を必要とするわけではありません。しばらく様子をみる場合もあります。内服薬を処方される場合もありますし、心臓に原因がある場合、心臓以外に原因がある場合とそれぞれの病気にあった治療が行われます。
薬を処方された場合には、きちんと決められた用量を忘れずに服用してください。ご高齢になると服薬を忘れがちになる可能性もありますが、症状を悪化させ入院ということになりかねませんので、是非忘れずに飲むよう心がけていただきたいです。
規則正しい食事や減塩、禁煙などにも注意をし、血圧・体重の管理もできればしてみてください。年齢のせいだと勝手に決めつけず、調子がおかしいとおもわれる場合には早期受診をしてください。
今回は、動悸の高齢者にみられる症状と疑われる病気についてご説明をさせていいただきました。誰でも感じる動悸ではありますが、年齢をかさねるにつれてある意味、すこしの息苦しさに慣れてしまっている状態である可能性は否定できません。
なによりも重篤な病気のサインである場合も想定して、症状に敏感になってもよろしいのかもしれません。病院にかかったとしても何もなければそのぶん安心して生活が送れるからです。
まとめ
動悸とは、高齢者にみられる症状と疑われる病気について(後編)
動悸から疑われる病気について
動悸の診断と治療について