腹水 とは、種々の疾患(具体的な症状)により、お腹(腹腔内)にたまる液体のことです。腹水が多くなると、お腹の皮膚がふくらんで仰臥位(上を向いて寝た状態)では、おヘソのまわりが平坦になって、カエル腹のようになり、呼吸が苦しくなります。
腹水は肝硬変を原因とする場合が最も多いです
腹水の成分と役割
通常、お腹(腹腔)には20~50mlのお水が常に滞留しています。この量は一定に保たれています。腹膜から出た腹水は再び腹膜から吸収されます。
腹水の体内での役割は、主に腸が動く時の潤滑油のような働きがあります。つまり、お腹には肝臓とか胃、すい臓、大腸、小腸などの臓器が収まっていますが、これらが直接接触しないように腹水で守られているわけです。
腹水の成分は症状によって異なりますが、低濃度のアルブミンや白血球と上皮細胞です。アルブミンとは血漿タンパクです。血液中のタンパク質の半分以上を占めています。血管内の水分量を調節する大事な働きがあります。
血管内の水分量を保ったり、余分な水分を血管の中に取り込んだりして調節しています。顕著な例は肝硬変でアルブミンが少なくなると血管の外に漏れた液を血管内に戻すことができなくなり、腹水が溜る原因となります。
アルブミンは肝臓内で合成されます。血液中の浸透圧を調整する働きがあり、お腹に水が溜るということはこのアルブミンが正常に作られていないことを示しており、肝臓に異常があるということになります。
白血球とは、血液の細胞成分の1つで、白色に見え、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの異物を排除する働きを持っています。上皮細胞とは、体の表面を覆っている表皮、内臓の粘膜をつくっている上皮を含めて上皮細胞といいます。
腹水が溜る原因
腹水が溜るという状態は内臓のどこかに異常がありますよ、というシグナルです。腹水が溜るメカニズムは、何らかの原因で腹膜から出てくる腹水よりも、再び腹膜に吸収される腹水の方が少なくなって、徐々に腹水の量が増えていくという流れです。
そしてお腹が張って、内臓や上部にある肺を圧迫して息苦しくなり、お腹が痛くなったりします。さらに症状が進むと、血行不良や水分過多による体の冷え、疲れ、倦怠感、全身のむくみ、食欲不振などの症状が表れます。
腹水が溜る原因で最も多いのが肝硬変です。肝炎が進行して肝硬変になると門脈圧亢進になり、水分を外に出してしまうためにお腹に水が溜りやすくなります。
門脈とは、大腸から肝臓に至る血管のことです。この門脈と言われる血管から分岐している血管内の血圧が異常に高くなることを門脈圧亢進といいます。門脈圧亢進は脾臓の腫れを起こすことがあります。
脾臓は体の左の上腹部にあり、腎臓と接しています。脾臓は脾静脈を通って門脈に血液を供給しています。そのため門脈圧の亢進が起こると脾臓が腫れてくるわけです。
門脈亢進になる原因の1つはお酒の飲み過ぎがあり、これが肝硬変を悪化させ、重度の場合は静脈瘤破裂に至る場合もあります。
肝硬変以外の原因
上記の肝硬変を原因とする腹水は非炎症性腹水といいます。非炎症性腹水には肝硬変以外にうっ血性心不全、ネフローゼ症候群、卵巣過剰症候群などを原因とする腹水もあります。
うっ血性心不全とは、いろいろな原因により心臓のポンプとしての働きが低下して、全身に血液を送り出す力が弱くなって肺や末梢組織にむくみが表れ、息苦しくなる状態のことです。
ネフローゼ症候群とは、尿にタンパク質が大量に出てしまい、血液中のタンパク質が減少するため、むくみや血液中のコレステロールなどの糖質の上昇がある病気です。まぶたの腫れや手足のむくみ、腹が張るなどの症状もあります。
卵巣過剰刺激症候群とは、不妊治療などで使われる排卵誘発剤の副作用で、排卵誘発剤を使用することにより多数の卵胞が大きくなって卵巣が肥大して腹水が増加する症状のことです。
炎症性腹水
もう1つ、非炎症性腹水に対して、炎症性腹水があります。
細菌性腹膜炎、がん性腹膜炎、胃がん、肝がん、大腸がん、胆道がん、膵がん、急性膵炎、卵巣がん、子宮がん、などでも腹水が溜る現象がみられます。炎症によって血管内の成分が外にもれてしまい、その液が腹水としてお腹にたまるわけです。
まとめ
腹水は肝硬変を原因とする場合が最も多いです
腹水の成分と役割
腹水が溜る原因
肝硬変以外の原因
炎症性腹水