私たちは多くの常在菌とともに過ごしています。健康な時には常在菌に勝る抵抗力がありますが、防御機能が弱ったときには常在菌が増殖して病気を発症してしまいます。
今回は高齢者によくみられるカンジダ症の原因や、 カンジダ症状 についてご説明します。
高齢者にみられるカンジダ症状について
カンジダ症とは?その原因
カンジダ菌は健康体にも存在している常在菌のひとつで、皮膚表面や口腔、膣などに存在しています。真菌のひとつであり元々は病原性の強いものではありませんが、何らかの原因で異常に増殖してしまうと発症します。
原因のほとんどは日常生活によるもので、風邪や疲労、ストレスなどで免疫機能が低下したときに皮膚や粘膜に発症します。他には抗生物質を内服した後には常在菌がいなくなるために、カンジダ菌が異常に増殖して発症することがあります。
ステロイド内服中、糖尿病、がんの放射線治療や化学療法でも抵抗力が落ちて発症しやすくなります。高温、多湿な環境で、摩擦の生じやすい局所に病気として症状があらわれます。
高齢者では口腔内、とくに入れ歯の手入れが不十分であると、入れ歯の下にカンジダ菌の増殖が起こります。加齢により唾液の分泌量が減少することで、口腔内の自浄作用が低下し、より発症しやすくなってしまいます。
皮膚カンジダ症
高齢者によくみられるのが間擦疹(かんさつしん)といわれるわきの下、乳房下、股など摩擦が生じる部分の皮膚カンジダ症です。肥満の人などの首や股、腰が曲がった人や麻痺がある人の拘縮部分などの皮膚のくびれやしわにも発生しやすいです。
症状はくびれやしわに沿って赤くジクジクただれたような状態で、湿った白っぽい薄皮が付着しています。時に小さな水泡がみられることもあります。
その他には、おむつを着用している場合に同様の症状があらわれることがあり、おむつカンジダ症と呼ばれます。おむつ部分は不衛生で高温多湿、またおしり拭きが繰り返されることで皮膚炎を起こしやすくなっています。
水仕事をよくする場合に起こりやすいのが、指の間や爪周囲のカンジダです。指の間は利き手の中指が好発部位です。白くふやけた薄皮が付着し、はがれるとジクジクしています。蒸れやすい足にできることもあります。
水虫と似たような状態です。カンジダ性爪囲爪炎(そういそうえん)は、利き手の人差し指、中指、薬指に好発します。爪周囲の発赤と腫脹から、爪の根元が黄色っぽく変色し、表面に凹凸ができるようになります。
粘膜カンジダ症
口腔カンジダ症は舌、頬の内側、口蓋(口腔の上壁)に好発します。白いぬか状のコケのようなものが粘膜を覆い、つまむと膜状に剥がれ、粘膜は赤くなっていることがあります。
ヒリヒリとした痛みや、味覚が鈍くなるこがあります。しばしば痛みを伴わないこともあり、高齢者は自覚していないこともあります。
高齢者は口角の下垂により、口角炎を起こしやすいです。口角炎は口角の赤みから、悪化すると潰瘍を形成することがあります。
ブドウ球菌など、さまざまな菌が原因となって炎症を起こしますが、高齢者の口角炎はカンジダ由来であることがよくみられます。白いコケ状のふやけた皮や、口角の皮膚粘膜の赤いただれはカンジダ性口角炎の特徴です。
他には陰部カンジダ症があります。女性に多くみられ、膣や外陰部に発症します。かゆみやヒリヒリした症状があり、白いカッテージチーズ状、ヨーグルト状のカンジダ症特有のおりものがみられます。
病院で診察を受けましょう
カンジダ症の診断は顕微鏡での検査が最も重要なポイントです。白癬との区別が難しいこともあります。早期に適切な治療を行うことで治癒する疾患です。
治療はカンジダに抗菌力のある外用剤が選択されます。外用薬は軟膏、クリーム、液剤、ゲル剤などさまざまな形状があります。
皮膚カンジダ症も口腔内のカンジダ症も表在性の場合は外用剤の使用で2週間適度で治癒します。広範囲のカンジダ症や爪カンジダ症では抗真菌薬の内服を併用します。膣の場合は膣錠を使用します。
カンジダ症は再発しやすい疾患として知られています。症状が和らいでも医師の指示に従い、自己判断で薬の使用を中断するのは控えましょう。
再発・発症予防のためにできること
カンジダ症の予防は、カンジダ菌を増殖させないこと、感染しないように抵抗力をつけることが重要です。皮膚を清潔に保つことで皮膚のカンジダ症を予防しましょう。
通気性の良い下着でゆとりのある衣服を着用し、ムレを防いでください。清潔を心がけて、入浴後はしっかりと乾かしてください。湿度が高く不衛生であるとカンジダ菌の増殖しやすい環境になります。
夏の時期にはカンジダが発症しやすくなっています。粘膜、とくに口腔カンジダ症を予防するためには、口腔内のカンジダ菌を増殖させないために歯磨きやうがい、入れ歯を清潔にすることが重要です。
もっとも注意が必要なのは免疫力の低下です。普段から疲労をためず、栄養価の高い食事をして生活環境を整えられるよう心がけてカンジダ症を引き起こす要因を取り除くことが一番の予防法です。
まとめ
高齢者にみられるカンジダ症状について
カンジダ症とは?その原因
皮膚カンジダ症
粘膜カンジダ症
病院で診察を受けましょう
再発・発症予防のためにできること