効き目が高く副作用の少ないことで話題となっていたC型肝炎治療薬の ハーボニー配合錠 が、日本でも認可され、2015年9月に発売開始されました。
経口摂取のみの治療でほぼ100%治癒という実験結果の出ている画期的な薬です。その詳細を見ていきましょう。
C型肝炎治療率ほぼ100%のハーボニー配合錠とは
ハーボニー配合錠の特徴
ハーボニー配合錠は、ソホスブビルとレジパスビルを混合した、経口摂取型の直接作用型抗ウイルス薬(DAAs製剤)です。
今までのインターフェロン製剤の注射による治療方法は、インターフェロンが風邪をひいた時に体内で作られる物質のため、副作用としてインフルエンザ初期のような症状が頻発し、治癒率も30%程度でした。
近年では経口摂取薬との併用により90%以上の治癒率となりましたが、インターフェロンの副作用の問題は変わらず、治療は苦痛を伴いました。
ハーボニー配合錠は、インターフェロン製剤を併用することなく単独で使用でき、治癒率はほぼ100%です。副作用には鼻咽頭炎、頭痛、倦怠感などがありますが、インターフェロンを使用した治療法よりも副作用の症状が軽く、比較的苦痛の少ない治療法と言ってよいでしょう。
ハーボニー配合錠が効くしくみ
C型肝炎ウイルス(HCV)は自分たちだけでは増殖することができず、人の肝細胞を利用してHCVを複製することで増えていきます。
HCVは、感染した肝細胞内で複数のタンパク質を作り出し、その相互作用によってHCVを複製するための複合体を形成します。中でもNS3、NS5A、NS5Bなどのタンパク質は、HCV複製に重要な役割を持つことがわかっています。
ハーボニー配合錠の有効成分であるソホスブビルは、NS5Bポリメラーゼを阻害して、HCVの遺伝情報(RNA)が複製されるのを防ぎます。もうひとつの有効成分レジパスビルは、HCV複製複合体の中のNS5Aを阻害して、HCVを作ることができないようにします。
ハーボニー配合錠が有効な病型
C型肝炎かどうかは血液検査によって診断します。血液中のHCV抗体が陽性でHCV遺伝子検査も陽性だと、HCVに感染していると診断されます。
HCV遺伝子にはいくつかの型(ジェノタイプ)があり、それぞれ治療法が違うため、どのタイプのHCVに感染しているかも調べます。日本人のほとんどはジェノタイプ1か2で、内分けはジェノタイプ1bが70~80%、2aが10~20%、2bが10%以下です。
ハーボニー配合錠は、日本人罹患者の大半であるジェノタイプ1型に対して処方され、治癒率はほぼ100%です。
他の治療法で完治せずにウイルスが耐性を持ってしまった場合にも効き、副作用もほとんどないため、ジェノタイプ1型の第一選択薬となっています。
ちなみに、ハーボニー配合錠に含まれているソホスブビルは、ソバルディ錠400mgという製品名で販売されており、他の薬(リバビリン)と組み合わせてジェノタイプ2型の第一選択薬として使用されています。
つまり、飲み薬という比較的手軽な方法で、日本人のC型肝炎がほぼ確実に治療できるようになったのです。これにより、C型肝炎→肝硬変→肝がんという進行も食い止められ、肝がん患者の減少が期待できます。
ハーボニー配合錠の服用方法
1日1回1錠を12週間経口投与します。食後でなくてもかまいませんが、毎日決まった時間に服用し、飲み忘れに気づいたらすぐに服用し、翌日はいつもどおりの時間に服用します。次の服用時間が迫っているときは1回抜いて、1日2錠飲むことがないようにしてください。
重度の腎機能障害、透析が必要な腎不全の患者さんは、薬の血中濃度が高くなってしまいますので、服用できません。
リファンピシン(抗結核薬)、フェニトイン、カルパマゼピン(抗てんかん薬)、セントジョーンズワート(抗うつ)などは薬の効果を弱めるおそれがあり、一緒に服用できません。アミオダロン(不整脈治療薬)は不整脈が出現することがありますので、併用する際は入院して心電図検査をするなど、十分な注意が必要です。
他にも、胃酸中和剤、H2ブロッカー、強心剤、高コレステロール血症治療薬など、注意の必要な薬がありますので、医師に相談してください。
また、B型肝炎ウィルスに感染しているか過去に感染したことがある場合は、必ず医師に告げるようにしてください。
12週間服用したらさらに12週間経過観察し、ウイルスが検出されなければ治療終了です。薬を飲み始めてから約6か月で完治するということになります。
処方は1度に28錠・4週間分を出すことができ、1~2週間に一度通院するだけで、働きながら治療することができます。
ハーボニー配合錠の費用
発売当初は1錠約8万円の値段がついていたハーボニー配合錠は、2016年4月の薬価改定により約5万5,000円に値下げされました。12週間分84錠で約462万円です。
C型肝炎の抗ウイルス治療は医療費の助成が受けられますので、実際の自己負担額は、住民税の課税年額が23万5,000円以上の場合に2万円、それ以下の場合1万円となります。
医療費の助成を受けるには、医療費助成申請書と医師の診断書を、市町村の管轄窓口に提出します。認定基準や指定医療機関などがありますので、詳しくは病院にお問い合わせください。
まとめ
C型肝炎治療率ほぼ100%のハーボニー配合錠とは
ハーボニー配合錠の特徴
ハーボニー配合錠が効くしくみ
ハーボニー配合錠が有効な病型
ハーボニー配合錠の服用方法
ハーボニー配合錠の費用