「高齢者の肺がんの手術の判断とステージごとの治療法について(前編)」では、肺がんのステージごとの生存率についてご説明いたしました。後編では、 肺がん の 手術 方法とはどのようなものか、またステージごとの治療目標についてご説明いたします。
高齢者の肺がんの手術の判断とステージごとの治療法について(後編)
肺がんの手術方法とはどのようなものか
外科療法として、胸腔鏡手術というものがあります。胸に3~4か所ほど開けた小さな穴から胸腔鏡や手術器具を挿入し、モニターを見ながら肺がんなどを部分切除をしたり、肺や胸膜の組織や細胞の検査などが行えます。傷が小さいので術後の痛みが少ないのが特徴です。
患部の大きさは大きくても3cmくらいなので患者さんの負担も少なくてすみます。体力のない高齢者の方でも胸腔鏡手術なら体力的に耐えることができます。
もちろん入院期間が少なくてすむので患者にとってはとても有り難い手術方法といえます。胸腔鏡手術ができれば負担が少なくてよいのですが、外科医にとっては高度な技術を必要とされ、難しい手術になります。
人によっては、根治性という観点から病巣を含む肺葉とリンパ節群を切除するという開胸手術治療が一般的には行われています。
肺の中の病巣のみを部分的に切除することは、先ほどもご説明しましたが、身体への負担が最小限ですむため、できればその方法でがんの切除手術をおこないたいところではあります。
しかし、癌の初期段階以外では、がん細胞が完全に切除しきれないというリスクがあるため、開胸手術によって肺葉摘出がおこなわれます。
さらに、状況が重大な場合には、片側の肺を全摘出する手術がおこなわれます。体力のある若い方には、完全にがんの切除が見込めるのであれば、肺葉切除術や、肺の全摘出という方法がとられることもあります。
ただ、手術中の大量出血や術後縫合不全、胸の中に菌が感染する可能性があるという危険もあります。
片側の肺を全部とってしまうということは、がん細胞を残すリスクは下げることが可能ですが、患者様の今後を考えると、肺が片方しかないという生活はかなりの身体への負担が大きくなるということにもなります。
そのため、体力の弱っている高齢者にはリスクが高い場合もあり、根治治療とはいえ高齢者にはこの手術は進められない可能性は十分にあります。
肺活量が著しく低下することも考えると、高齢者の方に適しているかという判断は、先生やご家族にとっても重要な判断になるといえます。
高齢者の肺がん治療のステージごとの治療目標について
肺がんはおおよそ高齢者の病気であるということを踏まえて、ステージごとの治療目標が大切になってきます。これは、ご本人の問題だけではなく、ご家族の問題としても重要なことです。
体力的にも70歳以上の高齢者の方は、動脈硬化や高血圧、心疾患、糖尿病などの別の病気を抱えていらっしゃる方が多いのです。
何歳までは手術が可能かという疑問については、意見やルールなどはないといえます。がんの種類やステージによっても治療の選択肢はいろいろと個別に変わってきます。
ステージⅠやステージⅡの場合であれば、外科的手術という選択があるでしょう。しかし、年齢的に手術自体に耐えられる体力があるかどうかという問題がありますし、術後の生活にどのような影響を及ぼすのかということも考慮しなければいけません。
手術をする、手術が受けられるということだけが高齢者にとってのベストな選択肢ではないということです。ステージⅢやステージⅣであるとしても、抗がん剤の治療を勧める場合もありますし、漢方薬によって免疫力自体を高めるという治療もあります。
身体に重度な負担をかけずに痛みを取り除きながら、日常生活を家族とともに生きるという選択肢もあります。
治療目標を明確にたてて、より自分らしく、自分の意志で今後の治療法などを決定されるべきことが、納得をして治療を進めるうえで、大切なことであるといえるでしょう。
今回は、高齢者の肺がんの手術の判断とステージごとの治療法についてご説明いたしました。
肺がんになってしまった場合の手術についてのことが中心になってはおりますが、手術ができることが、がんを克服できるということではありませんし、手術はできないけれども、人として楽しみながら生活を送るという選択肢もあるということを知って頂きたいと思います。
どのように肺がんに対して治療目標をたてるのかということは、大変難しいことではありますが、高齢だから、癌だからという悲観的な考えに陥ることなく、ご自分で選択をして納得のいく治療を進められることが一番重要なことかもしれません。
まとめ
高齢者の肺がんの手術の判断とステージごとの治療法について(後編)
肺がんの手術方法とはどのようなものか
高齢者の肺がん治療のステージごとの治療目標について