敗血症という病名を聞いたことがありますか?元気な人は通常発症することのない重傷感染症ですが、体力の弱っている高齢者にとっては、生命をおびやかす可能性がある怖い病気と言えるでしょう。
多臓器不全やショックなどの合併症もおこし、死亡原因となるような 敗血症 についてご紹介します。
敗血症ってどんな病気?
敗血症とは?
敗血症とは、細菌感染が血液や全身にまでおよび、全身性炎症反応症候群をおこしている状態をいいます。感染経路のほとんどは、体内にもともとあった感染部位からであり、そこから細菌などが血液に侵入して感染が全身に広がってしまいます。
感染が全身に広がった時点で既に重篤な状態ですが、多くの場合に敗血症性ショックやDIC、多臓器不全などの合併症を併発します。敗血症を発症する患者は体力や免疫が低下していることが多いため、このような状態になると治療成績も悪く、死にいたるケースが多くなってしまいます。
どんなときに敗血症になる?
例をあげてみると、肺炎や胆のう炎、腹膜炎などの重傷感染症がさらに悪化して全身に感染が及ぶような場合のほか、手術後の患者、中心静脈注射をおこなっている患者、糖尿病・悪性腫瘍・肝臓や腎臓の病気・膠原病などの基礎疾患を持つ患者、などが敗血症を発症するリスクの高いケースです。
言い換えれば、体内にもともと重い感染症がある場合、治療によって血液に直接感染がおこりやすい要因のある場合、体力や免疫力が低下している場合におこりやすくなります。
また、寝たきりの高齢者では、褥瘡の感染や重症の肺炎が原因となることもよくあります。老化や病気によって栄養摂取が困難になってくることから、体力低下のため褥瘡や肺炎も治りにくくなり、感染が広がるリスクも高くなります。
敗血症と菌血症
血液内に細菌があるという部分は一緒でも、敗血症と菌血症という2つの状態が存在します。
この2つの違いは何かといえば、敗血症は血液内で細菌感染をおこしてさまざまな症状があらわれている状態であるのに対して、菌血症は血液内に細菌が存在してはいるものの感染はおこしておらず無症状の状態をいいます。
通常は血液内に細菌が侵入しても、肝臓ですみやかに処理されるため、菌血症は一時的なものがほとんどで心配する必要はありません。
健康な状態であれば、菌血症から敗血症に発展することはほとんどありませんが、何らかの原因で体力や免疫が弱っていたりすると、細菌による炎症が全身に広がって敗血症を発症してしまうことがあります。
発症するとどうなる?
敗血症を発症するとまず、発熱、悪寒、ふるえなどの症状がおこりますが、高齢者では意識障害や食欲不振ということが発見の発端となることもあります。
状態が進むと、血圧の低下や意識障害などもあらわれ、血流の低下により低体温となることもあります。また、DICという血管内で血液凝固反応が無秩序におこる症状も併発することがあります。
血流の低下やDICによる血栓は脳や多くの臓器に機能不全をおこすとともに、血小板が多く消費されることによって出血傾向となり、ますます危険な状態になります。
また、全身感染症による感染性ショックや、原因菌から産生されるエンドトキシンなどの毒素によるショックなどもおこってくる可能性がありますので、いつ急変してもおかしくない危険な状態となってしまいます。
どんな治療をする?
敗血症の治療には、まず原因菌に対して一刻も早く抗生剤を投与する必要があります。ガイドラインでは発症から1時間以内に開始することとされており、投与開始が遅れると命の助かる可能性が大きく低下してしまいます。
抗生剤の投与は、本来なら原因菌を特定して行うべきですが、一刻を争いますのでまずは効果のある可能性の高いものを選択して投与します。検査により原因菌や効果のある抗生剤がわかれば速やかに切り替えます。
さらに、大量の輸液投与もすぐに行うとともに、ショックやDICを併発していれば昇圧剤やヘパリンなどの投与のほか、人工呼吸管理を行ったり、必要に応じてエンドトキシン療法も行います。
また、敗血症では免疫力が低下していることが多いため、免疫グロブリンなども投与することが多くあります。
まとめ
敗血症ってどんな病気?
敗血症とは?
どんなときに敗血症になる?
敗血症と菌血症
発症するとどうなる?
どんな治療をする?