日本では4人に1人がお年寄りという超高齢社会に突入しました。年を重ねると気になる関節の痛み、実は骨の変形が始まっているサインかもしれません。
今回は 変形性関節症 がどういったものか、そして今できることは何かを詳しくご紹介したいと思います。
意外と知らない?関節の痛みは変形性関節症が原因かも
年齢と共に上がる、変形性関節症の発症リスク
変形性関節症は身体の部位によって主に変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性脊柱症があります。加齢に伴って発症率が高くなり、高齢者が発症すると寝たきりのリスクが高くなります。
変形性関節症は発症原因が分からない1次性と、先行疾患を有する2次性に分類されます。2次性の先行疾患には関節リウマチ・先天性疾患などがあげられます。変形性関節症のほとんどが1次性によると言われています。
痛みの原因は関節構造の変化にある
変形性関節症は、簡潔に言うと関節軟骨や滑膜が傷付けられることで、痛みや変形を生じる病気です。主な訴えは痛みであり、自力で立ったり歩いたりできなくなることがあります。
関節は2つの骨が合わさる構造になっていて、それぞれの骨表面は関節軟骨という組織で覆われています。関節軟骨はガラスのようにツルツルしていることから硝子軟骨とも呼ばれており、関節が滑らかに動くために必要です。
関節軟骨が古くなると表面がザラザラになり、膝の曲げ伸ばしなどで関節を動かすとギギっと引っかかりを感じるようになります。さらに関節軟骨が剥がれると下の骨を通る神経が露出するため、関節を動かすたびに神経を刺激して痛みを発します。
また、関節を取り囲むものには滑膜という組織があります。滑膜は滑液という潤滑剤を分泌し、関節の滑りをより滑らかにする働きがあります。
変形性関節症によって滑膜に炎症がおこると、滑液が沢山分泌されるようになります。そうすると膝に水が溜まり、周りの組織を圧迫して痛みを生じることとなります。
発症しやすいタイプ・しにくいタイプ
変形性関節症になりやすい人にはいくつかの特長があります。例えば50代以降の閉経した女性では、男性より変形性関節症の発症リスクが高いと言われています。
閉経を迎えると女性特有なホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンは女性らしい身体を作る働き以外に骨を新しく作り替える働きがあるため、分泌量が減少すると骨がもろくなりやすいのです。
肥満体型の人も変形性関節症を生じやすいと言われています。体重が重い分、関節には押し潰されるような負担がかかってしまいます。運動不足を伴う場合、関節周囲の筋力が低下し関節の安定性が悪くなることで痛みや変形を生じやすくなります。
介護が必要となる原因第5位
現在、日本の総人口に占める65歳以上の割合は25%を超えていて、その数は増加しています。高齢者の寝たきり原因に、脳卒中・認知症・骨折と共に関節疾患があげられています。
加齢により身体機能が衰えると、認知症・誤嚥性肺炎・骨折など多様な病気を併発しやすくなります。変形性関節症もその中の1つであり、痛みや変形によって動くことが困難になると要介護状態になったり、寝たきりに繋がるのです。
手術になる前に、早期発見が大切
変形性関節症の診断には問診・レントゲン撮影・MRI・血液検査・関節液検査などを用います。
レントゲン撮影では、関節軟骨がどの程度摩耗しているかで重症度が分かります。骨の棘ができている場合の重症度は低いですが、関節の隙間がほとんどない場合は重症度が高く、手術適応となります。より詳しく関節軟骨の損傷を確認するには、MRIが用いられます。
血液検査では、CRP(C反応性蛋白)などの数値から炎症症状の有無を確認します。また、リウマトイド因子数値から、関節リウマチとの鑑別も行います。
関節液検査では、例えば膝に水が溜まっている場合に注射器で関節液を採取します。正常では無色透明ですが、変形性関節症では黄色く濁ったような液体になります。
手術を必要としない場合
一般的に保存的治療を行います。保存的治療は関節の可動性維持・関節周囲の筋力強化・自転車漕ぎが行われます。
可動性維持にはストレッチや関節を大きく動かす方法があり、関節周囲の筋肉が伸ばされたり縮んだりすることで、身体が固くなることを予防します。
筋力強化は、症状を有する関節の周囲筋を対象に行います。変形性股関節症では足を横に開く働きをする中殿筋の強化によって、股関節の安定性を保ちます。変形性膝関節症では膝を伸ばす働きをする大腿四頭筋の強化によって、膝関節を安定させます。
また、関節に痛みを有する人が持久力運動を行う場合、歩行では体重の倍負担が関節にかかるため、自転車漕ぎがオススメです。
痛みが酷くて立つことや歩くことが困難な場合、人工関節へすり替える手術が適応となります。手術を行う1番のメリットは痛みを軽減出来ることです。デメリットは数年に1度人工関節を取り替える必要があることと、術後に肺塞栓症や深部静脈血栓症のリスクがあることです。
まとめ
意外と知らない?関節の痛みは変形性関節症が原因かも
年齢と共に上がる、変形性関節症の発症リスク
痛みの原因は関節構造の変化にある
発症しやすいタイプ・しにくいタイプ
介護が必要となる原因第5位
手術になる前に、早期発見が大切
手術を必要としない場合