一昔前までは不治の病と恐れられた胃がんですが、今では消化器がんの中で大腸がんと並んで治りやすいがんの一つです。
もっとも、X線検査や内視鏡検査での診断レベルが上がっているため、集団検診などで早期に発見されることや、抗がん剤や手術法の進歩などが、治癒率向上の大きな理由になっています。
これまでは40歳以上を胃がん検診の対象年齢にしていましたが、厚生労働省は自治体胃がん検診を50歳代に引き上げることを決定しました。バリウムによるX線検査に加え、内視鏡検査を導入することで、検診間隔も一年に一回が二年に一回になります。
というのも、40歳代の胃がん罹患率が1990年に比較して半減していることから、今回の結論になったそうです。そこで、今回は日本人に多いと言われています「 胃がん 」について、検証することにいたします。
胃がんは治ると言っても、侮ってはいけません(前編)
胃がんって、どんな病気
そもそも胃壁は表面の粘膜と粘膜下層からなっており、その下に筋肉層、漿膜となっています。胃がんは胃の粘膜上皮に出来る悪性新生物で、死亡人数も肺がんに次いで二番目に多く、まだまだ怖いがんの一つに挙げられています。その胃がんですが、早期がんと進行がんに分けられます。
早期がんは、粘膜層、粘膜下層に浸潤の深さが留まるもので、通常、粘膜がんではリンパ節への転移率は低いもので、その進行度は肉眼的に、例えば隆起型、表面隆起型、表面平坦型、表面陥凹型、陥凹型に分類されます。
進行がんの分類は、ボールマン分類というものが採用されており、隆起型、潰瘍形成型、潰瘍浸潤型、浸潤型、分類不能の5段階に分けられています。
このように胃がんは胃の粘膜に発生するのですが、進行すると飛び出したり、筋肉層まで浸潤したりします。さらに進行すると胃壁を突き破り、大腸や膵臓などにも広がり、がん細胞が腹部全体に散らばります。そして、リンパ管や血管に浸潤してリンパ、血液に乗って転移をすることになります。
転移には3つあって、まずは血液で運ばれた結果、肺、肝臓に転移することを血行性転移と呼び、リンパ節に転移するのはリンパ性転移と呼びます。その他に、腹膜播種性転移というものがありまして、お腹全体に種をまいたようにがん細胞が広がることもあります。
この転移がんも無視できないもので、転移したがんが転移先で大きくなり、肝臓をはじめとする臓器の機能が落ち込み、腹水がたまったり、腸が狭くなったりして、患者さんの死に直結することがあります。
胃がんの症状
早期がんではほとんど自覚症状がありません。ところが進行がんになりますと、食欲不振、悪心、体重減少、腹水、腫瘤触知などが顕著にみられるようになります。また、貧血を伴うこともあります。
合併症を併発することも多く、通過障害(嘔吐)、出血(吐血、下血、貧血)、穿孔(腹膜炎症状)などと、他の臓器への転移や浸潤で起こる腸閉塞、黄疸、呼吸困難、腰痛などが挙げられます。
胃がんに特徴のある症状があるわけではありません。そこで、胃部の不快な感覚や空腹時や食後の腹痛、異常な膨満感などがある場合には、胃の検査を受けるようにしましょう。場合によっては、貧血を指摘された場合の精密検査で胃がんが発見されることもあります。
胃がんの検査と診断
大腸がんは食事の欧米化、中でも繊維質が少なく脂肪分が多い食物の関与が考えられていますが、食塩との関係が深いとされていた胃がんは、減塩傾向の中で減少していることが分かっています。
胃がんは発生に至るまでに20年の歳月がかかるとされていますが、これを診断するためには当然のことながら検査が必要となります。日本独自のX線二重造影法で胃集団検診や、人間ドッグで胃がんの早期発見、次に、内視鏡を使って病巣から組織を採取、診断を確定するために組織検査を行い、そして診断をします。
超音波内視鏡検査では、手術をする、しないにかかわらず、胃壁にどの程度の深さで浸潤しているかを調べます。腹部超音波検査、腹部CT検査は、胃周辺の肝臓、胆嚢、膵臓などの異常の有無をチェックする一方で、リンパ節の周辺の診断をするための検査です。
注腸検査では、大腸そのものの異常と、胃がんの腹膜転移が大腸にあるかどうかを検査するために行われます。
胃がんとヘリコバクターピロリ菌
胃がんとピロリ菌の関係は深く、2009年に日本ヘリコバクター学会が発表したところによると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんにもピロリ菌が大きく関与していることが記されています。
現に、ピロリ菌に感染している人と、そうでない人と比較してみると、30倍程度の開きがあり、ピロリ菌の除菌によって、胃がんの発生率が三分の一に減ることが分かっています。したがって、特に高齢者は、ピロリ菌の感染率が高いことから、除菌することを勧めます。
後編では、胃がんの治療法や後遺症についてご説明いたします。
まとめ
胃がんは治ると言っても、侮ってはいけません。
胃がんって、どんな病気
胃がんの症状
胃がんの検査と診断
胃がんとヘリコバクター