胃がんは早期発見すれば治癒率の高い病気なので、検診による早期発見は重要な課題です。しかし、働き盛りの若い世代と高齢者を同一に考えるべきではないでしょう。体力や残りの寿命が違いますので、検診による体への負担やその後の対応なども考慮する必要があります。
今回は、高齢者の 胃がん 検診 の考え方についてご説明します。
高齢者の胃がん検診の考え方
高齢者の胃がんの検診率と発見率
高齢者の胃がん検診については、受診率は65歳から69歳では減少傾向にあります。しかし一方で、75歳から79歳では胃がんの発見率が高いというデータがあります。
また高齢者の多い地区では胃がんの発見数が多いという報告もあり、高齢になるほど胃がんになる確率が高くなることが伺えます。早期発見という観点で考えれば、定期的な胃がん検診の必要性があるといえます。
しかしここで考慮すべきは、検診における体への負担や胃がんが見つかった後の治療に於ける肉体的精神的負担です。高齢者には体力的な不安があり、手術や抗癌剤による治療が可能かどうかという問題があります。
また何かしらの持病があるケースも有りますので、それらを総合的に考えて検診を受ける必要があるでしょう。
バリウム検査
この検査は胃がんの早期発見を一番の目的にしていますが、その他にも胃潰瘍やポリープ、胃炎十二指腸潰瘍なども発見できます。
胃は柔らかい組織なので、通常のレントゲン写真では写りません。ですので、炭酸によって胃をふくらませ、X線を透さないバリウム液を使い病変を発見しやすくします。この検査方法は短時間で検査できて、費用も余りかからないので自治体などの検診で多く行われています。
検査の前に炭酸を飲むのでゲップが出やすくなりますが、これを我慢しなくてはなりません。若い人でも辛いのですが、高齢者にはかなりの負担になります。また検査技師の合図に合わせてバリウムの飲むのですが、慌てると器官にバリュウムが入ってしまうおそれがあるので気をつける必要があります。
ごく稀ではありますが、高齢者が検診中に検査台から落下するという事故もありました。若い人にはなんでもないようなことでも、高齢者にとっては決して楽な検査ではないようです。
胃の内視鏡カメラの検査
昔に比べて胃カメラ検査はずいぶんと楽になりました。スコープが細くなり鎮痛剤によって体への負担が軽減されました。医療機関によって異なりますが、最近では鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡検査もあります。
鼻腔が狭い方にはかえって辛いので向きませんが、口からの挿入より嘔吐反射、いわゆるゲッとなることが少なくほとんど苦痛を感じずにすむようです。バリウム検査ではがんを見落としてしまうことがありますが、胃の内視鏡カメラによる検査では確実にがんを発見することができます。
内視鏡検査では、胃の組織を採取しますので、異常が見られる組織を検査してがん細胞かどうかの確認ができます。バリウム検査で異常が認められると、最終的には胃の内視鏡カメラの検査をすることになります。
その意味では、確実性と手間を考えるとはじめから胃カメラの検査をしたほうが良いということになりますね。
検査前の準備と検査後の処置
バリウム検査、胃の内視鏡検査ともに胃を空っぽにしておく必要があるので、前日の夜9時以降は絶食しておかなければなりません。バリウム検査は検査後に下剤を飲んでバリウムを輩出する必要があります。
胃カメラは下剤を飲む必要がありませんが、微量ですが鎮痛のための麻酔を使用しますので、検査後は30分から60分は水分の補給や食事はできません。
高齢者のがん検診の是非
若い世代と高齢者とでは、様々な点で違いがあります。物理的な違いだけではなく、人生観も大きく異なるでしょう。高齢になるとがん以外の疾病に罹るリスクも増えますし、がんに罹っても進行は遅くなります。それに胃がんの治療をすることで、かえって寿命を縮めてしまっては意味がありません。
果たして体に負担をかけてまで検診する必要があるのか、疑問を投げかける医療関係者もいます。残りの人生をどう生きるか、それは個々の価値観によって違います。検診を受けるか否かは、現在の健康状態や人生観を考慮して判断すべきでしょう。
まとめ
高齢者の胃がん検診の考え方
高齢者の胃がんの検診率と発見率
バリウム検査
胃の内視鏡カメラの検査
検査前の準備と検査後の処置
高齢者のがん検診の是非