胃がんは日本で最も患者数の多いがんで、現在もがんによる死亡者数は肺がんに続き第2位です。 胃がん の ステージ とは、がんの進行の程度を表す病期という意味で、ステージにより治療法が異なってきます。ステージ分類について、またその意味するところをご説明します。
胃癌のステージとその分類
がんの深さが転移に大きく影響します
胃壁は胃の内側から粘膜層→粘膜筋層→粘膜下層→固有筋層→漿膜(しょうまく)下層→漿膜、という構造になっています。胃がんはまず一番上の粘膜層に発生し、横に広がったあとに、どんどん外側へと向かって深く浸潤していきます。
がんが粘膜下層までで留まっている場合は、「早期胃がん」とされ転移率は低いです。固有筋層よりも深く浸潤していると「進行胃がん」と分類され転移のリスクが高まります。
固有筋層には血管やリンパ管が通っているために、がん細胞が血液やリンパ液の流れにのって転移しやすくなります。さらに漿膜まで達すると腹膜転移を起こし、全身にも転移するようになります。
胃がんに起こる転移は、リンパ行性転移、腹膜転移、血行性転移の順で多く起こります。このようにがんが胃壁のどこまで深く達しているかで転移と大きく関わり、ステージ(病期)も進行します。
胃癌のステージ分類
胃がんは、がんの深さ、リンパ節転移の有無とその範囲、遠隔転移の有無の3つの要素でステージ分類されます。ⅠA、ⅠB、ⅡA、ⅡB、ⅢA、ⅢB、ⅢC、Ⅳの8段階に分けられています。
がんの深さと転移リンパ節の個数によってⅠ期~Ⅲ期に分類されます。深くなるにつれて、胃の周囲の転移リンパ節が多くなるにつれて進行していると診断されます。
がんが胃の表面まで達して周辺臓器の肝、肺、腹壁に転移している場合や遠隔リンパ節への転移がある場合はⅣ期となります。
治療法や予後に関わります
胃がんはステージによって治療法が異なります。日本胃癌学会が「胃癌治療ガイドライン」を作成しており、ステージごとに最も効果があるとされる標準治療法が示されています。またステージは治療法だけでなく、治療後の経過や生存率にも影響します。
ステージⅠA、ⅠB、Ⅱまでは、胃の一部または全部を切除するだけで治療可能です。最近は早期発見できることで、内視鏡切除の術数も増加しています。
ステージⅢとなると胃だけではなくリンパ節や転移した他の臓器まで同時に切除する大きな手術が必要になり、それだけ体への負担が大きくなります。
術後の経過や病理診断の結果などでは補助的に化学療法を行う場合もあります。Ⅳ期の胃がんは遠隔転移があるため、すべてのがんを取り除く手術は難しく、化学療法が中心となります。
化学療法(抗がん剤治療)は標準治療が行われることが一般的ですが、臨床試験に参加して治療を行うという選択もできます。臨床試験とは厚生労働省の承認を得ることを目的に、未承認の薬を試す治験のことで、多くの施設で様々な薬の治験が行われています。
手術後も治療時のステージが進行しているほど、再発や転移の可能性が高まります。特に多いとされているのは腹膜転移で、胃壁まで浸潤したがんがおなかの中に残っていた場合に、そこで再びがんが育ってしまうことがあります。
早期発見が完治につながります
どのがんも進行しているほど治療が困難になり、生存率も低くなります。
胃がんの5年生存率を見てみると、ステージⅠでは約90パーセントと高い数値になっています。ステージⅡでは約62パーセント、Ⅲでは約40パーセントと低下します。ステージⅣではわずか7パーセントまで低下し厳しい状態となります。
胃がんは早い段階で自覚症状が出ることが少なく、進行しても無症状の場合があるので注意が必要です。胃痛や胸やけ、吐き気などの症状が主な症状ですが、胃炎や胃潰瘍の場合でも起こり、がん特有の症状ではありません。
早期胃がんは多くの場合、検診によって発見されています。胃の検査方法としては、胃X線検査や胃内視鏡検査が一般的です。症状の有無に関わらず、定期的な検診でより早く発見し、治療に繋げることが重要です。
まとめ
胃癌のステージとその分類
がんの深さが転移に大きく影響します
胃癌のステージ分類
治療法や予後に関わります
早期発見が完治につながります