胃がんの手術は進行の状況によって異なります。胃がんを早期発見できれば開腹せずに内視鏡手術で病変を取り除くことができますが、がんの浸潤の程度や転移の状況によっては、開腹手術による胃やリンパ節などの切除が必要になります。
しかし若い人と違って、高齢者の場合は体力面などを考慮する必要があります。今回は、高齢者の 胃がん 手術 に関する方法とその考察をご紹介します。
高齢者における胃がん手術の考察
QOLを保つことの重要性
QOLという言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、当事者が望む生活の質です。身辺自立や精神的な要素を含めた生活全般の豊かさといった概念です。
高齢者の場合、胃がんの手術は様々なリスクを伴います。仮にがんをすべて取り除けたとしても、長い入院生活を強いられることがあります。つまりその分だけ、家族と生活する時間を奪われるということです。
もちろん個人差はありますが、術後に体力が衰えて以前と同じ生活ができなくなるという不安も拭えません。つまり本人にとってのQOLが下がってしまうわけです。それゆえ、手術をためらう高齢者も少なくありません。手術をして延命するより、今までどおりの生活をして死を迎えたいと考える人もいます。
もし手術をすることによってQOLを低下させる結果を招くとしたら、手術する意味そのものが問われることになってしまいます。この点については本人と家族でよく話し合った上で、手術の是非を医師と相談することが大切です。
負担の少ない内視鏡治療
リンパ節に転移がないという前提ですが、内視鏡治療は体への負担が少ないので高齢者に適応しています。しかし内視鏡治療は、局所的な治療しかできません。
「胃癌治療ガイドライン」では、リンパ節に転移がなく潰瘍のない2センチ以下の分化型粘膜内がんが絶対適応病変とされています。また病変を完全に取りきれない場合があり、再発率が5~10%の頻度で認められます。2センチ以上の病変にも適応拡大されていますが、胃癌治療ガイドラインでは、あくまでも臨床治療として位置づけられています。
内視鏡治療による病変の完全切除の確率は100%ではありません。完全に病変を取りきれなかった場合は、外科手術をすることになってしまいます。
内視鏡治療の種類
内視鏡治療には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。EMR治療は比較的容易な切除術なのですが、1度の切除では取りきれない場合がありますが、ESDであれば1度の切除で完全に病変を切除することが可能です。
ESDの治療時間は2センチ以内の病変であれば、おおよそ30分から1時間程度です。2センチ以上だと1時間から2時間が目安になります。しかし出血が多い場合や潰瘍を伴う場合は、2時間以上かかることがあります。
胃がんの開腹手術
高齢者の場合、開腹手術によって体力を消耗すると肺炎など術後に合併症を伴うリスクがあります。そのような場合、入院が長期化してしまうケースが生じます。そして長い入院生活によって、運動不足により筋力の低下が認知症の進行を促すこともあります。
ですので、なるべく早期に退院できるように配慮することが重要になります。そういったことを踏まえて、高齢者の胃がん開腹手術においては治療と安全性のバランスを考慮する必要があります。
高齢者に開腹手術を施すのであれば、極力切除する範囲を小さくしつつ、出来得る限り取り残しを減らす高度な技術が要求されます。そして術後の抗癌剤については現時点では有効性が確立していないので、高齢者に対して副作用を考慮して使用しないという選択をする場合も多いようです。
まとめ
高齢者における胃がん手術の考察
QOLを保つことの重要性
負担の少ない内視鏡治療
内視鏡治療の種類
胃がんの開腹手術