「胃潰瘍」は日本人の10%程度が経験する病気だといわれています。そしてその経験者の多くが 胃潰瘍 からの 下痢 を発症します。
「下痢」そのものが耳慣れた言葉なのでいちいち重要視しない傾向もありますが、死因について厚生労働省の統計を見ると昭和45年(1970年)に男女総数で7.8%と、なんと糖尿病より多かったという結果でした。
その後時代の変化もあり、平成19年(2007年)には2.6%まで下がり糖尿病の11.1%より少なくなりました。しかし「下痢」というサインをあまり安易に受け止めない方がよさそうです。
※注=割合には十二指腸潰瘍を含む。
胃潰瘍が原因でおこる下痢にご用心
胃潰瘍になって発症する下痢の遠因
胃潰瘍で腹痛や吐き気がする、これはごく一般的に耳にする話です。しかし、下痢の症状を訴える人もじつは多いのです。
胃潰瘍は胃炎の延長線上にあるといってもいいでしょう。食べたものはおよそ4時間かかって胃で消化され十二指腸に送り込まれます。
通常は胃粘膜を痛めないように、内側(粘膜)は胃液によって傷つけられないようにする仕組みができあがっています。
しかし「下痢」になる遠因を探れば強いストレスとかピロリ菌などがあり、「下痢」は胃そのものの消化酵素や胃酸、粘液などの分泌がコントロール不能に陥るためだといわれています。
以下ではそのあたりから詳しく説明していきます。
消化バランスを崩すと下痢になる
食べ物の消化プロセス的にいえば、通常は胃自身が分泌する強力な胃酸や消化酵素などで食べ物を消化しますが、前述のように制御能力が低下し胃の消化力が潰瘍によって弱まってしまうと、胃の粘膜を防御する作業が機能しなくなってしまいます。
胃液と胃粘膜は実に微妙なバランスを保って消化活動をしています。医学的には胃液を攻撃因子、胃粘膜または胃粘液を防御因子と呼んでいます。
しかし、このアンバランスな現象が進行すると胃袋(内壁)自体を消化してしまうという皮肉な自爆的現象が起こるわけです。それが胃潰瘍を原点とした「下痢」またはゲップなどとなって体外に発信されていきます。
ピロリ菌から下痢になるケース
胃潰瘍が原因で下痢になる場合、通常は整腸剤の服用と安静が大事だと考えられています。
しかし、それでも一向に回復しない場合はピロリ菌の感染ではないかと疑ってみる必要が出てきます。ピロリ菌が関係した下痢の場合除菌しない限り完治しません。まずは検査が必要になります。
処方された薬がもとで下痢になる皮肉
胃潰瘍になって薬を服用したために下痢になったという症例がありました。ごく一般的な医師の処方では、胃の粘膜を保護する薬と胃酸を中和し分泌をある程度抑えるために効く二種類が渡されます。
下痢の原因は、前記の胃袋自体を消化する自爆現象はなくなりますが今度は胃酸濃度の低下が始まり、胃内部の殺菌力が弱くなって皮肉なことに「薬の副作用による下痢」が発症するのです。
胃内部の殺菌力は最も重要な部分で、通常の人は消化できる範囲の食べ物でも、わずかに混入している細菌やカビなどを胃酸で殺菌する作業ができなくなり、やがては消化不良、そして下痢へと向かっていくわけです。
「黒い下痢」
症例の中には「黒い下痢」ということもありました。このケースでは、一見するとタール状で真っ黒なドロドロした便が排出されました。ここまで症状が悪化すると、時々意識が薄れることもあったということです。
これは胃(または十二指腸潰瘍)からの出血が、胃酸による酸化変色をおこし黒色になって排便されるためです。逆にいうと、黒い下痢が出た場合はまず胃潰瘍などを疑うことも必要になります。
症例の中には、(普段どおりの生活の中で)息切れがする、ときどきめまいに襲われる、倦怠感がひどいなどはひとつのサインかもしれないので、「下痢」に至る前、早期に医師の診断を仰ぐことは大事なことです。
まとめ
胃潰瘍が原因でおこる下痢にご用心
胃潰瘍になって発症する下痢の遠因
消化バランスを崩すと下痢になる
ピロリ菌から下痢になるケース
処方された薬がもとで下痢になる皮肉
「黒い下痢」