「胃ろうで目指す生活の質の向上とその看護方法とは(前編)」では、胃ろうについてのさまざまな考え方をご紹介いたしました。後編では 胃ろう を造設した場合の 看護 における注意点や観察をするポイントについてご紹介いたします。
胃ろうで目指す生活の質の向上とその看護方法とは(後編)
胃ろう造設から1週間~看護する目線で気をつけること~
胃ろうを造設してから、1週間は瘻孔と言って穴を開けた周囲の観察や、カテーテルの回転やゆるみを持たせるほか、消毒が必要になってきます。在宅であれば、訪問看護師が必要な処置を行うので問題ないでしょう。
滴下される方が注意すべき点は、腹部に見えている胃ろうのバンパーが1~2cm程度のゆとりがあり、栄養剤を接続した際に、皮膚に対して垂直になっているかの確認が必要です。瘻孔に負担がかかると、皮膚トラブルや事故抜去の原因になり兼ねないので注意が必要です。
胃ろうの造設後、瘻孔の周囲のスキンケアの保持・皮膚状態の観察をし出血や浸出液の様子を見ます。造設当日は、やや出血が多いですが、徐々に止まってくるので心配いりません。
注入中の体位は上半身を起こした状態で、栄養剤の漏れがないように接続する、腹部不快症状の有無の観察や症状が起きた場合にはどのようにすべきなのか、使用器具の洗浄・消毒などを覚えなければなりません。
初めてのことで不安や疑問も多いので、気になることは医師や看護師に聞いて納得できるようにすることが大切です。皮膚状態の異常やバンパーが埋没しているなどのトラブルが生じた際にはすぐに医師または看護師に連絡をします。
胃ろうの管理方法~長期的看護ケア・観察ポイント~
胃ろうを造設し、しばらくすると瘻孔の状態も落ち着いてきます。胃ろうが完成したら合併症予防に努める看護ケアが必要です。1日1回バンパーを回して確認するのも慣れるころではないでしょうか。
瘻孔から微量の浸出液が出ることがありますが、ガーゼや在宅ではティッシュをチューブの挿入されている部分に巻いて対応します。引っ張り過ぎ、注入時に胃ろう周囲や胃壁を圧迫する角度で行うと微量の出血や瘻孔周囲がただれることがあります。
正しい方法で、清潔に保つことが大切です。経口摂取をしなくとも、口腔ケアは必要です。口腔内が汚染されていると、誤嚥性肺炎にかかりやすくなります。唾液の分泌量が低下、口腔内の自浄作用が低下するために、肺炎になりやすいのです。
経口から取れなくても、その方の大切な食事の時間であるという意識の働きかけも必要ではないでしょうか。痰がらみが見られる場合には、栄養剤の注入前に痰吸引を行います。
注入中に、痰吸引を行うことはしないでください。嘔吐や窒息、誤嚥の可能性があり大変危険です。
胃ろうにおける栄養剤の注入・滴下方法
胃ろうの栄養剤を準備します。水分量や栄養剤については、医師の指示通りに行う必要があります。栄養剤を容器に入れる前に、注入速度を調節するクレンメが閉じているか確認します。これが緩んでいると栄養剤が出てしまいます。
バックかボトルに栄養剤を注入し、できるだけルート内に入った空気を出して栄養剤で満たしておきます。こうすることで、げっぷや腹部不快症状を減らすことが可能です。
胃ろうの方が、必要であれば痰吸引(寝たきりの場合は必ず行うのが望ましいとされています)を行います。口を開いてもらい、痰を吸引します。ゴロゴロしていてとれない場合には、看護師に依頼しきちんと取り除いてもらうことが大切です。
胃ろうの方の上体を40~90度挙げます。膝下に脚まくらなどを入れて、ずり落ち防止や安楽に過ごせるように配慮をします。衣服をめくり胃ろう周囲のスキンケアをしてから、胃ろうと栄養剤の入った容器のチューブを接続します。
クレンメを開放し、1秒に1滴落ちるような感じで調節します。滴下・注入する速度が速いと、腹部膨満や下痢、腹痛を引き起こすことがあります。
栄養剤が冷たすぎても同様の症状が起きることがあります。寒い季節には、栄養剤を人肌程度に温めて滴下・注入することも大切です。
服薬は、40度くらいの微温湯で溶かしたものを専用の注射器でチューブから注入します。その後、白湯を20~30㏄注入し、チューブ内に薬剤が残らないようにします。
続いて水分を注入します。医師からの指示通りの微温湯を注入・滴下します。栄養剤と水分を混ぜて注入する方法もあるのですが、今回はわけています。発汗量が多いなど個人個人状態は違いますので、医師や看護師に相談されるといいでしょう。
発熱時など、脱水になりがちな病態時は受診時に、医師より指示をもらうことを忘れないようにしてください。
注入が終わったら、チューブを外しボタンやキャップを完全に閉めます。甘いと栄養剤が胃ろうから漏れることがあります。すぐに横になると、逆流して肺炎になることがあるので30分程度は上体を起こしたまま過ごすようにしてください。
栄養剤の注入が終わったら、容器を洗浄します。1日の最後の滴下・注入が終了したら洗浄し消毒剤で消毒が必要です。消毒が済んだら、水道水で洗い流し、容器に水を入れ、ルート内の消毒剤も洗い流し、その後吊るして自然乾燥させます。
口腔ケアのタイミングは、注入前の痰吸引時などご本人が良い時に1日3回行うようにしてください。
胃ろうのメリット・デメリットとは
胃ろうのメリットは何かと言われたときに、胃ろうをされる方自身にはメリットはないと言えるでしょう。自己(事故)抜去の可能性が少なくて済む、注入する看護側が楽であることです。デメリットは4か月から半年に一度バンパー交換があります。
胃ろう造設や交換時には強い痛みを伴います。胃ろうを造設しても、肺炎などの合併症を繰り返し意味がなかったケースも存在します。老人ホームなどの施設によっては、胃ろうがあると、入所を断られるケースもあります。
見た目のキレイさや動作の妨げにならないことよりも、体調管理の難しさを物語っているのではないでしょうか。
まとめ
胃ろうで目指す生活の質の向上とその看護方法とは(後編)
胃ろう造設~1週間~看護する目線で気をつけること~
胃ろうの管理方法~長期的看護ケア・観察ポイント~
胃ろうにおける栄養剤の注入・滴下方法
胃ろうのメリット・デメリットとは