拡張型心筋症は、それほど認知度が高い病気ではありませんが、拡張型心筋症の子供が米国で心臓移植をするために募金活動を行っているのをテレビや新聞でみかけることがあります。
今回は心臓移植が必要なほどの 拡張型心筋症 について、原因や症状、治療法についてご説明します。
心臓の筋肉がペラペラに薄くなる拡張型心筋症
なぜペラペラになるのかは、今でも判明していない
本来心臓は長い年月において絶えず動いていることから、丈夫で厚みのある筋肉で形成されております。拡張型心筋症は、何らかの原因により心臓の筋肉が薄くなり、血液を全身に送る力(拍出力)が弱まってしまいます。
なぜ心臓の筋肉が薄くなるかというと原因は不明です。現在のところ、判明している事実として、遺伝によるものと心臓の筋肉がウイルスに感染する心筋炎によるものなどがあげられます。
拡張型心筋症の症状は心不全症状
拡張型心筋症固有の症状はありません。最初から拡張型心筋症を疑う人はほとんど存在しませんので、あくまでも心不全症状があって受診し、結果的に拡張型心筋症であったということが現実的です。
心不全の症状は、肉眼で確認できるのは浮腫みです。他に浮腫みと併せて息切れや痰が絡んだ咳、進行すると安静時の呼吸困難などがあります。
拡張型心筋症は不整脈を発症することがあります。その中でも心室頻拍若しくは心室細動という致死的な不整脈に移行しやすく、拡張型心筋症の死亡例は、この心室性の不整脈によることが多いです。
まずは心臓の機能を意図的に抑えて負担をかけない
拡張型心筋症は進行性であり、心臓への負担が大きいと予後を悪化させます。病態によって異なりますが、心臓の機能を内服薬で抑えることで負担をできるだけかけないことが治療の手始めとなります。
心臓の機能を抑えることは日常生活にも影響し、運動は勿論、行動の範囲を狭めることになります。しかし、この治療はあくまでも心臓の筋肉が薄くなる進行を抑えているだけなので根治治療ではありません。
現在の根治治療は心臓移植となりますので、拡張型心筋症と診断された場合は、今までの生活をがらりと変える決断と病気に向き合う姿勢が必要となります。
人工心臓の存在
拡張型心筋症の末期においては、心臓のポンプ機能を失調してしまいます。そこで、心臓の拍出量をサポートする目的で開発されたのが補助人工心臓です。
血液が肺から戻ってくる心房と心臓が拍出した血液の通り道である大動脈にそれぞれ管を挿入し、体外の補助人工心臓に装着します。装着中は意識があったままで生活でき、この補助人工心臓により心臓移植を待つ方の延命に成功しました。
しかし、人工物なので長期的に使用するには限度があることや体内に入っている管が体外に出ているので感染の問題があり、何度か補助人工心臓を交換する必要性がありました。
また、ポンプ自体は小さいのですが、駆動装置が家庭用洗濯機並みに大きいものであったので、行動は拡大できず、ベッド上での生活が基本でした。
この体外式の補助人工心臓は、クオリティーが高いわりには行動の制限は改善されていない問題があり、それを解消する目的として、体内埋め込み型補助人工心臓が開発されました。
駆動装置も小型化に成功し、補助人工心臓を装着しても自宅で生活できるようになりました。現在では補助人工心臓を装着している方のほとんどは、この埋め込み型補助人工心臓です。
心臓の拍出力を高める治療
血液を拍出する役目がある右心室と左心室は、本来同時に収縮することで血液を拍出します。心不全状態だと心臓が右心室と左心室でズレが生じ、ポンプ効率が悪くなります。
そこでペースメーカーを体内に埋め込みし、左右とも同時に収縮できる治療があります。これを心臓再同期療法といいます。
適応は重症心不全であり、拡張型心筋症への適応もあります。この治療により心臓の収縮力、すなわち拍出力は高まりますが、拡張型心筋症の進行によってはペースメーカーに反応しないこともあり、最終的には補助人工心臓や心臓移植が必要となります。
まとめ
心臓の筋肉がペラペラに薄くなる拡張型心筋症
なぜペラペラになるのかは、今でも判明していない
拡張型心筋症の症状は心不全症状
まずは心臓の機能を意図的に抑えて負担をかけない
人工心臓の存在
心臓の拍出力を高める治療