「肝硬変は自覚症状で、すぐに判断ができます(中編)」では、肝硬変の発症理由や症状についてご紹介しました。後編では、肝硬変の検査や診断、治療法についてご紹介します。たとえ、 肝硬変 になっても、今では、病状管理技術や合併症に対する治療技術も進歩しています。 症状 のある場合は、すぐに医師に相談しましょう。
肝硬変は自覚症状で、すぐに判断ができます(後編)
肝硬変の検査と診断
肝硬変には特有の症状があります。手掌紅斑やくも状血管腫がそれです。これに、腹部を触診して肝臓が硬くなっていれば肝硬変を疑います。そして、診断を確かなものにするために、血液検査、画像診断を行います。
血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)での肝臓の炎症度を検査します。肝硬変ではASTが高くなって、ALTとの比が2倍ぐらいの差が出ます。
AST、ALTは炎症度ですが、今では肝臓の働きを測る、ビリルビン上昇やアルブミン減少、それに血液凝固因子で止血作用に関係がある、プロトロピンは肝臓で作られていますので、これが作用するまでの時間を計って、15秒を超えるようであれば、肝臓の障害を疑います。
画像診断では、レントゲン・内視鏡検査で食道静脈瘤、腹部エコー検査で肝臓の性状検査を行い、肝臓の凹凸や管内の不均質性、脾臓の腫大を、さらに詳しく検査するために、肝臓や脾臓の大きさを検査する肝シンチグラム、診断を確定するための腹腔鏡、肝生検を行います。
肝硬変の治療
肝硬変は治療によって、元の健康状態に戻すことはできません。その肝硬変の治療の目的は3つあります。一番目は肝機能の回復と維持、二番目は出血に対する予防、そして三番目は肝臓がんの早期発見と治療です。そして、QOL(生活の質)、ADL(日常生活動作)を考慮することと、合併症や肝臓がん対策をします。
代償期の場合は、過労を避け、生活を規則正しく行い、食事療法(高カロリー、高タンパク、ビタミン、消化しやすい食事)を順守して行けば、社会生活が可能になります。基本的には定期的に検査を受けるだけで、特別な治療は行いません。ただし、飲酒は厳禁です。
薬剤は障害に応じて、肝臓加水分解物、肝臓抽出薬、胆汁酸製剤、グリチルリチン製剤、その他に漢方薬やビタミン剤を用います。これによって肝細胞の炎症を抑え、肝がんの発症を遅らせます。
非代償期では入院が必要になります。治療如何では代償期まで回復出来ることがあります。しかしながら、肝硬変の特効薬は残念ながらまだありませんので対症療法で対応します。主に、黄疸、浮腫、腹水、肝性脳症対策です。
まずは安静が第一。食事は消化しやすいもので、栄養価のあるものを食します。水と食塩(6グラム以内)の量は控えます。たんぱく質も一日40グラム程度で済ませます。浮腫、腹水対策として利尿剤を投与します。
低アルブミン血症で利尿剤が効かない場合は、血清アルブミン濃度が3gdl以上になるように、アルブミン製剤を投与します。それでも腹水が軽減出来ない場合は、腹腔頸静脈シャント術、腹水濾過濃縮再靜注法、経頸静脈肝内門脈大循環シャント術などを考慮します。
ウイルス性肝硬変に対しては抗ウイルス療法を用います。C型肝硬変で腹水、肝性脳症、門脈圧亢進がない代償期では、インターフェロン(IFN-α、INF-β)が、代償期・非代償期B型肝硬変は核酸アナログ製剤が使われます。
肝性脳症の治療
肝性脳症とは意識障害が進み昏睡状態になった場合のことで、アンモニア等の有害物質が原因となります。昏睡から覚醒させるために、高アンモニア血症対策を施します。というのも、有害物質は腸管で生成されるので、便秘にならないようにすることが大事です。
この際に、排便を促したり、有毒な細菌の繁殖を抑制したり、アンモニアの吸収を抑える、緩下剤のラクツロースを経口投与します。また、血液中のアミノ酸のバランスをコントロールするために、特殊組成のアミノ酸製剤(輸液、内服)を用います。誘因のタンパク質の制限はいうまでもありません。
昔は、肝硬変は不治の病と言われてきましたが、現在は、QOL(生活の質)、ADL(日常生活動作)を考えて、治療方針が立てられています。
肝硬変の合併症としては、食道静脈瘤、肝がんが挙げられます。慢性肝炎から肝硬変へ。そして肝がんへと進行しますので、大元である慢性肝炎に注意を払いことが重要になります。ですが、たとえ肝硬変になっても、今では、病状管理技術や合併症に対する治療技術も進歩しています。
くも状血管腫、手掌紅斑のような典型的な症状が出てきたら、すぐに医師に相談するようにしたいですね。肝硬変は怖い病気ではありません。
まとめ
肝硬変は自覚症状で、すぐに判断ができます(後編)
肝硬変の検査と診断
肝硬変の治療
肝性脳症の治療