肝心要、というように肝臓は体内最大の重要な臓器です。多少壊れても再生能力を備えています。そのため肝臓に癌ができたとしてもほとんど症状がなく、ある程度進行してから発見されることもあります。
今回は治療選択のポイントとなる 肝臓癌 の ステージ 分類についてご説明します。
沈黙の臓器、肝臓癌のステージ分類について
男性に多く、50~60代に起こりやすい
男性では40代半ば、女性では50代から罹患率が増加し、70代で横ばいとなります。罹患率、死亡率とも男性の方が高く女性の倍以上です。
特徴的な年代として、男女とも1935年前後に生まれた人が高くなっています。これは肝臓癌の原因となるC型肝炎ウイルスの抗体陽性者が多いことに関連しています。癌による死亡数のうち、肝臓癌は全体では4位で、男性では3位、女性で5位となっています。
他の臓器からの転移が多い
肝臓癌は原発性肝臓癌と、他の臓器から転移した転移性肝臓癌に分けられます。各消化器官で吸収された栄養が集まってくる器官が肝臓であるため、癌が他の臓器から非常に転移しやすく、転移性肝臓癌がおよそ9割を占めます。
転移の元となる原発巣としては消化器(大腸、胃、膵臓、胆のう)や乳房、肺、子宮や卵巣などがあります。
肝臓自体に発生した原発性肝臓癌は転移性肝臓癌と比較すると10%弱と少なくなりますが、原因の多くはB型、C型肝炎ウイルスへの感染です。
肝炎ウイルスに感染したのちに慢性肝炎となり、肝硬変を経て発症します。アルコール性肝障害などの慢性肝疾患から肝臓癌に移行するのは10%程度にとどまります。
肝臓癌の治療の代表的なものとしては、外科手術、焼灼療法、肝動脈塞栓療法があります。さらに薬物療法(抗がん剤治療)を組み合わせることも広く行われています。
肝臓癌は癌の病期(ステージ)だけでなく、肝臓の機能がどのくらい保たれているのかも考慮した上で治療が選択されます。
肝臓癌の進行度を示すステージ分類
肝臓癌のステージは進行度によってⅠ~Ⅳまでに分類されます。
①直径2cm以下のがんである。②がんが1つだけである。③がんが血管や胆管内に入り込んでいない。
この3条件がいくつ当てはまっているかでステージが決まります。
ステージⅠは3条件の全てが当てはまる場合、ステージⅡは2つ当てはまる場合、ステージⅢは1つ当てはまる、またはリンパ節に転移している場合です。ステージⅣは全て当てはまらない、またはリンパ節転移や肝臓以外への転移がある場合、と分類されます。
肝臓機能を示す肝障害度分類
他の癌と異なるのは、ステージ分類に加えて肝臓機能の状態「肝障害度」の分類も重要になります。肝臓の機能がどの程度保たれているかを知る事で、肝臓癌の治療にどのくらい耐えられるかを予測できます。ステージ分類と合わせて総合的な判断で治療方針が決定します。
腹水の有無や血清ビリルビン値、血清アルブミン値、肝臓負荷試験値、プロトロンビン活性値などの項目でA、B、Cの3段階に分けられます。
Aが肝臓の障害度が一番軽く、Cが一番重くなります。一般に手術ができるのは肝障害度がBまでの場合です。Cと判断された場合には手術が選択されることはまれで、緩和ケアが選択されます。
ステージ別の5年生存率
肝臓癌のステージ別5年生存率はⅠ期で約55%、Ⅱ期で約40%、Ⅲ期で約20%であり、Ⅳ期では10%未満にまで低下します。早期といわれるⅠ期でも約55%と、他の癌と比較するとすべてのステージで下回っているので、平均よりは予後の悪い癌であるとされます。
それは転移や再発する例が多くみられることが原因です。手術や局所療法の時点で取り除いたとされていても、のちに転移して他の臓器で癌が発見されることが少なくありません。肝臓癌は肺やリンパ節、骨などへの転移がみられます。
原発巣がある転移性肝臓癌では再発の可能性が高くなります。ウイルス性肝炎からの肝臓癌に発展した場合でも、肝炎ウイルスは残存しているため、肝炎が再燃して再び肝臓癌を発症することもあります。
再発肝臓癌もステージと肝障害度によって治療法が選択されます。再発したとしても再手術が可能なのが肝臓癌の特徴です。
肝臓癌の治療後には転移と再発の早期発見のために、継続して定期的な検査を受けることになります。主に腫瘍マーカーの検査、超音波検査、CT検査などが行われます。
まとめ
沈黙の臓器、肝臓癌のステージ分類について
男性に多く、50~60代に起こりやすい
他の臓器からの転移が多い
肝臓癌の進行度を示すステージ分類
肝臓機能を示す肝障害度分類
ステージ別の5年生存率