下肢静脈瘤は、大腿(もも)や下腿(ふくらはぎ)に蛇行した血管が皮膚に浮き出てくる病気です。状態にもよりますが、見た目もグロテスクであり、特に女性の方はスカートがはけないと悩まれる方が多いです。
この 下肢静脈瘤 には特有の 原因 があり、対処方法とあわせて詳しくご説明します。
下肢静脈瘤の原因と対処方法
下肢静脈の役割
そもそも静脈とは、血液を心臓に送る役目があります。立位の状態では、下肢は心臓より下に位置することから、血液を心臓に送るには重力に逆らわなければなりません。
静脈は動脈のような心臓の拍出力で循環するものではないことから、静脈のポンプ作用は静脈の周囲にある筋肉の収縮により循環動力を得ていることになります。
例えば下肢の静脈ではふくらはぎの筋肉を使うことで、下肢静脈に圧力がかかり心臓に送血することができます。また、下肢静脈には弁がついており、静脈内の血液が逆流することを防止している構造となっています。
逆流防止弁の破綻による下肢静脈瘤
下肢静脈瘤は静脈の血液がうっ滞する、すなわち心臓への循環が悪くなることで発症します。下肢静脈瘤の直接的原因は重力であり、静脈が重力に負けて血液が逆流し、蛇行した瘤状の静脈が皮膚の表面に出現してくるのです。
もともとの下肢静脈は、逆流防止弁により重力に対抗できる構造となっていますが、重力にさらされている時間が人よりも長い場合、次第に逆流防止弁の機能が壊れ下肢静脈瘤となるのです。
長時間の立位によるポンプ失調
もうひとつの構造として、循環動力源である静脈周囲の筋肉があります。下肢静脈瘤では筋肉のポンプ作用が重力に対抗できないことを意味しております。
例えば立位のままの姿勢では、下肢の筋肉を動かす運動は行われていないことから、静脈のポンプ作用が機能していないこととなり、逆流防止弁に負担をかけているのです。
他に人間の生活で睡眠時間は、唯一重力の影響を受けずに静脈が心臓に送血することができる時間です。睡眠時間が少ない人は静脈を休めている時間も短いことであるため、逆流防止弁の故障を早めていることにつながります。
この原因は、下肢静脈瘤が立ち仕事の方に多いことを意味しております。学校の先生や調理師さん、美容師さんなどです。
体型が原因による下肢静脈瘤
下肢静脈瘤の原因として、重力の影響で逆流防止機能の劣化についてご紹介しましたが、この重力の影響は「心臓へ送血する抵抗」と読み替えることができます。
心臓へ送血する抵抗が強いことは、下肢静脈の血液をうっ滞させることになりますので、重力以外の抵抗が下肢静脈瘤の原因となるのです。
両下肢の静脈は、腹部の位置で一本の大きな静脈とつながります。この静脈を下大静脈といい、心臓の右心房と直結します。
抵抗があるということは、下大静脈の内腔が細くなることを意味しており、下大静脈内に障害物があって内腔が細くなっているか外からの圧力が加わって細くしているかのどちらかです。
下大静脈内の障害物の代表格は、血栓という血の塊です。バッド・キアリ症候群という病気は下大静脈内に血栓をつくり閉塞させる病気です。しかし、あまりポピュラーな病気ではなく、原因のほとんどは下大静脈に対する外的の圧力であることがいえます。
下大静脈を圧迫する中に妊娠があります。胎児が成長することでお腹が大きくなり、下大静脈を圧迫します。
また、妊娠以外に下大静脈を圧迫するものとして肥満があります。妊娠は成長した胎児ですが、肥満の方はお腹の脂肪が下大静脈を圧迫します。他に腹部臓器の悪性腫瘍も原因のひとつです。
唯一重力の影響を受けない睡眠時間において、この体型による下大静脈の圧迫は、むしろ睡眠時間に圧迫されます。よって、このような方は絶えず心臓へ送血する抵抗にあっているのです。
下肢静脈瘤の防ぐには
下肢静脈の血液を心臓に送血するには、負担がつきものであるため、とにかく足を休めることが必要となります。横になることは勿論、両足を少し挙上させて休むことも効果的です。
仕事上、どうしても立ち時間を制限できない場合は、時折ふくらはぎの筋肉を動かす運動を行うことが必要です。足踏みや屈伸、踵を挙げることなど、運動は少しの時間で行い、定期的に行うことで循環がよくなります。
他に弾性ストッキングの着用も循環ポンプを補助する上で、重要なアイテムとなります。ストッキングを着用した段階で、下肢が締め付けられた状態となり、少しきついように感じますが、足を動かした時に筋肉に圧力をかけるため、静脈の循環ポンプをより強化する効果があります。
弾性ストッキングは、医療用として医療機関でのみ販売しているため、入手には受診が必要です。他に薬局や百貨店の下着売り場でも市販用として販売されております。市販用でも十分に効果があるものも多いので、一度ご相談されることをお勧めします。
まとめ
下肢静脈瘤の原因と対処方法
下肢静脈の役割
逆流防止弁の破綻による下肢静脈瘤
長時間の立位によるポンプ失調
体型が原因による下肢静脈瘤
下肢静脈瘤の防ぐには