「筋萎縮性側索硬化症~その症状と治療法について(前編)」では、筋萎縮性側索硬化症とはどのような疾患であり、どのように病状が進行していくのかお伝えいたしました。後編では、 筋萎縮性側索硬化症 を発症するその原因と薬物療法や対処療法についてご説明いたします。
筋萎縮性側索硬化症~その症状と治療法について(後編)
原因~環境や老化は関係ない?神経の変性で起こる筋萎縮性側索硬化症~
筋萎縮性側索硬化症の原因は、一説には、神経の老化によって起こるといわれています。神経の老化で起こる場合、もっともかかりやすい年齢層は60代~70代の中年期以降の人がなりやすいといわれています。
しかし、まれに若い世代の発症例もあることから、一概に神経の老化が関係しているとは言えません。
一昔前までは、筋萎縮性索硬化症は特定の地域で起こる風土病という扱いをされて、恐れられていたといいますが、特定の地域や風土によって発症するかどうかについて具体的にはわかっていません。
このことから、特定の環境や職業が原因となって起こる症状ではありません。また、遺伝によって必ず発症するともいえずほとんどが弧発性で起こる障害といえます。
次に、神経の変性によって起こる原因として、グルタミン酸過剰説があげられます。筋萎縮性側索硬化症は、筋肉を動かすために働く運動ニューロンのみが障害を受けることで、脳から動かすように命令を出しても筋肉に指示がうまく伝わらなくなり、筋肉がやせ衰えていくといわれています。
うまく伝わらない原因となるのがグルタミン酸とよばれる物質です。通常、身体を動かすように命令すると、運動ニューロンを通って筋肉に伝えます。
その際、神経細胞の軸索とよばれる鞘状のコードの端から、グルタミン酸や神経伝達物質を放出して、次の神経細胞へと伝えグルタミン酸は次の細胞にとりこまれ、再び脳や脊髄へと伝達されていきます。
筋萎縮性側索硬化症の人は、脳や脊髄に再び取り込むことができないため、神経細胞にグルタミン酸が溜まるようになり、やがて溜まり過ぎたグルタミン酸によって、神経細胞が死滅してしまいまい、筋肉が動かなくなる症状が発症するといわれています。
もう一つの原因として、神経栄養因子欠乏説があげられます。神経が傷ついたり、成長や修復するときに必要な栄養素が欠乏してしまい、運動ニューロンが傷ついたままとなって壊れてしまうことで起こるという説があります。
また、ごくまれですが、家族性ALSと呼ばれる遺伝性の筋萎縮性側索硬化症があります。統計的には、90パーセント以上の筋萎縮性側索硬化症は、弧発性といわれていますが、5~10パーセント程度は家族の近親者の中に筋萎縮性側索硬化症を発症している場合に、遺伝するといわれています。
例えば、両親や兄弟のいずれか、祖父母などに発症者がいた場合、遺伝する可能性があるといわれています。
家族ALSの2割は、スーパーオキシトジスターゼと呼ばれる酵素の遺伝子に異常があることで発症するといわれています。このように、筋萎縮性側索硬化症には、さまざまな原因があるといわれています。
治療方法~薬物療法と対症療法~
筋萎縮性側索硬化症の治療方法として、薬物療法とさまざまな症状にあわせた対症療法を行います。主に、在宅での介護やケアが中心です。
薬物療法は、リルゾールを処方します。リルゾールは筋萎縮性側索硬化症の原因といわれているグルタミン酸過剰を抑え、進行を遅らせる薬です。あわせて、身体の自由がきかないことや病状に対する不安からの不眠には睡眠薬や安定剤も処方することがあります。
対症療法は、筋萎縮性側索硬化症によって起こる筋肉や関節の痛みにたいしてリハビリテーションを行ったり、症状が進行した場合に、呼吸困難をおこさないように鼻マスクや気管切開による呼吸補助などを行います。
進行すると定期的に、痰を吸引する必要があるので、最終的には気管切開を行います。これらの治療方法に関しては、医師やケアマネージャー、保健師などとの連携を取りながら行います。
特に、痰の吸引や処置に関しては医療従事者からの指導してもらいながら行っていきます。また、在宅でのケアが中心になるため、人工呼吸器や吸引器には必ず地震や災害に備えて予備電源を設置する必要があります。
不測の事態に備えて、周りの人や病院、福祉協議会などと常に連携をとっておきましょう。東日本大震災では、なかなか使うことがなかった予備電源の使い方が分からなかったり、型式が古くて使えなかったという事態が起こったといいます。
こういった事態を想定して日ごろから、動作の確認や使い方の確認をしておくことも大切です。現状では、なかなか認知がされにくかったり、されないといわれている筋萎縮性側索硬化症ですが、もし、家族の中で誰かがなってしまった場合は、多くの人と関わりをもち連携していくことが大切です。
まとめ
筋萎縮性側索硬化症~その症状と治療法について~(後編)
原因~環境や老化は関係ない?神経の変性で起こる筋萎縮性側索硬化症~
治療方法~薬物療法と対症療法~