呼吸器という分野は内科学からわかれたもので、当初は「肺」を中心としたものでした。しかし現在は呼吸器疾患全般に及び、気管支、胸膜など幅広く研究を積み重ねています。
呼吸器科 は近年「呼吸器センター」という名称での設置もあり、この近代的施設では呼吸器内科と呼吸器外科が協力する形で連携しています。
近年、重要な意味を持ち始めた呼吸器科
呼吸器科とほかの診療科の切り分け
前述のように、呼吸器科というのはむしろ後発的な研究分野で、それまでは耳鼻咽喉科にインクルーズされていました。
昔はなかった呼吸器科の出現で内科、耳鼻咽喉科などとの切り分けがややこしいという話もあります。そのとおりなのですが、実際は厳格な仕切り線があるわけではありません。
ただ気道及び肺の病気は呼吸器科、頭部・耳・鼻・喉に関係した病気は耳鼻咽喉科に分類されているのが一般的です。
内科はかなり幅広い患者を受け付けます。軽い風邪に始まり消化器、呼吸器、循環器、内分泌などがあり、その中の呼吸器科は呼吸器専門の内科医だという風に考えても間違いではありません。
病名による診察科目の違い
前段で呼吸器なのかそれ以外なのか、診療科目を選ぶときの大雑把な考え方を解説しました。しかし、いざとなると迷う場合もあるでしょう。もう少し具体的に説明します。
まず、病気になった部位が気管支、肺、胸膜とその周辺は呼吸器科を選んだほうがいいでしょう。もっと細かくいえば、呼吸困難、喘息、肺炎、肺気腫、異常な息切れ、血痰とか喀血も一部該当します。また、健康診断などでレントゲンの異常陰影が出た場合も呼吸器科が適当です。
喉が単に痛いときなどは耳鼻咽喉科でも良し、あばら骨や心臓異常、肋間神経痛などとなれば循環器科や整形外科の分野となる可能性が大です。
診療科目のドッキング
呼吸器科とアレルギー科を内包合体して両面からの診察を行う病院もあらわれました。当然のことながら前記の諸症状より受け入れがやや広く、ちょっとした咳、痰、喘鳴などの症状が出た患者も診察してくれます。
呼吸器とアレルギーのドッキングにより、花粉症までの広い分野の治療が呼吸器科で行われるようになりました。
また、特定疾患(俗にいう難病)のサルコイドーシスの患者を受け入れる病院もあります。サルコイドーシス(sarcoidosis)というのは、「肉のようなものができる病気」という意味です。とはいえ、悪性の腫瘍とは少し異なり、癌とは全くちがう悪性疾患ではありませんし感染もありません。
全身のあらゆる臓器で発症しますから対応も難しいものになっています。ただ、原因が不明なため診療科も特定はされていません。
呼吸器科はこのサルコイドーシスが肺に発生した時のみその当該患者の診療を施します。統計的な数字を見ると肺および胸部のリンパ腺(80%)、眼(50%)、皮膚(20%)などです。
呼吸器科と肺炎球菌感染症
呼吸器科が最近ニュースなどでよく出るケースに「高齢者・肺炎球菌予防接種」というものがあります。
肺炎球菌感染症とは、本来いないはずの部位に菌が入り込んでいる状態が「感染」で、症状が出てくると今度は「感染症」呼ばれます。肺炎球菌感染症は名前のとおり、肺に感染して肺炎を起こしたり、菌血症、敗血症、髄膜炎などに変化することもあります。
現在は行政サイドが費用を一部負担してこの感染症を防ぐ手立てを講じています。
肺がん検診も呼吸器科が専門分野
もうひとつ、呼吸器科の大きな役割は肺がん検診です。
現在、肺がんは日本人の癌による死亡数のトップになってしまいました。しかし、早期発見した場合約80%が治っています。
この肺がん対策も呼吸器科の重要なポイントで、コンピューター断層診断(CT)や肺機能検査、気管支鏡検査などの肺の画像診断は重要な意味を持っています。
まとめ
近年、重要な意味を持ち始めた呼吸器科
呼吸器科とほかの診療科の切り分け
病名による診察科目の違い
診療科目のドッキング
呼吸器科と肺炎球菌感染症
肺がん検診も呼吸器科が専門分野