くも膜下出血において救命できる方法として手術があります。しかし、急激に発症したくも膜下出血の手術を行うことではありません。くも膜下出血の原因でもある破裂した脳動脈瘤等は、脳の組織が密集している環境でもあり一時的に止血されます。
しかし、出血後24時間以内に再出血することから、この再出血を回避するため手術を行います。
今回は、 くも膜下出血 の代表的な2つの 手術 を紹介するとともに、合併症に対する手術も併せてお伝えします。
くも膜下出血の手術方法と治療選択
くも膜下出血の手術目的
くも膜下出血は、発症後約30~50%の人は死亡する非常に致死率の高い病気です。
くも膜下出血は脳動脈瘤や脳動静脈奇形が破裂する、いわば脳出血のひとつであり、死亡は破裂による失血死ではなく、出血による脳の圧迫が起因する脳障害によるものです。
死亡に至らなくとも高次脳機能障害となる方が殆どで、くも膜下出血後で社会復帰できる方は約25%程度と恐ろしい病気でもあります。
くも膜下出血において救命できる方法として手術があります。しかし、急激に発症したくも膜下出血の手術を行うことではありません。くも膜下出血の原因でもある破裂した脳動脈瘤等は、脳の組織が密集している環境でもあり一時的に止血されます。
しかし、出血後24時間以内に再出血することから、この再出血を回避するため手術を行います。
脳動脈瘤の付け根を挟むクリッピング術
破裂による大出血を防ぐためにも、脳動脈瘤に循環する血液を遮断することが、破裂による被害を最小限に食い止められることから、クリッピング手術が開発されました。
クリッピング手術は、脳動脈瘤の付け根を金属製洗濯バサミのような物で挟みこみ、脳動脈瘤に流入する血液を遮断します。
この手術を要約すると、脳動脈瘤の付け根をクリップで挟む手技であるため、一見簡単な手技に思えますが、クリッピングを行う前に脳動脈瘤を露出する目的で、周囲の組織と脳動脈瘤を剥離します。脳動脈瘤が破裂しないように剥離するため、技術が必要とされる手術なのです。
脳動脈瘤の中を固めてしまうコイル塞栓術
脳動脈瘤を固めてしまうことで破裂を防止する手術です。最大の特徴は、開頭術ではなく、カテーテルを用いて手術ができることにあります。
人間の血液は人工物が入ると、その人工物に血栓(血の塊)を形成します。この反応を利用して、カテーテルの先端にコイル状の金属を取り付け、脳動脈瘤内にコイルを入れることで、脳動脈瘤は血栓で固まってしまいます。
カテーテル手術なので、開頭術のような外科的侵襲性も抑えられ、脳動脈瘤と周囲の組織を剥離するようなことも不要となります。
クリッピング手術と比較してもコイル塞栓術の方が、安全性や低侵襲性として優れているように思えますが、脳動脈瘤の大きさや瘤の形状によって、コイル塞栓術が適応できない場合もあります。この場合は、クリッピング術が適応となります。
くも膜下出血後の合併症に対する手術
くも膜下出血には期間をおいて発症する合併症があります。
ひとつはくも膜下出血後4~14日以内に脳血管攣縮という血管が糸のように細くなることがあります。血管が細くなることで血液の循環が悪くなり、脳梗塞の危険性が高まります。
この場合、血管径の維持のため、点滴による循環血液量を増やすことや血圧を上げることが前提ですが、それでも維持できない場合は、カテーテルによる脳血管拡張術を行うことがあります。
もうひとつは、くも膜下出血後1ヶ月以降に血腫(出血して溜まった血液の固まり)が周りの組織と癒着し、髄液の循環不全が起きます。
本来髄液は、脳を保護する上で脳の中を絶えず循環している組織液でありますが、髄液の循環不全は、血腫が髄液を吸収する妨げになり、脳の中で髄液が溜まってしまうことをいいます。これを水頭症と呼びます。
溜まった髄液により脳圧が亢進し、脳を圧迫してしまいますが、これを避けるためにも髄液の排出経路を人工的に作らなければなりません。
一般的に髄液の排出先として、お腹の臓器がある腹腔に送ることがあります。この手術を「脳室腹腔短絡術」といい、排出用のチューブを挿入して脳から腹腔への経路を作ります。
医師から説明される術式をよく理解する
今では患者中心の医療が当たり前であり、患者が治療を選択できる時代です。しかし。くも膜下出血は緊急性や重症度により、患者が治療を選択できる時間は殆ど無いといっても過言ではありません。
検査により病態を評価した上で医師が最良の治療法を提案することになりますので、その方法や合併症をよく理解した上で、治療に望むことが重要です。
まとめ
くも膜下出血の手術方法と治療選択
くも膜下出血の手術目的
脳動脈瘤の付け根を挟むクリッピング術
脳動脈瘤の中を固めてしまうコイル塞栓術
くも膜下出血後の合併症に対する手術
医師から説明される術式をよく理解する