慢性腎不全 は慢性腎臓病とも呼ばれ、腎臓の大きな役割である血液をろ過して老廃物を排泄する能力が数ヶ月から数年かけて徐々に失われていく病気です。
慢性腎不全の主な原因は高齢者に多い糖尿病と高血圧ですが、これらの病気は腎臓の細い血管にダメージを与えていき、徐々に腎臓の機能を失わせます。
慢性腎不全は痛みなどの目立った症状がないまま腎機能の低下が進んでしまうため、発見した時には重症化していることも多い病気です。早期に発見して早期に治療を開始することが大切です。
慢性腎不全とは
慢性腎不全の原因
慢性腎不全の主な原因となるのは糖尿病と高血圧ですが、なかでも人工透析が必要となる末期の慢性腎不全患者の場合には、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症が原因となっている人が最多で、全体の38%となっています。
その他には慢性糸球体腎炎や悪性腎硬化症、多発性嚢胞腎なども原因疾患となっています。
腎臓の大切な機能である血液のろ過は、腎臓の糸球体にある細い血管や管で行われますが、糖尿病や高血圧などの疾患によって長期間に渡って損傷を受け、この部分が機能不全を起してしまいます。
糸球体にダメージを与える原因となる疾患としては、この他にも尿路閉塞や自己免疫疾患などがあります。
慢性腎不全の症状
慢性腎不全の特徴として、重症になるまでほとんど目立った症状があらわれないという点があります。軽度から中等度の腎不全でよく見られる症状に夜間頻尿症がありますが、これは糸球体の機能が徐々に失われ、尿から水分を回収して尿を濃縮することができなくなるために生じてきます。
また、慢性腎不全が重症になってくると血液中に老廃物が溜まって、疲労や脱力感、注意力の低下、食欲不振などが起こってくるようになります。さらに状態が進むと老廃物が高濃度になって体に様々な症状が現れるようになり、これを尿毒症と言います。
この段階になると、呼吸困難や腎性貧血、肺水腫、神経症状、意識障害、頭痛など様々な症状が現れるようになり、さらに進むと心不全や消化管出血、様々な皮膚症状なども現れることが多くあります。
慢性腎不全の治療
慢性腎不全の治療としてまず行われるのは原因疾患に対する治療ですが、糖尿病性腎症であれば血糖のコントロール、尿路閉塞の場合には閉塞の治療、感染の場合には抗生剤治療、高血圧の場合には血圧を下げて糸球体に負担をかけないようコントロールします。
また、食事療法と規則正しい生活は治療の基本となる部分ですので、しっかりと取り組む必要があります。食事療法には塩分制限と蛋白質制限が必要となりますが、蛋白質制限については老廃物を少なくできるメリットと低栄養というデメリットがあり、医師の管理の下慎重に取り組む必要があります。
また、腎性貧血に対してはエリスロポエチンの投与、不整脈や心停止のリスクが高くなる高カリウム血症にはそれを緩和するための薬剤など、様々な症状に対して投薬などの対症療法が行われます。
慢性腎不全に対して薬剤を投与しても効果がなくなってしまった場合には人工透析が行われます。人工透析では機械的に血液中の老廃物が取り除かれますが、1回行うのには3~4時間ほどかかり、病状によりますが週に2回から3回行います。
慢性腎不全の患者の場合、人工透析を始めるとほぼ一生治療を続けることになり、ライフスタイルにも大きな影響を及ぼす治療となります。
透析治療を行うことによって生活の質をある程度確保することができますが、血液を体外の機械に通して浄化するという処置には感染や出血など様々なリスクも当然生じることになります。
人工透析以外の選択肢としては腎移植という方法もありますが、腎移植をするには腎臓を提供してくれるドナーが必要であることなど困難な問題があります。しかし、腎移植が成功すればほとんど健康な人と同じ生活を送ることができます。
移植後は、移植された組織の拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を使用し続けることが必要になりますが、免疫抑制剤を使用していれば安全というわけではなく、拒絶反応を起したり移植腎が機能しなくなったりする場合もあります。
慢性腎不全によって一度失われた腎機能は、ほとんど回復することが期待できないため、可能な限り早期に発見して治療を開始し、腎機能の低下を遅らせたり状態を維持することが大切になります。腎臓の機能が失われてからでは遅いのです。
まとめ
慢性腎不全とは
慢性腎不全の原因
慢性腎不全の症状
慢性腎不全の治療