認知症は、早期に発見し適切な治療を行えば進行のスピードを緩やかにすることができます。そのためには認知症発症のサインである「物忘れ」が軽度のうちに、これに気づくことが大切。
「 物忘れが激しい 」というレベルにならないよう、認知症チェックの方法と予防策をお伝えします。
物忘れが激しい!そうなる前の認知症チェック&予防策
「物忘れ」チェック
認知症で最初に現れる症状は、過去にあった出来事を記憶する力の低下、日時・場所・人の名前などの勘違いや、これまで簡単に出来ていた作業に時間がかかったりできなくなったりするといったものです。
今回はこれらをまとめて「物忘れ」と呼ぶことにします。認知症の専門医のインターネットサイトには、「認知症の初期症状のチェックリスト」を備えているところが多くあります。
代表的な内容を抜粋してみると、
- 何度も同じことを話すようになった
- 服装がだらしなくなり、整理整頓ができなくなった
- 以前はスムーズに出来ていた作業に時間がかかるようになった
このようなものです。家族に「最近物忘れが多いのでは?」という人がいれば、こういったチェック項目にあてはまるかどうかを確認してみるとよいでしょう。
ポイントは「チェックには、物忘れを起こしている本人ではなく、家族など周囲の人が回答する」ということです。物忘れを起こしている本人の性格(強情なのか心配性なのか、など)によって、当てはまる項目が実際の状況より多くなったり少なくなったりするからです。
また、もう1点注意すべきは、このような物忘れをしていたとしても、イコール「認知症」とは言えない場合があるということです。
高齢者の「物忘れ」には二種類ある
家族の方に上のようなチェック項目にあてはまる項目が見られると、「認知症では?」と心配になられるでしょう。しかし、この物忘れ、認知症に由来するものではない場合もあるのです。
働き盛り世代の心の病が問題となっていますが、高齢者にも多くのうつ病の患者がおり、厚生労働省の2011年の調査では、60~70代の女性に非常に多いことがわかっています。
高齢者なので「ある程度元気がなくなるのは当然」などと見逃されやすく、「物忘れが多い」という点で、「認知症」の初期症状に似ているので、認知症と間違われてしまう場合も多いのです。
ただ、うつ病に由来する場合の物忘れは、比較的突然始まります。一方、認知症に由来するものは、徐々に進行します。
また、うつ病の方は、物忘れが多くなったことに自覚的で、そのことで自分を責める傾向があるのですが、認知症の方は、自分では物忘れに気づかないことが多く、気づいたとしてもそのことを隠したり取り繕ったりしようとします。
このような違いを知っておき、高齢者うつ病によるものであると思われる時は、精神科や心療内科を受診するのがよいでしょう。
認知症による物忘れであると推測される場合には、この病気が「薬を飲めば進行を遅らせ、健康な状態を長く保つことができる」ものであるということを、本人が理解出来るうちに、専門医に診てもらうことが重要です。
「物忘れ」を引き起こさないために
ここまでは認知症の初期症状の可能性がある「物忘れ」が起きてしまってからの対応を説明してきましたが、認知症を予防するような普段の生活スタイルについてもご紹介しておきましょう。
糖尿病のある人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが高いことが分かっています。生活習慣病予防は認知症予防にもつながるのです。
また、計算や会話など、脳を刺激することも認知症予防には有効です。単に頭を使う作業をするだけでなく、体を動かしながら脳を刺激するとより効果が高まるとも言われています。
簡単な運動をしながらテレビのクイズ番組を見たり、小学生のお子さんがかけ算の「九九」を覚えるのを手伝いながらいっしょに散歩したりするなど、「脳の運動×体の運動」を意識した生活を送るのが認知症予防、その初期症状である「物忘れ」予防には有効なのです。
まとめ
物忘れを知り、気づき、防ぐことが認知症対策の第一歩
「物忘れ」チェック
高齢者の「物忘れ」には二種類ある
「物忘れ」を引き起こさないために