高齢化社会に伴い、社会問題ともいわれる認知症。2007年12月に、91歳の男性が認知症の徘徊によって起こったJR東海の電車事故で名古屋地裁は、今年3月に家族の普段の介護状況を鑑み家族に監督義務はないと判決を下し、認知症による徘徊で苦しむ家族を浮き彫りにしました。
認知症 は 治る 病気なのでしょうか。認知症についてと認知症医療の展望について説明します。
認知症は治る?~現在の認知症治療とこれからの展望について(前編)
高齢に伴う三種類の認知症
認知症とは、老化や病気によって起こる脳の認知機能に起こる障害のことです。
物忘れとの大きな違いとして物忘れは、一時的なもので判断力があり、忘れたことを自覚していますが、認知症は判断力自体がなくなってしまい、忘れたことの自覚がない状態が続き進行していくという違いがあります。
高齢化に伴う認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体認知症、血管性認知症の三種類があり、これを三大認知症といいます。
アルツハイマー型認知症は、女性に多く、老人斑や神経線維の変質によって起こり記憶を司る海馬を中心に脳の萎縮が起こります。症状として家族の顔や名前を忘れる、徘徊、物盗られ妄想、抑うつ状態などがあります。
次にレビー小体認知症は、男女比で言えば男性に多い症状で、レビー小体という異常タンパク質によって神経細胞が死滅することで起こる認知症といわれています。
症状として、手足が麻痺したような状態(パーキンソン症状)、幻視、妄想などがあり調子がいいときと悪いときの循環を繰り返しながら、進行していく特徴をもっています。
血管性認知症は、脳血管障害に伴う認知症です。脳梗塞や脳出血によって血液の循環が悪くなり脳の一部が壊死することで起こります。男性に多く、手足の麻痺やしびれ、感情の浮き沈みが激しくなりやすくなったり、まだら認知とよばれる認知症などの特徴をもっています。
治療法~症状を遅らせる薬物療法と予防するリハビリテーション
現段階での医療では、三大認知症に関しての完治させる効果的な治療法はありません。そのため、症状を緩和させ脳の機能低下を遅らせる薬物療法と、脳の認知機能に刺激を与えることで機能低下を予防するリハビリテーションを主体とした治療を行います。
薬物療法に使われる薬として、レビー小体認知症とアルツハイマー型認知症の症状の進行を抑えるアリセプトと、より症状が進行した高度アルツハイマー認知症に対するメマリーなどがあげられます。認知症に多く見られる抑うつ症状が強い場合は抗欝剤などの投薬も行います。
リハビリテーションでは、症状にあわせた治療法を選択し、その人にあったリハビリを行います。脳の認知機能には「記憶する、時間や場所を認識する、計算する、読み書きする、言葉を話す、物事の善悪を判断し、出来事を理解する」などがあります。
これらの障害を予防するためには、かんたんな計算や音読、字の書き写し、昔の話を思い出す回想法、ぬり絵や折り紙、切り紙といった芸術療法、歌を歌ったり、楽器を演奏する音楽療法を行うことで、症状の予防を図ることができるといわれています。
また、新しいことや趣味を大事にすることもとても大切です。
まとめ
認知症は治る?~現在の認知症治療とこれからの展望について(前編)
高齢に伴う三種類の認知症
治療法~症状を遅らせる薬物療法と予防するリハビリテーション