「あなたは認知症の対応について知っていますか?(前編)」では、認知症の種類と症状についてご紹介いたしました。後編では、 認知症 の症状に対しての 対応 方法をご紹介いたします。
家族だけで悩まず、専門の医師に相談し症状をコントロールすることも大切なことです。
あなたは認知症の対応について知っていますか?(後編)
周辺症状への対応について
認知症の初期であれば以前の自分と現在の自分の変化に気づいていることが多く、そのことで不安や恐怖から本人はストレスを感じています。そのためすぐに怒ったり、落ち着きがなくなったり、落ち込みなどが見られることがあります。
このようにストレスがかかることで周辺症状は起こりやすくなります。身内であっても恥ずかしさから助けを求めることができない方もいるようです。家族が様子の変化に気づいて本人の自尊心を傷つけないように対応することがとても大切です。
周辺症状は人それぞれで現れ方がちがいます。そのため個々に合わせた工夫が必要となります。ここではいくつか具体例を挙げて説明します。
まず認知症の周辺症状としてよく見られる「徘徊」について説明します。徘徊が起こる原因には見当識障害や、現在と過去が判断できなくなることにより生じることがあります。
自分の家にいるのに違う場所だと思って帰ろうとすることや、子供のころに住んでいた家に帰ろうとすること、結婚当時に住んでいた家に帰ろうとすることなどがあります。
このような場合、無理やり行動を抑制しようとせず、一緒について歩くことによって本人の気持ちも落ち着き徘徊がおさまることがあります。体調不良や、環境変化によっても徘徊が生じている可能性があるため注意が必要です。
次に「物とられ妄想」についてです。認知症初期の女性で、認知症発症前から誰かに現金や、通帳などが取られるのではないかと心配する性格の方に多く見られる症状です。
これは記憶力や、判断力の低下などから生じることがあります。特によくかかわりを持っている方に対してこのような被害妄想を抱くことが多く、家庭であれば嫁、グループホームなどであれば介護スタッフに対して多いようです。
このような場合の対応としては、被害妄想を抱かれている方とは別の方が対応すると良いとされています。「盗られたのではなく、あなたが無くした」と説明しても本人にはその自覚がないことにより、より興奮させてしまいます。
そのため対応としては大切なものがなくなった悲しい気持ちに共感し、一緒に探しながら日常会話をすることで落ち着いてくることや、盗られたということから気がそれることで忘れることもあるようです。
次に「暴言・暴力」について説明します。認知症の種類によっても症状が異なりますが、暴言・暴力が生じやすい原因としては、認知症の方に対する接し方が不適切であることです。
例えば、自尊心を傷つけるような馬鹿にした発言や、まるで物を扱うような対応での介護です。認知症だから何もわからないというのは間違いでありこのような対応を取られると不快であり、怒りから暴言・暴力が出るのも当然です。
人権を尊重した対応を心がけることが大切です。もし、暴言・暴力が出た時は、少し離れて対抗せずに見守りましょう。興奮状態であればこちらの声かけは逆効果となることが多いでしょう。
すべての周辺症状の対応方法に共通して大切なことは、認知症だから何もわからないと思い、物を扱うような対応を行わないことです。認知症の方はそのような対応に敏感に反応されます。人権を尊重した声かけや対応を行うことで周辺症状の現れ方も穏やかになるでしょう。
しかし、認知症の種類や、性格によってはなかなか周辺症状が改善しない方もいらっしゃいます。そのような場合は、内服薬での症状のコントロールも検討する必要があるかもしれません。家族だけで悩まず、専門の医師に相談することをお勧めします。
まとめ
あなたは認知症の対応を知っていますか?(後編)
周辺症状への対応について