「脳血栓症は血管性の病変―FASTを忘れないで(前編)!」では、 脳血栓症 の病態や原因について説明しましたので、後編では脳血栓症の症状や治療法をご紹介します。また、脳血栓症では早期発見が何よりも大切となりますので初期症状もご紹介します。
脳血栓症は血管性の病変―FASTを忘れないで(後編)!
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脳血栓症の症状
通常よく見られる症状は、半身まひ、感覚の低下などで、顔面の筋肉がまひして、ろれつが回らないしゃべり方になったり、手足の運動障害や感覚麻痺、しびれなど半身に障害が現れたりします。意識障害や昏睡に陥ることも見られます。
発作の起こり方は、睡眠中や覚醒時の比較的安静にしているときに起こります。時間的には数時間から数日かけて次第に症状が強くなる特徴があります。
また、発作の起こり方が脳血栓に似たもので、血栓が小さかったり、血管内腔の狭窄がそれほどでもなかったりして、血栓の詰まり方が弱いと自然に溶けて血流が再開すると、症状が治まることがあります。
この場合は血液循環の停滞時間が短かいため、脳の組織は壊死には至らずに、症状が消えたものです。
発作が数分から数十分、長くても数時間以内に症状が治まるのを一過性脳虚血発作、数日続いて治まるのを可逆性虚血性神経障害と呼んでいます。
しかしながら、このようなことを繰り返すようになると、本格的な脳血栓症になる可能性が高まってきます。それ故、厳重な注意が必要になります。
脳血栓症の検査と治療
症状から見て脳血栓症が疑われる場合、脳動脈のX線造影撮影や頭部CT(脳のX線撮影)、MRI(脳の断面画像)、MRA(脳血管撮影)で血栓の状態、脳のむくみを検査し病態を明らかにします。
同時に心臓の検査、血中コレステロールなどの血液検査も行います。診断が確定したら、時間的な猶予はありません。すぐに治療に取り掛かります。
第一の選択は血流を再開することで、詰まった血管から血栓を取り除くことです。時間との戦いになることから、tPA(血栓溶解療法)の静注療法が選ばれます。
ですが、時間が経ちすぎますと血管が脆くなり、脳出血の危険性が生じるため、その場合には投与が控えられることもあります。そして、その時間ですが、早いに越したことはありませんが、検査時間等の考えると、発症から3時間、伸ばしても4時間半以内に投与できることが望まれます。
第二の選択としては、tPAの投与ができなかった場合があるわけで、その時はこれまで使われてきた、抗血栓薬や抗血小板薬、抗凝固薬の併用投与が行われます。具体的にはその他に、ウロキナーゼ療法、血液希釈療法、脳浮腫軽減療法、脳保護療法などがあります。
脳血栓症は初期症状を見逃さない
tPAの静注療法が適用されるには、脳血栓症の早期発見が大事です。例えば、次のような症状がある場合には、すぐに掛かり付け医に相談するか、救急車を呼びます。
片側の手足がしびれる。手足に力がはいらない。片足を引きずっている。躓きやすい。真っ直ぐ歩くことができない。めまいがしたり、ものが二重に見えたりする。言葉がでないし、ろれつが回らない。などが挙げられます。
それから家庭で、誰かに異常を感じたら救急車を呼びます。その判断はFASTでします。
最初のFはFaceで顔の片側に麻痺が起きたり、ゆがんだりした場合のこと。次のAはArmで片腕に力が入らない。SはSpeechで言葉が出てこない。そして最後のTはTimeで発症した時間のことです。いずれも、脳血栓症を疑うサインですので、くれぐれも忘れないようにしたいですね。
脳血栓症、脳塞栓症を含めた脳梗塞にはこのような症状がでますので、特に高齢者のいる家庭では、それこそ電話口に、この標語を置いておくといいですね。
まとめ
脳血栓症は血管性の病変―FASTを忘れないで(後編)!
脳血栓症の症状
脳血栓症の検査と治療
脳血栓症は初期症状を見逃さない