1,400グラムの脳にある神経細胞の数は、大脳、小脳あわせて細かいものまで含めると、千数百億個もあるといわれています。それらが互いに接続し、まるでコンピュータ素子が連結しているように複雑な神経回路を構成し、インプットされた情報の記憶、認知、運動、学習、思考、判断、決断などの知的活動を通してアウトプットしています。
脳の活動は脊髄、神経を含めた神経系の要であり、知的活動とともに生命の維持活動も行っています。その脳に、何らかしらの異常が起きたとしたら、知的活動も生命の維持活動にも支障をきたすことになります。
血管性の病変で起こる脳の疾患は、一般的には脳卒中と呼ばれ、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞(脳塞栓、脳血栓)に分けられています。
今回はその中で、脳の動脈が動脈硬化を起こし、血管内部が狭くなり血流が途絶える、 脳血栓症 をとり上げることにいたします。
脳血栓症は血管性の病変―FASTを忘れないで(前編)!
脳血栓症の病態
脳の活動を手助けしている血管が加齢などで動脈硬化を起こすと、弾力性が低下し脳動脈瘤ができたり、血管壁が厚みを増し内腔が狭くなったりします。
特に細い末梢動脈で起こった場合、血流が滞るため血液が凝固しやすくなります。この状態になりますと、酸素を受けていた脳の神経が酸素不足をきたし、壊死を起こすことで脳の機能がストップします。この状態になると当然発作を起しますが、それが脳血栓症です。
脳血栓には2種類あります
脳血栓にはラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞の2種類があります。
ラクナ梗塞は多くは高血圧が原因で、私たち日本人に結構見られます。中でも比較的高齢者に多く発症し脳の毛細血管が詰まります。以前は脳軟化症と呼ばれていた疾患がこれにあたります。
アテローム血栓は脳の太い動脈や頸動脈に血栓(アテローム―脂肪の塊)が詰まることで、血流がストップします。比較的重症になるため注意が必要です。脂肪中心の食生活の影響が大きいと考えられています。
脳血栓症は多くの場合、急激に発病して、症状は急速に進展します。それから、症状は短い場合は数分で治まるときもありますが、長いと数日間は続きます。
致命的でなければ、症状は回復の方向に向かいますが、病巣の場所や脳のダメージの受け方に応じて、後遺症が残るのが普通ですが完全に回復することもあります。
脳血栓症の原因
脳血栓症、脳塞栓症を含めた脳梗塞は、肥満、過飲酒、運動不足、喫煙などの生活習慣病が大きなウエイトを占めています。
引き金になるのは、原因疾患として動脈硬化症が挙げられます。動脈硬化が進み弾力性を失った血管壁に血中脂肪が沈着し、内腔を狭くしたり血流を妨げたりすると、やがてこれらが血栓となって完全に血流をストップさせます。
特に、高血圧症、糖尿病、高脂血症などがある人は、動脈硬化を併発することが多く、脳血栓になりやすい傾向があります。
後編では、脳血栓症の症状や治療法をご紹介します。
まとめ
脳血栓症は血管性の病変―FASTを忘れないで(前編)!
脳血栓症の病態
脳血栓症の原因