類天疱瘡 とは、虫刺されや火傷など特に心当たりがなく、体中に赤い発疹があらわれて、さまざまなサイズの水泡が全身にできてしまう皮膚疾患です。まれに若年者にもみられますが、高齢者に多く発症しています。そのメカニズムや症状の特徴、治療について詳しく解説します。
高齢者に多い皮膚病、類天疱瘡とは
赤いポツポツがかゆくなり、水泡が全身に
始めは小さな発赤で気に留めることはありませんが、日々症状は進行して気が付くと水泡が形成されています。いたるところに発赤があらわれて、大小さまざまなパンパンの破れにくい水泡ができるのが特徴です。
つらい痒みを伴うため苦痛は大きくなります。赤くただれた皮膚が露出し、これをびらんといいます。火傷や虫刺されならば局所にとどまるはずですが、類天疱瘡の場合は全身的な症状で、時には口の中までびらんができてしまいます。
60歳以上の高齢者、特に70~90歳代に好発しています。
他人にうつる病気ではありません。反対に、びらんが感染を起こすと治りが悪くなるので、何らかの菌がうつらないように清潔に扱う必要があります。
原因は現在分かっていません
皮膚の表面を構成している表皮と真皮の間には接着成分があり、しっかりとくっついています。その接着成分の構成タンパクであるBP180とBP230に対して、自己抗体ができて攻撃してしまうことが原因です。表皮と真皮の間が壊されてはがれてしまい、水泡やびらんができてしまいます。
どうして特定の人に、自らの体内に皮膚のタンパク質を攻撃してしまう抗体ができるのかは、今のところ分かっていません。高齢化の進む日本では類天疱瘡の患者数は増加傾向にある状態です。
皮膚を採取して検査
診断は症状だけではなく検査と組み合わせて行われます。局所麻酔で皮膚を一部切り取り(皮膚生検)、顕微鏡による組織検査が行われます。表皮の下に水泡が確認され、さらに病変部の皮膚の基底膜に抗体(免疫グロブリン)の沈着が確認されます。
採血では炎症の数値が上昇し、自己抗体の存在が確認されます。水泡の全身への広がり具合(個数)や抗体値を調べることで病気の勢いを評価し、治療方針が決まります。
生検や特殊検査が必要になるので、ある程度検査体制の整った皮膚科のある中規模以上の病院を受診することが望ましいでしょう。
ステロイド治療が中心です
治療は副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド)の内服が基本です。ステロイドにより自己抗体の産生とはたらきを抑制します。ステロイドを開始すると速やかに症状が緩和されます。
高齢者の場合は治療の効果が得られやすいですが、若年者の場合には難治性のこともあります。新たな水泡形成がみられなくなれば徐々にステロイドを減量していきます。
ステロイドの内服治療では、ある一定期間は飲み続けることになります。長期使用は高齢者にとっては胃潰瘍や高血圧、骨折などのリスクを高めるため、症状に応じて投薬量、期間の調整が重要となってきます。
軽症であればステロイドを用いずにテトラサイクリン(抗生物質)とニコチン酸アミド(ビタミン剤)を併用した治療が行われています。ステロイドの塗り薬だけで軽快する例もあります。
難治例では免疫抑制剤の内服やステロイドパルス療法が行われます。病気の元となる抗体を取り除くために血漿交換療法や免疫グロブリンの大量療法が行われることもあります。
日常生活の注意点
重症例でなければ外来通院でも治療が可能です。ただし、ステロイドによりコントロールしているため正しく服用を継続する必要があります。確実に服薬できるようにしてください。自己判断での中止は症状の再燃を招く可能性があります。
皮膚全体が過敏でもろくなっているため、絆創膏は使用せずに優しくガーゼで覆うように処置をして下さい。少し当たっただけでも水泡ができてしまいます。きついベルトや締め付けのある衣服の着用は避けるようにしてください。
入浴は可能です。皮膚を清潔に保って必要な箇所には処方された外用薬を塗布してください。
水泡やびらんのあとは徐々に消えていきますが、新たに発赤ができていないか観察を続けて下さい。
まとめ
高齢者に多い皮膚病、類天疱瘡とは
赤いポツポツがかゆくなり、水泡が全身に
原因は現在分かっていません
皮膚を採取して検査
ステロイド治療が中心です
日常生活の注意点