「緑内障が原因の交通事故が多くなっています(前編)」では、緑内障の説明や原因をご紹介しました。後編では、緑内障の症状や治療法をご紹介します。
それでは、なぜ 緑内障 が 原因 の交通事故が増加傾向にあるのでしょうか。その背景を考えましょう。
緑内障が原因の交通事故が多くなっています(後編)
緑内障の症状
一般的な緑内障の自覚症状は2つあります。1つは視野の中に見えない場所があることです。そして、もう1つは、視野狭窄です。日常的な生活の場では両目をつかっていますので、初期の段階では多少の視覚障害があっても、病状の進行はゆるやかなため、自覚していないのが大部分です。
しかしながら、自覚症状を感じた場合は病状がかなり進んだ状態になっており、視野狭窄、視力の低下が進むと失明に繋がることがあります。
開放隅角緑内障
この疾患は病状がある程度進行するまで、自覚症状がありません。というのも、正常眼圧緑内障が多く、眼圧も20mmHgを少し超えるぐらいですので、視野検査をすれば多少の障害を見出されますが、当の本人が視野狭窄を自覚することはほとんどないのが実情です。
閉塞性隅角緑内障
この疾患は正常な眼圧下で自覚症状がないうちに、突然急性発作を起こします。その場合、眼圧があっという間に、40~60mmHgぐらいまで上昇します。そのため、見え方の異常の他に、頭痛や眼の痛みを感じます。これが、急性緑内障発作と言われています。
緑内障の検査と診断
緑内障になると、眼の奥にある視神経乳頭の中心部の陥凹(へこみ)が大きくなります。これは、眼と脳を繋ぐ視神経が減少することで起きます。したがって、眼底の陥凹を観察することで、緑内障であるかどうかが分かります。
眼科領域にも画像診断装置が導入されています。緑内障で言えば、三次元画像解析装置で視神経乳頭の小さな陥凹や、網膜の層の薄さまで検査できるようになり、緑内障の初期から診断が出来るようになっています。
緑内障が疑われた場合、視野検査装置を使った検査をすることになります。これは緑内障になると視野の中に見えにくいところが出てきます。実際には、その見えにくいところが大きくなるまで自覚できないのが大部分で、眼底検査や三次元画像解析装置で疑われた際には、この検査を行います。
緑内障の診断には、眼底検査、視野検査、そして眼圧検査を加えた3つの検査が必要であり、緑内障の種類を見極めるためにも、治療方針を進めるためにも、この眼圧検査は絶対になります。さらに加えれば、隅角検査や細隙灯顕微鏡検査も、緑内障の種類を診断するには必要になります。
緑内障の治療
緑内障の治療で最も大事なのは眼圧を下げることです。進行を抑えたり、遅らせたりすることが可能になります。また、正常眼圧緑内障の進行を遅らせるには、眼圧を下げることで出来る場合があります。
一度障害された視神経は、元に戻ることはありません。それに、治療をどんなに施しても進行を止められない緑内障もることをあります。とにかく、視神経への障害が及ばないうちに治療が出来れば、最悪の事態を避けることが出来ます。
治療は薬物療法が主体になります。緑内障の種類を知った上で、重症度、眼圧の高低を見て、点眼薬を処方します。点眼薬は10種類程度あり、効果を見ながら場合によっては複数の点眼薬を使います。ここで承知しておかなければいけないことは、点眼薬はあくまでも病を維持するためのものであって、治すためのものではないということです。
眼圧を下げる飲み薬もありますが、副作用が強いので必ずしもお勧めはできません。いずれにしても、根気よく点眼薬を続けることが大切です。
レーザー治療では、眼内の房水の流れを変えるために虹彩に穴をあける方法と、繊維柱帯に照射することによって、房水を排出するのにレーザーを使います。
手術は薬物やレーザー治療で効果がなかった場合に行われます。これもレーザーの場合と同じように、房水を眼の外に出すようにする手術と、線維柱帯を切ることで房水を排出する手術があります。これは、眼圧を下げるのが目的で行われるもので、術式も進み、治療成績もよくなってきましたが、術後も定期的にフォローすることが必要です。
高齢化が進むと、当然のことながら緑内障の患者さんが増えてきます。先述の交通事故が多くなってくる背景には、このように高齢者の緑内障が影響していることが考えらます。
運転免許の更新の時に、眼科医を訪れて、緑内障の検査、それも視野検査を必ず行うようにしたいものです。なぜなら、何回も示してきましたが、自分が緑内障になっていることに気がつかないからです。
まとめ
緑内障が原因の交通事故が多くなっています(後編)
緑内障の症状
緑内障の検査と診断
緑内障の治療