高齢化社会になって多くなっているのが高齢者による交通事故です。中でも、アクセルとブレーキを間違えて踏み込んで起こる事故が多いのですが、実は、 緑内障 が 原因 の事故も多くなっています。
これは視野に異常が起きているのですが、それに気がつかないで運転をしていて、突然事故を起こすことがあるのです。都合の悪いことに痛みを感じるとか、気分が悪いとかの自覚症状があればいいのですが、そのような症状は全くないので、視野に異常が出ていることを意識しないで運転すると、当然事故につながりかねず、注意を要します。
ここでは、その緑内障を明らかにして、積極的に診察を受診するようにお勧めしたいと考えています。
緑内障が原因の交通事故が多くなっています(前編)
緑内障とは?
私たちの眼から入ってきた視覚情報は、視神経によって脳に伝達されます。その視神経に障害が起こると視野狭窄が起こります。それが緑内障です。
その緑内障の定義ですが、日本緑内障学会のガイドライン(第三版)によると、「視神経と視野に特徴的変化を融資、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」とされています。
厚生労働省研究班の調査では、緑内障は眼疾患の中で失明率が一位で、それに加えて、緑内障学会が行った最近の調査によると、何と40歳以上の緑内障の有病率が5%あったとのことで、緑内障の患者さんが20人に1人の割合でいることになります。
それだけでなく、5%の有病者のうち、それまでの間に緑内障と診断されていたのは1割に過ぎず、ほとんどの人は緑内障であるにもかかわらず、それに気がついていない人がいたのです。
今では、緑内障即失明ということは少なくなっていますが、やはり、早期発見、そして早期治療が鉄則で、そうすることで、失明という最悪の事態を免れることが出来そうです。
進行はゆっくりで遅く、症状は一気には進みません。
緑内障の原因
眼の中を循環する房水の圧力が一定になることで眼球の形が保持されています。そして、私たちがよく聞く眼圧というのは、この圧力のことを言っています。
平たく言えば、眼圧は目の硬さということになり、実は、この眼圧が問題になります。というのは、眼圧の正常範囲は10~20mmHgとされていますが、20mmHgを超えて眼圧が上昇しますと、視神経に障害が起こりやすくなり、結果として緑内障になりやすくなるのです。
その一方で、眼圧が高くないのに緑内障(正常眼圧緑内障)が発症することが分かっています。その理由としては、そういう患者さんは、前から視神経が眼圧にたいして抵抗力が低いので、障害が起きたのではと考えられています。
他にも、視神経が弱い、血流量が少ない、免疫異常なども挙げられますが、いずれも確実なものとされているわけではありません。
緑内障は眼圧の上昇の原因によって、原発緑内障、発達緑内障、続発緑内障の3つが挙げられ、原発緑内障、続発緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障の2つに分けられています。
緑内障の分類
原発開放隅角緑内障
原発開放隅角緑内障は緑内障疾患の約80%を占め、慢性緑内障と言われています。日本人の緑内障患者の場合、眼圧が21mmHg以下の正常眼圧緑内障が93%で、21mmHg以上の原発開放隅角緑内障は7%と少ないのが現状です。
(原発とは他の誘引となる病気がないことを言っています)(隅角とは眼球の中の角膜と虹彩の間を指しています)
つまり、正常眼圧緑内障が圧当的に多く、この緑内障ははっきりした原因は分かりませんが、視神経が弱くなって21mmHg以下と正常値の範囲内にありながら、進行はゆるやかに視神経障害と視野狭窄を発症します。
原発閉塞性隅角緑内障
原発閉塞性隅角緑内障は急性緑内障と言われており、緑内障疾患の10%を占めています。これは、隅角が狭くなり、そのうちに閉じてしまうことで房水流れなくなり、そのために眼圧が急に上がることがあり、これを急性緑内障発作と呼んでいます。
続発性緑内障
ぶどう膜炎、糖尿病、網膜中心静脈閉塞症など、身体や眼の疾患が原因で眼圧上昇が起こり、隅角が開かれた場合もありますし、閉じた場合もあります。失明率が高い、糖尿病が原因の血管新生緑内障は代表的な疾患です。この疾患は元の病気の治療が大事になります。
後編では、緑内障の症状や治療法についてご紹介します。
まとめ
緑内障が原因の交通事故が多くなっています(前編)
緑内障とは
緑内障の原因
緑内障の分類