「心房細動は根治できるか 病態からみた心房細動治療の違い(前編)」では、一過性心房細動と慢性心房細動の治療法の違いについてご説明いたしました。また、一過性心房細動の治療法として用いられるアブレーションについてご紹介いたしました。
後編では、慢性の 心房細動 にはどのような 治療 が用いられるのかご紹介いたします。
心房細動は根治できるか 病態からみた心房細動治療の違い(後編)
慢性心房細動はいかに付き合っていくかがカギ
慢性心房細動に対し洞調律に戻すことは至難の業です。無理に行うことは心臓の機能に障害を作ることもあります。
慢性心房細動の場合は、まず心房細動を受け入れ、発作が起きないように心拍数を薬で抑えることを行います。また、心房細動によって心臓内血栓が形成されやすいことから、脳塞栓のリスクを評価して抗血栓療法を同時に行います。
心拍数を抑えるのは心臓の筋肉の動きを抑えるのではなく、心拍数に関与する交感神経の働きを弱める薬剤を使います。これは神経の働きに作用するため、長期間の使用でも心臓の機能に障害をもたらすことは非常に少なくなります。
抗血栓療法は血液の凝固機能を弱めることで血栓形成を抑える治療です。しかし、出血傾向となるため脳出血のリスクもあり、最近の薬剤はコントロールが容易な分、心臓以外の副作用が強い欠点があります。
心房細動の外科的手術
ここまで心房細動の治療として薬物療法やカテーテル治療をご紹介しましたが、外科的手術もあります。心房細動の原理は電気刺激の根源が心房にあり、それが電気回路としてグルグル回っている状態でした。
アブレーションはそこを火傷にして回路を遮断しますが、外科的手術は心房を切り刻むという、少し恐ろしい手技になります。
この手術はメイズ手術といいます。心房を切り刻むといっても、切った部分はそのままではなく縫合してもとに戻しますが、まさに手術という人間の手で電気回路を切断する方法です。
しかし、この手技は人工心肺という心臓と肺の代替機器を使用することから、他の心臓手術に併せて行うことが多く、この手技だけに単独で行うことは少ないです。
循環器の医師でも不整脈専門の医師が存在する
心房細動の治療においては、循環器を標榜している医療機関に受診することになりますが、最近では同じ循環器の病気であっても、病気ごとの専門性が問われる時代になりました。
不整脈という病気は、病気のメカニズムと独自の治療方法があり、医師であれば誰でも治療ができる訳ではありません。できれば不整脈を専門としている医師に相談するか、現に心房細動の治療を公表している医療機関に受診することをお勧めします。
まとめ
心房細動は根治できるか 病態からみた心房細動治療の違い(後編)
慢性心房細動はいかに付き合っていくかがカギ
心房細動の外科的手術
循環器の医師でも不整脈専門の医師が存在する