心房細動は、発作により胸が苦しい症状があります。発作がなければ症状は特にありませんが、心房細動が続くことで心臓内に血栓を形成する可能性があります。できるだけ心房細動を根治して正常なリズムに戻すことは大事ですが、この数年間で心房細動治療の考え方が変化しました。
今回は、過去から現在までの 心房細動 治療 の変化を通じて、治療方法を詳しくご説明します。
心房細動は根治できるか 病態からみた心房細動治療の違い(前編)
一過性と慢性とでは治療は異なる
心臓は電気刺激が伝わることで心臓の筋肉が動き、血液を循環させています。正常な心臓は洞結節から電気刺激を開始し、血液を拍出する心室に伝わります(洞調律)。実は洞結節以外にも電気刺激の根源が心房に存在します。
心房細動は洞結節以外で電気刺激が始まり、心房のあっちこっちで電気刺激がグルグルと回ります。そして不規則に心室へ刺激が伝わっていくので、脈が速くなることもあれば遅くなることもあり、大変迷惑な不整脈です。
普段は洞調律なのが、突然心房細動になることがあります。
この場合は脈が速くなる発作性心房細動であることが多く、これだけ迷惑な不整脈であるなら、正常な洞調律に戻すことが優先されるべきとして、抗不整脈剤か電気ショックでお馴染みの除細動器を用いて正常洞調律に戻すことを行います。
正常洞調律に戻った場合は抗不整脈を投与し続けてコントロールをしますが、それでも発作性心房細動を発症することがあり、その都度除細動を行うも洞調律に戻らず、結局のところ慢性心房細動に移行してしまうことがあります。
発作性心房細動のような一過性の心房細動に対しては、リズムコントロールとして積極的に正常洞調律に戻す治療を行います。慢性心房細動においては、無理に洞調律に戻すことはせずにレートコントロールという心拍数が速まらないように心拍数を抑えた治療を行います。
一過性心房細動を根治に近づけるにはアブレーション
心房には洞結節以外に電気刺激を開始できる機能があります。心房細動時の電気の発生を検査してみると、まるで心房内をグルグルと電気が回っているような状態になっており、心房には無数の電気回路があることが判明しております。
心房細動を抑えるには抗不整脈剤を投与することで可能となりますが、同時に心臓の興奮を抑えますので、長期に渡る治療では心臓の機能を悪化させてしてしまうことが強まってしまいます。
また、抗不整脈剤を投与しても心房細動が完全に消失することはなく、薬だけでは根治ができません。
その問題を解決すべく、心房の電気回路を遮断することで本来の電気の流れにできるという発想からアブレーションという手技が生まれました。アブレーションは、カテーテルという管を心房まで挿入し、カテーテルの先端から高周波を流すことで心臓の内側の筋肉に火傷を作ります。
火傷により電気回路が遮断され、電気がグルグル回らずに正常な洞調律に戻るメカニズムです。アブレーションにおいても再び心房細動を発症することはありますが、1年後の洞調律維持率は90%であり、抗不整脈剤の60%よりもはるかに成績がよいことが報告されております。
最近では高周波カテーテルに生理食塩水を噴出する機能のカテーテルがあり、通電能力を高めてより深部まで焼灼できることができ、一過性の心房細動の治療の第一選択として広く行われております。
まとめ
心房細動は根治できるか 病態からみた心房細動治療の違い(前編)
一過性と慢性とでは治療は異なる
一過性心房細動を根治に近づけるにはアブレーション