「心房細動のメカニズムとガイドラインの役割(前編)」では、心房細動がどのようにして起きるのかご説明いたしました。後編では、 心房細動 に関する ガイドライン とその治療法をご紹介いたします。
ガイドラインには、標準的であり、かつ安全な治療を提供するという重要な目的があります。
心房細動のメカニズムとガイドラインの役割(後編)
本邦の心房細動に対するガイドライン
心房細動のガイドラインは、日本循環器学会が中心となり、関連学会と合同で平成13年に作成されました。その後平成20年と平成25年に改訂され、現在では「心房細動治療(薬物)ガイドライン」として公表されております。
その他にも心房細動の非薬物治療や検査方法などを細分化したガイドラインがあり、「不整脈の非薬物療法ガイドライン(平成23年改訂)」、「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン(平成24年改訂)」、「臨床心臓電気生理学的検査に関するガイドライン(平成23年改訂)」などがあります。
ガイドラインから読み取る心房細動の治療
現在の心房細動の治療は大きく分けて3つあり、心拍数のコントロール、正常調律化(心房細動を洞調律に戻す)、抗血栓療法となります。
心拍数の異常は身体的に負担がでるため身にしみてわかりやすいものですが、心房細動が心臓内に血栓を形成しやすいことは、血栓が飛んで血管を閉塞させない限り症状がでません。
ガイドラインでは、この血栓に対しての治療にウエイトをおいております。これは心房細動で形成した血栓が脳塞栓を発症することを問題視しているからです。
心房細動が血栓を形成しやすく抗血栓療法が必要であることは以前から解っていたことですが、当時はワルファリン製剤を投与してコントロールしていました。
しかし、意図的に血液が凝固しにくくすることは逆に出血傾向にすることであり、脳塞栓症は回避できても脳出血をおこしてしまうことがあります。
また、心房細動は一過性や慢性の違いもあり、一律に抗血栓療法を適応すべきかが、非常にあいまいだった経過があります。
この心房細動による脳塞栓の研究が積み重ねられ、脳塞栓のリスクを評価した指標ができました。この指標は心房細動による脳塞栓症の可能性を評価しており、病歴や年齢などの項目に配点をして、基準点異常であれば抗血栓療法を開始するといった内容です。
ガイドラインには詳しく掲載されおり、日ごろ診療している医師もこの指標を用いて心房細動の治療を行っております。
納豆が食べられる抗血栓療法
ガイドラインに「納豆」の文字はありませんが、抗血栓療法としてワルファリン製剤を服用すると納豆を食べることができません。それは納豆にあるビタミンKがワルファリン製剤の効果を弱めてしまうからです。納豆を好物としている方は非常に惨い話です。
また、ワルファリンは血液検査での血液凝固の度合いで薬の量を決めるので、受診の度に毎回採血をしなければならず、受診の回数もそれなりに増えてしまいます。
最近では、納豆も食べられ、毎回の血液検査を行わずともワルファリンと同様な効果を得られる薬剤が世に出てきました。ガイドラインではその製剤を紹介し、投与の仕方や注意点などを詳しく説明しています。
心房細動のガイドラインは医学研究のもとに作成され、今後も何年かごとに改訂されていきます。病気や人間の体は未だに判明していないことが多く終わりはありません。ガイドラインは病気で悩む人々に対して、標準的で安全な治療を提供できる重要な役割があるのです。
まとめ
心房細動のメカニズムとガイドラインの役割(後編)
本邦の心房細動に対するガイドライン
ガイドラインから読み取る心房細動の治療
納豆が食べられる抗血栓療法