心房細動は、何もなければ命の危険性は低い不整脈です。しかし、リズムが不安定であることと心房細動が原因で二次的な病気を発生しやすいことがあり、心臓に爆弾を抱えていることになります。
諸外国、そして日本においても関連学会が推奨する治療のガイドラインがあり、心房細動の治療はより安全に根治できるものとなってきました。
今回は、 ガイドライン を中心に 心房細動 の病態と薬物治療をご紹介します。
心房細動のメカニズムとガイドラインの役割(前編)
まずは心臓の調律と心房細動
心臓は電気信号が伝導することで動きます。心臓は上下に分けると上側が心房で、下側が心室です。また左右にわけられており、それぞれ右心房、右心室、左心房、左心室と4つにわけられております。
心臓の右心房に洞結節という組織があり、心臓の電気が発生する組織です。洞結節で発生した電気信号はヒス束という組織に伝わります。ヒス束は心房と心室の間、左右の真ん中、すなわち心臓の中心に位置します。
そしてヒス束から伝わった電気信号は心室にあるプルキンエ線維と呼ばれる組織に伝わります。プルキンエ線維は左右に分かれており、電気信号を受けた左右の心室が筋肉を収縮して血液を送り出します。正常な心臓は、洞結節からプルキンエ線維まで伝導経路は1つです。
これを洞調律といいますが、運動や緊張で脈が速くなる時は洞結節がコントロールしていることになります。
心房細動は電気の発生源が洞結節ではなく、心房のあちらこちらで発生させます。もともと心房には電気を発生させる能力があり、洞結節ではなく心房の電気信号もヒス束やプルキンエ線維は伝導させてしまうことがあります。心房細動はリズムの最初が狂っている不整脈なのです。
心房細動は、指示命令系統が崩壊した会社組織と似ている
心房細動の問題点は、時に脈を速めることや遅くしてしまう不安定な調律です。ここで会社組織に例えると理解しやすいことがあり、洞結節を上司としてヒス束以下を部下とし、電気信号を発生できる心房をベテラン職員と例えます。
上司の指示命令を出して部下は動くのは会社組織の基本であり、心臓においても洞調律が基本です。
心房細動は、上司が疲れてくると上司の周りにいる複数のベテラン職員がでしゃばって騒ぎだし、噂話を始めます。部下は従順であるためベテラン職員の噂話を命令と受けて従ってしまいます。ベテラン職員の噂もさまざまで、いろんな噂が部下に伝わり矢継ぎ早に命令となって部下が反応します。
こうなると心臓では発作的に脈が速くなってしまいます。逆にたくさんある噂ばかりが行き来してしまい、本来の命令が乏しくなることがありますが、心臓では極端に脈が遅くなります。
指示命令系統が崩壊している会社は部下が疲弊してしまいますが、心臓においても心房細動では心臓に負担がかかり、心不全を引き起こす原因となります。
まとめ
心房細動のメカニズムとガイドラインの役割(前編)
まずは心臓の調律と心房細動
心房細動は、指示命令系統が崩壊した会社組織と似ている