今から60年以上も前のことですが、その頃医者になった人が、心臓病に出会うとしたらその大半がリウマチ性の弁膜症で、これから話題にあげようとしている虚血性心臓病である狭心症や心筋梗塞は少なかったそうです。
ところが半世紀以上経った今日、弁膜に障害を持つ人は極端に少なくなり、代わって虚血性心臓病である狭心症や 心筋梗塞 が大半を占めるようになっています。この理由として考えられるのが、虚血性心臓病の原因である、動脈硬化の促進危険因子である、高血圧、高脂血症、喫煙、糖尿病、ストレス、肥満、運動不足などです。
一日に10万回以上も拍動している心臓の病気、中でも虚血性心臓病の心筋梗塞は、食生活の変化から若年者にも増えていますが、何といっても高血圧や糖尿病の発症率が高い高齢者に多くなっています。
これより心筋梗塞についてご説明をいたしましょう。
心筋梗塞にならないように心がけましょう。
心筋梗塞って、なに?
私たちの心臓はその大部分が心筋という筋肉でできています。そして、静脈系を通して老廃物(二酸化炭素)を含んだ血液を肺へと送り、肺組織の毛細血管で二酸化炭素と酸素のガス交換した血液を、左心室の力強い収縮によって、大動脈へ拍出、全身へ送り出す役割を担っています。
心臓はこの拍動・拍出を休むことなく続けているのです。この心臓の活動の中心にあるのが冠状動脈で、強力な拍動・拍出を担っている心臓の筋肉に、酸素と栄養を供給しています。
この冠動脈の一部が閉塞すると、その先には血液がいかなくなり酸素と栄養が届かないことになります。そうなると、その先の心臓の筋肉は壊死を起こし、拍動・拍出のポンプ活動ができなくなる重大な障害となります。これが心筋梗塞です。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞の大多数は、冠状動脈の壁にできている粥状硬化巣(プラーク)が剥がされると、そこにできた傷口の修正のための血栓が大きくなり、狭窄または閉塞されることで血流が途絶えた結果、発症します。
その他にも、血流が運んできた血液の小さな塊が、同じように狭窄または閉塞を誘引、発症する場合もあります。いずれにしても、血流が途絶えることで心筋は壊死を起こし、心臓の一部が死んでしまいます。
心筋梗塞はどんな症状を見せるのか
心筋梗塞の典型的な症状は、胸痛、胸部絞扼感で狭心症に似ているのですが、その度合いの強さや持続時間、性質、起こり方に違いがあります。
今にも死ぬのではないかという恐怖や不安感に襲われ、冷や汗や吐き気、便意を催すこともあります。他にも、急に倒れたり、息苦しくなったりもします。高齢者は、軽い痛みや圧迫感を受けますが、中には何も感じない人もいます。
胸痛は前胸部のセンターが多く見られますが、胸全体のこともあります。頸、背中、左肩、左腕、上腹部で感じる人も結構います。
これらの心筋梗塞の症状は何の前触れもなく突然見舞われる場合もありますが、多くは狭心症の発作の回数が増えるのを前兆として起こります。
心筋梗塞の発作は、疲労や緊張、過食、暴飲、寒さや暑さなどが誘引となる場合が多く、心筋梗塞症状は狭心症とは違って、数十分から数時間続く場合もありますが、10分程度で終わる場合もあります。
発作時に心筋梗塞と狭心症の区別がつかない場合が見受けられますが、ニトログリセリンを処方して、症状が治まれば狭心症。症状が続けば心筋梗塞ということになります。
心筋梗塞を発症したらどうすればいいのか
心筋梗塞は発症後急死することがあります。また、数時間から数日間の死亡率も高く、ショック状況や急性心不全、重症の不整脈があった場合は、危険と思わなくてはいけません。しかしながら、発症後一週間、再発が起こらない限り死亡の危険度はずっと小さくなります。
病気に気づいたら楽な姿勢をとり安静にします。呼吸が苦しいときは座位の姿勢で保ちます。そして、ニトログリセリンがある場合はすぐに服用し、救急車を呼びます。そして、CCU(Coronary Care Unit)冠疾患集中治療室の設備がある病院に行くことが重要です。
特に心筋梗塞は季節的には寒い時期や暑い時期、時間的には就寝中や明け方に発症することが多いので、身体の脱水には気を付けるようにしたいですね。
心筋梗塞の治療
心筋梗塞と診断が確認されたら、すぐに冠状動脈の状態を知るために冠動脈撮影を行います。そして血栓があれば溶解します。
さらに再灌流療法といって、発症から12時間以内であれば、バルーンのついたカテーテルを用いてステントを血管内に留め、閉塞を解消します。これによって血流は再流し心筋の壊死を免れます。
カテーテルが使えないような場合は、血管の迂回路を作るためにバイパス手術を外科的に行います。
その後は、段階的に様子を見ながら運動などのリハビリを行います。そして徐々に行動範囲を広げて、病状にもよりますが一般的には10日前後、バイパス手術の場合で20日前後で退院できるようになります。
心筋梗塞にならないためには
さあ、ここまで心筋梗塞について説明してきましたが、それでは心筋梗塞にならないためにはどうすればいいのでしょうか。
まずは、原因である動脈硬化を防ぐこと。次に引き起こす誘引を避けること。そして心筋梗塞の前兆に注意を払うことの3つが挙げられます。
繰り返し述べますが、心筋梗塞は動脈硬化の進んだ人に多く見られます。高齢者になると、高血圧、高脂血症、糖尿病、痛風などに気をつけ、異常が発見されたら塩分、動物性脂肪、糖分、肉食などの摂取を減らし、肥満にも注意を払います。もちろん、煙草は厳禁です。適度な運動はその限りではありません。
心筋梗塞は過度の疲労や緊張、暴飲暴食、気温の変化などが誘引となりますので、高齢者は特に注意が必要です。
そして前兆ですが、これまで何の症状がなかったのに、急に胸痛や胸部への圧迫を感じ始めたら、心筋梗塞が疑われます。また狭心症を患っている人が、今まで以上に発作の回数や時間が長くなった場合は警報となっている可能性もあるので、専門医に診断を求めるようにしましょう。
高齢者の皆さんはご自分の身体に異常があった場合、年のせいだからといって、簡単に済ませてしまうことが多いですが、放置したままにしてはいけません。もしかすると症状が進んで取り返しのつかないことになりかねません。
それを防ぐためには、早期の受診と早期の治療が大事になります。119番に電話する前に、日常的にお医者さんに相談されることをお勧めいたします。
まとめ
心筋梗塞にならないように心がけましょう。
心筋梗塞って、なに?
心筋梗塞の原因
心筋梗塞はどんな症状を見せるのか
心筋梗塞を発症したらどうすればいいのか
心筋梗塞の治療
心筋梗塞にならないためには