膵臓癌は悪性度の高い根治不可能な病というイメージがあります。近年増加している膵管内乳頭粘液性腫瘍は、時間が経つと最終的には膵臓癌へと悪化します。しかし悪化する前の段階であれば治療が行える点で通常の膵臓癌とは異なります。
膵管内乳頭粘液性腫瘍 とはどんな病気でしょうか?
膵嚢胞のうち、癌化しやすい膵管内乳頭粘液性腫瘍とは?
膵嚢胞のうちのひとつ
膵嚢胞(すいのうほう)とは膵臓やその周りに嚢胞という袋ができることで、良性のものや切除の必要がある悪性のものがあります。年齢とともに増加し、80歳以上では8~9%と珍しくない病気です。検診などで偶然見つかることが多く、ほとんど症状がありません。
膵嚢胞のうち、膵管内乳頭粘液性腫瘍は最も発生頻度の高い嚢胞性腫瘍です。その原因ははっきりとしていませんが、慢性膵炎や喫煙、飲酒、肥満、膵臓疾患の家族歴が影響することはわかっています。
嚢胞から悪化して癌に至るまで
始めは小さな腫瘍が膵管上皮からぷつぷつと発生します。小さい膵管から大きい膵管までどの膵管上皮からも発生します。粘液を多く分泌するのが特徴で、時には膵管を粘液で詰まらせることや、粘液が溜まってブドウの房のような形態になることもあります。
小さな良性の腫瘍が時間をかけて大きくなり、最終的には膵臓癌へと悪化します。さらに進行し、膵管内に留まらず膵管外に浸潤した場合には通常の膵臓癌と同様に悪性度の高い状態となってしまいます。
そのため膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断されたら、良性の段階なのか、悪性に変化していないかを詳しく検査する必要があります。
癌化する前の段階で診断できる、早期の膵臓癌を発見するチャンスがある疾患なので「治療できる膵臓癌」ともいわれます。膵嚢胞と診断されたら、詳しく検査をしてもらいましょう。
症状や検査は
画像検査技術が年々向上しているため、膵管内乳頭粘液性腫瘍は発見されることが増えています。無症状の場合が7~8割です。多量の粘液により主膵管が閉塞することで急性膵炎を発症することがあります。
悪性の場合には通常の膵臓癌のように腹痛や嘔吐などの症状がみられ、体重減少をきたしていることもあります。
検査はCTやMRI、内視鏡検査、腫瘍マーカーなどに加えてPETが実施されることもあります。CTはミリ単位で腫瘍の大きさや範囲が確認できるので必須検査です。膵管内乳頭粘液性腫瘍は膵臓癌へと悪化する可能性があるだけではなく、通常の膵臓癌を発生する頻度も高くなっています。
早期に膵臓癌を発見するためにも、小さな膵管内乳頭粘液性腫瘍であったとしても定期的な検査を受けることが大切です。
また、良性の場合でも多臓器に腫瘍を合併するリスクが高いといわれています。最近では必ずしも合併しやすいとはいえない、という報告もありますが、結論は出ていません。現段階では膵臓だけでなく、他の臓器も定期的に検査を受ける方が望ましいとする医療機関が多いです。
治療のガイドライン
診断や治療方針については国際診療ガイドラインに沿って決定していきます。悪性化していないか、今後悪性化する可能性が高くないか、さまざまな指標により評価します。
手術は通常の膵臓癌と同じ膵切除術+リンパ節郭清という比較的大きな手術になります。主膵管といわれる太い膵管に腫瘍が存在する「主膵管型」で、検査で主膵管径が1cm以上であれば浸潤癌である可能性が高くなります。
黄疸や膵炎の症状や、血流のある結節がある場合にも手術の適応となります。通常の膵臓癌と比べて膵管内乳頭粘液性腫瘍の手術後の経過は良好です。
化学療法は浸潤癌で肝臓や肺などの他臓器への転移が認められて切除困難な場合に、通常の膵臓癌に準じた抗がん剤治療が選択されます。
主膵管への進展がなく、細い膵管に留まっている「分枝型」の場合の多くは良性の腫瘍であり、悪性の所見がなければ経過観察となります。「分枝型」や主膵管型との「混合型」は定期的にCTやMRI検査を受けていくことになります。
膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断された多くの場合がこの経過観察にあたりますが、悪化していないか慎重な検査を継続していく必要があります。
まとめ
膵嚢胞のうち、癌化しやすい膵管内乳頭粘液性腫瘍とは?
膵嚢胞のうちのひとつ
嚢胞から悪化して癌に至るまで
症状や検査は
治療のガイドライン