掌蹠膿疱症 (しょうせきのうほうしょう)は手のひらや足のうらに紅斑、水疱、痂皮、落屑などを生じる慢性の皮膚病です。原因はよくわかっていません。骨関節症状をともない、胸に痛みを生じることもあります。またSAPHO症候群として原因不明の痛みに悩まされる場合もあります。
ステロイドやビタミンD3の外用薬、短期間の抗生物質や禁煙で治療します。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とはどんな病気?
掌蹠膿疱症とは
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は慢性の皮膚病です。
“掌”は手掌(手のひら)、“蹠”は足蹠(足のうら)のことで、名前のとおり手のひらや足のうらに紅斑(皮膚の表面が赤くなる状態)として始まり、その後に水疱(水ぶくれ)、無菌性膿胞(ドロッとして粘性が強い内容物を含んだ水ぶくれ)、痂皮(かさぶた)や落屑(らくせつ。皮膚がポロポロと剥がれる症状です)を生じる病気です。
爪や足に病変が生じることもあり、掌蹠外皮疹と呼ばれます。掌蹠膿疱症の原因はまだよくわかっておらず、特になぜ皮膚病変が手のひらや足のうらにだけ生じるのかについては解明されていません。
扁桃炎、副鼻腔炎、歯周病など歯科領域の慢性細菌感染症が発症や増悪に関係しているとされ、その一方で掌蹠膿疱症の患者は喫煙者に多く、禁煙で皮膚症状が軽快することが知られており、タバコに含まれるニコチンやベンツピレンなどの化学物質の関与が疑われています。
骨関節症状
掌蹠膿疱症の10%程度は関節炎を合併し、合併する骨関節症状をpustulotic arthro-osteitis(PAO)と言います。PAOは特に前胸部痛として生じることが多くPAOの70~90%程度に達します。中でも胸肋鎖骨過形成症の頻度が高く、胸肋鎖骨関節の皮膚面が赤くなって腫れます。
他には末梢関節炎や仙腸関節炎を生じることがあります。骨関節症状は皮膚症状よりも先行することが多く(60%程度)、この場合皮膚症状が出現するまでは診断に苦慮することも少なくありません。
皮膚症状との同時発症は25%程度、皮膚症状が骨関節症状に先行する例は10数%と少数にとどまります。
SAPHO症候群
SAPHO症候群(サッフォー症候群)は滑膜炎(synovitis)、座瘡(acne)、膿疱(pustulosis)、骨化過剰(hyperosteosis)、骨炎(ostitis)の頭文字をとってつけられた症候群で、多彩な皮膚および骨関節症状を呈する症候群です。
皮膚所見として本項のテーマである掌蹠膿疱症や融合性座瘡、劇症座瘡、化膿性汗腺炎などが、骨関節症状として胸鎖や脊椎の骨化過剰、末梢性関節炎などを伴います。皮膚病変としては掌蹠膿疱症を合併した例が最も多く報告されています。
検査として骨シンチグラフィーが有用とされており、診断基準として1984年のBenhamouらの診断基準が現在でも使用されています。
骨関節症状のために全身のあちこちが痛くなることがあり、動けなくなることもあるほどですが、“知っている医師は知っている(=知らない、もしくは実際の症例を経験したことのない医師も多い)”病気ですので、診断がなかなかつかないことも少なくありません。
ただし最近、NHKの総合診療医が診断に難渋している病気を解決する番組でも、SAPHO症候群が取り上げられたために、以前よりは知名度が上がってきています。
掌蹠膿疱症の患者さんに痛みが生じた場合、PAOやSAPHO症候群を疑うとよいと思います。ただし掌蹠膿疱症が存在しないSAPHO症候群の患者さんも存在しています。
掌蹠膿疱症感染症の治療
掌蹠膿疱症感染症では感染症や金属アレルギーが原因とは言えないまでも、悪化させている要素である場合があります。これらが疑われるときには短期間抗生物質を投与し効果をみる、あるいは歯科領域などに入っている金属除去を考慮することもあります。
こういった悪化因子を見つけることができない場合には、ステロイド外用薬や活性型のビタミンD3外用薬が使用されます。また上述したように喫煙との関連が疑われている病気ですから、禁煙は不可欠です。
まとめ
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とはどんな病気?
掌蹠膿疱症とは
骨関節症状
SAPHO症候群
掌蹠膿疱症感染症の治療