転移性肝がん とは、肝臓以外の臓器などに発生した悪性腫瘍が、血液によって肝臓に転移したがんをいいます。肝細胞がんや胆管細胞がんなどの原発性肝がんとは異なります。
最も発生頻度の高い転移性肝がんは、大腸がんによる肝転移ですが、胃・膵臓・腎がん、肺がん、胆嚢・道がん、乳がんなどの転移によっても発生します。
転移性肝がんとは何?
転移性肝がんとは
転移性肝がんとは、他臓器などの悪性腫瘍の肝転移によって発生した肝がんのことをいいます。肝がんの約75%がこの転移性肝がんです。この悪性腫瘍の肝転移は、免疫機能の低下や腫瘍の悪性度の進行に依存するようです。
転移性肝がんの症状は、血液検査の腫瘍マーカーの上昇、画像診断、肝機能の異常などとともに、食欲不振、膨満感や腹痛などの自覚症状があらわれます。進行すると、黄疸、腹水、体重減少などの症状を呈します。
転移性肝がんは、腫瘍マーカーと画像診断で状態を把握し、肝切除術治療を実施します。肝切除術が適応できない場合は、抗がん剤を転移肝がんに高濃度注入する肝動脈動注療法、2種類以上の抗がん剤を用いる全身化学療法で治療を行います。
今回は、大腸がんによる転移性肝がんをとりあげます。
大腸がんの肝転移は大腸がんのステージ4にみられ、大腸がんに罹患している人の約10%が、また、大腸がん手術後でみると、約7%の人に肝転移がみられます。治療後、5年後生存率は30~40%とされています。
CEAとCA19-9の腫瘍マーカー測定を行う血液検査、画像検査の超音波検査、CT・MRI検査、PET-CT検査を実施します。造影剤を用いた画像検査は治療方針の決定においても重要です。
手術には、画像解析ソフトによるナビゲーション手術と開腹をしない腹腔鏡下手術があります。また、ラジオ波焼灼システムを併用した腹腔鏡補助下肝切除も行われています。
手術以外では、分子標的治療薬の抗がん剤による全身化学療法、肝臓・腫瘍内科や放射線科などと連携した治療があります。
肝臓がん
主な原発性肝がんは肝細胞がんと胆管細胞がんで、ほとんどが肝細胞がんです。B・C型肝炎ウイルスなどによる肝硬変から肝がんへ進行する場合があります。
肝臓がんは再発しやすく、肝臓内転移が起こりやすいことも特徴です。肝がんは他臓器への遠隔転移が少ないといわれています。しかし、進行すると肺、胃、腎臓、骨などへの転移がみられる場合もあります。
がんの転移とは
原発巣(最初にできたがん)が大きくなると、周囲の血・リンパ管などにがん細胞が浸潤します。浸潤したがん細胞は全身に広がり、肝臓で転移巣を形成すると肝転移になります。リンパ節で塊を形成した場合はリンパ節転移になります。
原発性と転移性の違い
肝がんには、原発性肝がんと転移性肝がんがあり、腫瘍としての性質や治療法は異なります。主な肝細胞には、肝機能を果たす肝細胞と胆管を形成する胆管細胞があります。
原発性肝がんは肝細胞がんと胆管細胞がんで、これら細胞がんは原発性肝がんの98%を占めています。
一方、他臓器(原発臓器)にできたがんが肝転移し、がん病巣を形成したのが転移性肝がんです。従って、原発性肝がんと異なり、転移性肝がんの腫瘍としての性質は、原発巣の性質を有しています。
大腸がんの肝転移では、転移性肝がんは大腸にある原発巣(大腸がん)の細胞で形成されており、性質も大腸がんに酷似します。
肝切除術
転移性肝がんの外科的治療法である肝切除の適応条件は、安全な切除量で転移巣を完全に除去できること、また、原発巣を含む他臓器の病変が制御可能であることです。肝切除量は、ICG-R15、アシアロシンチグラム検査値を参考にします。
術後は創感染などの感染症や胆汁漏などの合併症を生じる場合があります。
大量の肝切除量により肝不全を起こすような場合は、抗がん剤での化学療法で転移巣を縮小後に肝切除を実施する場合や、門脈塞栓術と肝切除の併用、ラジオ波焼灼療法と肝切除の併用、あるいは2期的肝切除術などがあります。
転移性肝がんの内科的治療法は、ラジオ波凝固壊死療法、マイクロウエーブ凝固療法、動注化学療法などがあります。
まとめ
転移性肝がんとは何?
転移性肝がんとは
肝臓がん
がんの転移とは
原発性と転移性の違い
肝切除術