糖尿病 性 腎症 は糖尿病の三大合併症のひとつであり、長い期間をかけて徐々に腎臓の機能が失われてしまう怖い病気です。自覚症状が少ないため、重症化してから見つかることが多く、人工透析を導入しなければならなくなる理由で最も多いのがこの病気です。
静かに進行する糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症とは、糖尿病による高血糖状態が原因で動脈硬化が進んでしまい、腎臓の糸球体にある毛細血管が長い期間をかけて徐々に壊れて機能しなくなってしまう病気です。
腎臓は体の中の老廃物を体外に排泄するという重要な役割を果たしていますが、それは糸球体という毛細血管が集まった部分で行われています。
動脈硬化が進むことによって全身の血管がダメージを受けていきますが、腎臓では糸球体が破壊されて行くことにより、徐々に腎臓本来の機能を果たせなくなってしまいます。糖尿病性腎症は、糖尿病による合併症の中でも生命にかかわる重大な病気です。
糖尿病性腎症になるとどんなことが起こる?
糖尿病性腎症になると、腎臓で老廃物をろ過して排泄する役割をはたしている糸球体が破壊されて機能しなくなってしまいます。
細かい血管が糸を丸めたような状態で球形になっている糸球体は、本来であればたんぱく質や赤血球、白血球、ミネラルなどの必要な成分はそのまま体に戻し、老廃物を体外に排泄しますが、糸球体の細かい血管が破壊されてしまうことにより、老廃物だけでなく体に必要なたんぱく質や赤血球などの成分まで体外に排泄してしまうようになります。
このような状態が進んでくると、むくみや血圧上昇、体がだるいなどの症状が現れてきます。
そしてさらに病状が進むと、最終的に腎臓は尿をつくることすらできない状態となってしまいます。このような状態を腎不全と言いますが、老廃物を体外に排出することができないため尿毒症となり、人工透析等を行わなければやがて死を迎えるしかない状態になります。
人工透析を新たに導入する理由の1位は、1998年以降ずっと糖尿病性腎症となっています。
どのような治療をおこなう?
糖尿病性腎症の治療は、その症状の進み方によって5段階の病気に分かれており、それぞれの段階で治療法が変わってきます。
ただし、血糖値のコントロールは全ての病気にわたって必要となり、病状が進むにしたがって血圧のコントロール、蛋白質の制限、水分の制限が必要になり、最終的には透析の導入となります。それぞれの病期は以下のようになっています。
- 第1期 腎症前期・・・血糖コントロール、蛋白の過剰摂取に注意
- 第2 腎症後期・・・厳しい血糖と血圧のコントロール、蛋白の過剰摂取に注意
- 第3期 顕性腎症期・・・厳しい血糖と血圧のコントロール、蛋白制限食
- 第4期 腎不全期・・・厳しい血糖と血圧のコントロール、蛋白制限食、水分制限
- 第5期 透析療法期・・・透析療法による治療
初期に発見して重症化させないためには?
糖尿病性腎症によって腎臓の機能が失われてしまうと、治療しても元に戻ることはありませんので、いかに早くみつけて治療を開始するかということが大切です。そのためには、糖尿病を放置せずに、血糖値をしっかりとコントロールすることが重要となります。
しかし、糖尿病は血糖値が高くても自覚症状が無いことが多く、しっかりと治療に専念しない患者さんが多いというのが実際のところです。
糖尿病をの治療をせずに放置してしまうと、症状ないまま病状が進んでしまい、救急車で病院に運ばれた時にはもう人工透析を導入するしかないということにもなりかねませんので、患者本人だけでなく家族にもこの病期の恐ろしさをきちんと知ってもらうことが必要でしょう。
また、健康診断などを定期的に行うことも無症状の病期発見には有効ですが、血糖値が高く尿検査でタンパクも検出されるなどの結果が出た場合には、糖尿病性腎症を疑ってみる必要があるでしょう。
尿検査で常にタンパクが検出されるような段階になると、すでに糸球体の30%から50%が障害を受けていると言われています。腎臓の機能をそれ以上失わないようにするためにも、すぐに治療を開始することが大切です。
まとめ
静かに進行する糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症になるとどんなことが起こる?
どのような治療をおこなう?
初期に発見して重症化させないためには?