「前立腺肥大症は男性特有の疾患(前編)」では、前立腺の役割や前立腺肥大症の症状を説明しましたが、後編ではさらに踏み込み 前立腺肥大症 の治療法をご紹介します。
高齢化が進むにつれて、泌尿器系の疾患を罹患する人が多くなり、前立腺肥大症は特別な疾患ではありませんので一人で不安を抱え込まないことが大切です。
前立腺肥大症は男性特有の疾患(後編)
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前立腺肥大症の診断・検査
同じような症状を見せる泌尿器系の他の疾患との区別をするために、前立腺肥大症の診断・検査には専門医の診察が欠かせません。診察は問診に続いて指を肛門から直腸内に挿し入れ、前立腺の大きさや硬さを調べます。これをすることで、前立腺がんや前立腺炎などとの区別ができます。
特に、血液中の前立腺特異抗原(PSA)を調べたり、経直腸的前立腺超音波検査をしたりすることで、前立腺肥大症と前立腺がんの区別の確率が高くなっています。
さらに、レントゲン検査や超音波検査では、前立腺肥大症の進行具合、残尿量、尿管や腎臓への尿の圧迫の程度がわかるようになっています。
それから、前立腺肥大症について国際前立腺症状スコア(IPSS)という症状を評価するシートがありまして、最近の排尿について7項目の質問それぞれに、1~5点までの点数をつけ、それの合計点で前立腺肥大症を軽度、中等度、重度に分け、重症度や治療経過の変化を見ます。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療は、肥大の程度と症状で決まります。先程の第一期~第三期までの症状に合わせて、治療方針が決まります。
いろいろある治療法の中で第一期は薬物療法が中心になります。しかしながら、薬物療法は根本的な治療ではなく、あくまでも対症療法として症状を和らげるものです。どんな薬が使われているかと言いますと、
α受容体遮断薬
ハルナール、フリバス、アビショト
この薬は、自律神経(交感神経)の受容体をブロックします。ようは、前立腺や尿道の緊張を解し、出にくい尿の出をスムーズにします。
抗男性ホルモン剤(アンチアンドロゲン剤)
前立腺肥大は男性ホルモンが関係していることを先述しましたが、抗男性ホルモン剤は、その男性ホルモンの働きを抑え、前立腺を小さくします。
しかしながら、治療効果が出るまでには数カ月という時間がかかります。その上、前立腺がんの腫瘍マーカーのPSAの値も低下させることで、がんの診断に影響が出ることがあります。
手術療法は、第二期、第三期の患者さんに対して行われます。今の主流は経尿道的レーザー前立腺核出手(HoLEP)で、出血量が少なく入院期間が短くて済むのと、前立腺の内側をレーザー照射で除去することで、排尿障害の改善が認められます。
経尿道的前立腺切除術は前立腺の内側を、レーザーではなく切除刀で電気切除する方法で、経尿道的レーザー前立腺核出手術(HoLEP)ができない場合に行われます。
両方の手術とも、いずれも肥大化した腺腫の除去手術ですが、メリットとして侵襲が少ない、手術後の痛みが少ない、出血量が少ない、傷跡が残らない、性機能が温存される、退院が早まるなどの理由が挙げられ、多くの病院で採用されています。
これまで見てきたとおり、この病気を予防する方法はありませんが、症状の悪化は食い止められます。飲酒を控える、高温度の入浴は控える、排尿を我慢しない、長時間の座位は止める、便秘をしない、など前立腺を充血させないようにすることが大事です。
高齢化が進むにつれて、泌尿器系の疾患に罹患する人が多くなっています。前立腺肥大症は特別な疾患ではありません。一人で悩む前に、気楽な気分で泌尿科医に相談されることをお勧めいたします。
まとめ
前立腺肥大症は男性特有の疾患(後編)
前立腺肥大症の診断・検査
前立腺肥大症の治療