膀胱がん の代表的な 症状 として血尿(無症候性肉眼的血尿、顕微鏡的血尿)や膀胱刺激症状(頻尿、排尿痛、残尿感)があります。ただしこれらは膀胱がん以外の病気でも起こります。血尿は腎細胞がんなどの悪性腫瘍、糸球体疾患、細菌感染症などでも生じます。
腎細胞がんの症状として血尿の他に側腹部痛や腹部腫瘤が有名ですが、初期には出現しません。糸球体疾患では血尿以外にタンパク尿を伴うことも少なくありません。
膀胱がんの諸症状とその鑑別疾患
膀胱がんの症状
膀胱がんの症状としては血尿(無症候性肉眼的血尿、顕微鏡的血尿)や膀胱刺激症状(頻尿、排尿痛、残尿感)が代表的です。特に無症候性肉眼的血尿は膀胱がんの初発症状として最も多いものです。
また膀胱刺激症状は膀胱がんの中でも上皮内癌(CIS;cartinoma in situ)によく出現する症状です。しかしながらこれらの症状があるからといって必ずしも膀胱がんであるとは限りません。同様の症状が出現する他の病気があるのです。
そこでこの項では膀胱がん以外の血尿が出現する病気について概説します。なお上記の症状から膀胱がんが疑われた場合には、さまざまな検査を進めていき、診断を確定します。詳細については膀胱癌の項をご覧ください。
血尿の分類
痛みやかゆみなどの症状を全く伴わない血尿を無症候性血尿と言います。尿路結石で激痛を生じ救急搬送される方はしばしば血尿が出ていますが、この場合は無症候性血尿とは言いません。
また女性に多い膀胱炎では上記の膀胱刺激症状とともに血尿が出現しますが、これもやはり無症候性血尿ではありません。
血尿はさらに肉眼的血尿と顕微鏡的血尿に分類されます。
肉眼的血尿はその名のとおり、目で見てわかる血尿です。尿に多量の赤血球が混じることにより、赤色や褐色の尿となります。
具体的には、尿1000mlの中に1ml以上の血液が混じると肉眼的血尿になります。ただし吐血や下血とは違って、肉眼的血尿があっても輸血を必要とするほどの貧血になっていることはほとんどありません。
これに対して、顕微鏡で赤血球が多いことが観察できる程度の血尿を顕微鏡的血尿と言います。したがって、顕微鏡的血尿を起こしていても、自分ではわかりません。
なお検診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿をチャンス血尿と言います。再検査でも血尿が出ている場合は、無症候性であっても精密検査が必要になります。
血尿の原因
腎臓でつくられた尿は尿路を通って膀胱にいったん貯められて、その後体外に排出されます。この一連の過程全てにおいて血尿を起こす病気が起こりえます。
腎細胞がん・膀胱がんのような悪性腫瘍、糸球体(しきゅうたい)疾患、腎盂腎炎や膀胱炎などの細菌感染症、血管病変(腎梗塞、ナットクラッカー現象など)、尿路結石、さらには血液の病気(血栓性血小板減少性紫斑病、血友病など)が原因で血尿を生じることもあります。
これらの病気全てを説明することは難しいので、ここでは特に腎細胞がんと糸球体疾患について説明します。なお腎盂腎炎・膀胱炎についての詳細は尿路感染症の項を参照してください。
腎細胞がん
腎細胞がん(RCC;renal cell caritinoma)は腎臓の近位尿細管と呼ばれる構造物に由来する悪性腫瘍です。肉眼的血尿は側腹部痛、腹部腫瘤とともに有名な症状で、これら3つを腎細胞がんの古典的3徴と言います。
ただし腎細胞がんは発症早期には無症状であることがほとんどで、古典的3徴が出現している腎細胞がんは既に進行していることが少なくありません。健診や他の病気の検査をした過程で、無症状のうちに偶然発見されることが多い病気です。
化学療法(いわゆる抗がん剤を用いた治療)や放射線療法は無効なことが多いために、できるだけ手術で腫瘍を取り除くことが治療の基本となります。
糸球体疾患
糸球体は腎臓の内部にあり、毛細血管でできた糸玉のような構造をしています。左右の腎臓にはそれぞれおよそ100万個の糸球体は尿をつくることに対して重要な役割を担っています。この糸球体が免疫学的な異常や糖尿病や膠原病によって障害される病気が糸球体疾患です。
血尿以外にタンパク尿を伴うことも少なくありません。糸球体疾患が問題になるのは、尿をつくる能力が低下する、すなわち腎機能障害が起こり、腎不全に至ることがあるためです。
自分の腎臓では十分な尿を作ることができなくなり、血液透析や腹膜透析、腎臓移植が必要になるケースもあります。
まとめ
膀胱がんの諸症状とその鑑別疾患
膀胱がんの症状
血尿の分類
血尿の原因
腎細胞がん
糸球体疾患