「腸閉塞を侮ってはいけません(前編)」では、腸閉塞の原因や腸閉塞とはどのような疾患なのかご紹介しましたが。後編では 腸閉塞 の現れ方や検査方法、治療法をご紹介します。
腸閉塞を侮ってはいけません(後編)
腸閉塞の現れ方
腸閉塞の典型的な症状は腹痛です。それも突然吐き気や嘔吐、顔面蒼白、冷や汗と一緒に起きます。持続性で激しい時は、脈拍、呼吸が弱まりショック状態に陥ることもあります。
疝痛は腸の蠕動運動の異常亢進で、痛みがある時とない時が繰り返し起きます。その際に、腸管がゴム管のように硬くなったり、蠕動運動の異常亢進による蠕動不安や腹鳴、嘔吐が痛みとともに見られたりします。
よく見られるのが嘔吐、腹部膨満、鼓腸で、嘔吐ともに限局した部分ではありますが、膨満した腸管を腫瘤として触れることがあります。
蠕動不安や腸管の硬直、糞便、ガスの排出などが、腸閉塞で腹部膨満が確認されると、結腸・直腸の運動が抑えられ、糞便、おならが出なくなります。
腸管内の液状とガスが混じり合うため、拡張した腸管壁に反響して金属性の雑音が聴こえます。
腸閉塞の検査と診断
一般的に加齢とともに炎症性の疾患や、他の疾患での開腹手術がもとでの癒着によるものが見られるようになり、特に高齢者に、原発性・転移性悪性腫瘍、S状結腸捻転、腸間膜血栓症などが多く見られます。
問診では当然手術歴を確かめます。次に視診、触診で、ヘルニア嵌頓の有無、高齢の女性では股ヘルニアを注意します。また、直腸の指診も行います。これに糞便の有無を診ると、直腸がんによる腸閉塞の診断ができます。
腸閉塞の臨床検査としては、尿検査(尿量減少、尿比重の増加)、血液検査(ヘマトクリット、ヘモグロビン、全血比重、血液粘稠度)水分、電解質の異常をチェックします。
そして画像診断です。腸閉塞の診断には画像検査がマストで、腹部単純X線撮影、超音波検査、CT検査、注腸検査(小腸造影、血管撮影)などが行われますが、患者さんによって検査も変わってきます。
腹部単純X線撮影は一般的には立位で腸管内のガスの状況を診ます。正常の場合は、成人では空腹時には胃と結腸にガスが認められますが、小腸内には認められません。それが、腸閉塞では小腸内に充満した腸管像と鏡面像が見られます。
マヒ性腸閉塞による小腸ガス像は、腸内に液状貯留がないので鏡面形成がありません。
しかしながら、X線だけで単純性か絞扼性かの判断をするのは難しいので総合的に判断・診断をすることが大事になります。
超音波検査では、キーボードサインと言って、次のような所見が見られます。それは小腸の拡張と溜まった内容がピアノの鍵盤のように見えることです。
それから、ツゥーアンドフローの所見では蠕動する小腸の中を内容物の移動が見えるのが正常なのですが、これが止まっている状態だと危険と見なされることになります。その他にも、小腸のひだの消失や腹水の所見なども比較的容易に見ることができます。
CT検査では絞扼性の腸閉塞の診断にプラスになる、内容物の貯留、腫瘤の確認、閉塞された腸管などの所見に有用です。
腸閉塞の治療
腸閉塞の治療に際しては、当然のことながら閉塞の原因を除去することから始めます。
単純性の腸閉塞は、ほとんどが癒着によるものなので、イレウス管で腸内容物の除去(腸管内の減圧)をすることでよくなりますが、3日ほど経っても効果がない場合は、手術の選択肢もあります。
絞扼性は腸管膜の血行障害が随伴するので、早いうちに整復した腸重積、腸捻転、ヘルニアの嵌頓を除いたものは、すぐに手術が必要になります。
腸閉塞は、かつては死亡率が高かったのですが、今では、治療成績も上がっていますので、早い治療が大切です。というのも、腸閉塞は放っておいて治ることはありません。
休日や夜間に腸閉塞と思われる症状が出現した場合は、すぐにでも救急要請をして、病院に行かなければなりません。それ故、一瞬の判断が大事になります。
まとめ
腸閉塞をあなどってはいけません(後編)
腸閉塞の現れ方
腸閉塞の検査と診断
腸閉塞の治療