病名が腸閉塞というだけに腸の手術治療が必要と思われる方も多いと思います。腸閉塞は病態によって分類され、比較的軽症のタイプから重症のタイプがあり、それぞれ治療方法も異なります。
今回は 腸閉塞 の病態からみた 治療 方法をご紹介します。
病態からみた腸閉塞の治療
腸閉塞の分類
腸閉塞は、何らかの原因による腸の通過障害であります。よって、腸が完全に閉塞しなくとも腸が動かずに内容物が充満する状態も腸閉塞となります。
腸閉塞をイレウスと呼び、分類もイレウスの名称を使われますので、以後、腸閉塞をイレウスと称します。イレウスには大きく分けて2つあり、機械的イレウスと機能的イレウスがあります。
機械的イレウスは、腸自体の病変によって腸管内腔の狭窄や閉塞を起こすものです。
機能的イレウスは神経や筋肉によるものが多く、腸管自体に障害物は存在しませんが、腸管を動かす神経や筋肉の機能が停滞して、腸管内に内容物が充満するイレウスとなります。
機械的イレウスの治療
機械的イレウスとして、閉塞した腸管にはガスや内容物が充満していることから、鼻から長い管を通し、体外にガスや内容物を排出する方法を行います。
腸管と腸管が癒着することで狭窄や閉塞を起こすものを癒着性イレウスといいますが、この管による吸引と減圧治療にてイレウスが解除されることも多いです。しかし、この吸引・減圧治療によっても改善が見られない場合は、手術治療となります。
他に腸管内の障害物によるイレウスがあります。その代表格が腫瘍です。この場合は先立って腫瘍を切除することが必要となります。腫瘍以外では、胆石や誤飲した異物、又は回虫の集団により腸管内腔が狭窄・閉塞を来たすことがあります。これらも同様に除去が必要となります。
機械的イレウスの中で最も重症であるのが、絞扼性イレウスです。
腸が捻れたり索状物がからまり腸が縛られた状態などを絞扼性イレウスといいますが、腸管にある血管もまき込んでしまうため、血液が滞り腸管壊死となることから、早急に絞扼を解除する手術が必要となります。
手術で絞扼を解除して血行を再建しても腸管に赤味が戻らない場合は、腸切除を伴います。
機能的イレウスの治療
機能的イレウスを細分化すると、麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられます。原則手術治療の適応はありません。
麻痺性イレウスは、腸管壁の神経が影響して、腸管運動が麻痺するイレウスです。管による吸引・減圧治療と併せて腸管蠕動促進剤の投与を行います。これにより腸管麻痺が改善されることが多いです。
痙攣性イレウスは、腸が痙攣することで、腸自体が収縮する通過障害です。特徴として鉛やニコチン中毒によって引き起こされる病気です。これも管による吸引・減圧療法と併せて鎮痙薬を投与し、腸の痙攣を抑えます。
イレウスの補助療法
イレウスが原因による全身状態の悪化もあり、イレウスの治療以外に全身状態の改善を目的として治療が必要となります。
イレウスの症状には嘔吐と腸管が停滞することによる腸管から腹腔への水分漏出があることから、高度の脱水症を伴います。体液の補充のため、点滴療法が必要となります。また、イレウス治療中は原則絶食であるため、鎖骨から管を挿入して、高カロリー輸液を点滴します。
絞扼性イレウスではショック状態になることがあり、昇圧剤などの持続注入を行うことがあります。壊死による毒素が全身に回ると、腎臓に毒素が集約されて急性腎不全となり、一時的に人工透析が必要となる場合もあります。
イレウスと高気圧酸素療法
通常人間は、約21%の酸素濃度と大気圧1気圧の中で生活しております。これを人工的に100%の酸素濃度下で大気圧2気圧以上の環境を作り出し、そこに人間を一定時間収容する治療があります。
これを高気圧酸素療法といいます。この治療法はイレウスにも適応があり、効果が実証されております。
病態として麻痺性イレウスや一部の癒着性イレウスを適応とし、イレウスの手術後にも腸管蠕動を早める効果があることから、装置のある医療機関では高圧酸素療法を併用しております。
まとめ
病態からみた腸閉塞の治療
腸閉塞の分類
機械的イレウスの治療
機能的イレウスの治療
イレウスの補助療法
イレウスと高気圧酸素療法