手術 を必要とする 腸閉塞 は重症であり、場合によっては命の危険を伴う病気です。手術をしなければならない腸閉塞とは何か、手術手技の方法、そして気になる術後合併症はどんなものがあるのかを詳しく説明します。
腸閉塞に対する手術治療の必要性
手術が必要な腸閉塞とは
腸閉塞はまたの名をイレウスといいます。医療機関ではイレウスの名称を使われます。イレウスには分類があり、手術が必要なのは閉塞性イレウスと絞扼性イレウスという病気です。
閉塞性イレウスは腸管の腫瘍や腸管と腸管との癒着が原因であり、絞扼性イレウスは腸管が捻り鉢巻のように捻じれてしまうことや腸管が紐を結んだように結節化する状態のことをいいます。
腸の状態だけで痛々しいのですが、大きな問題は血管をまき込んでしまう絞扼性イレウスにあります。腸を活動させるには血液が必要なのですが、血管もまき込んでしまうことで腸に血液が届かないこととなり、腸管は壊死してしまいます。
死亡した人間は戻らないように壊死した腸管は戻りません。それ以外に壊死した腸管から毒素が出て、腸管を覆う腹膜に感染し腹膜炎を起こします。
他に毒素は血液にも流れだし、敗血症や多臓器不全に進行しますので、絞扼性イレウスは放置することができない病気なのです。
閉塞性イレウスは、通過障害となる腫瘍の切除や癒着の剥離が必要となります。閉塞性イレウスは絞扼性イレウスよりも血行障害の進行は遅いという特徴がありますが、時間の経過と伴に壊死にいたるので、絞扼性イレウスと同様に手術が必要です。
絞扼性イレウスの手術とは
腸の絞扼を解除することが大前提となります。基本的には全身麻酔下で開腹手術となり、急性の病態であることから、緊急手術となるケースがほとんどです。
最大の山場は腸の絞扼を解除した後の血流があるかどうかです。この時に血管の拍動がない場合や腸管の色が赤味を帯びてこない場合は、回復は見込めないため壊死した部分の腸切除が必要となります。
閉塞性イレウスの手術とは
悪性腫瘍によるものであれば、悪性腫瘍を切除する必要があります。主に大腸癌によるものであり、小腸癌は極めて少ないです。悪性腫瘍を切除といってもステージにより異なりますが、基本的に腸管ごと切除することになります。
癒着によるものであれば、癒着している部分を剥離しますが、腸管壁の損傷を避けるためにも部分的に腸を切除する場合もあります。
イレウスの腹腔鏡手術
イレウスが癒着である場合、腹腔鏡を用いた手術が可能な場合があります。腹腔鏡手術はお腹に1センチ未満の穴を数箇所開けて腹腔鏡を挿入します。腹腔鏡を挿入した後に二酸化炭素を注入して術野を確保して行います。
非常に小さい手術器具を挿入して腹腔鏡で映された画面を視野に手術を行います。開腹手術よりも傷が小さく、低侵襲でかつ回復も早いというメリットがあります。
しかし、この手術は癒着に限定していることと、腹腔鏡手術を安全に行うためには、一定の経験が必要であるため、手術ができる医療機関は限られます。
術後合併症について
腸の手術であるため、腸の運動が低下する術後腸管麻痺になることがあります。腸の運動が正常に戻るまで時間を要することがあり、腸蠕動促進剤を投与して対応します。
イレウスに関しては嘔吐や腸管浮腫による腹腔内水分の漏出があることから、脱水症を引き起こすことがあります。点滴による補充療法で水分をコントロールします。
絞扼性イレウスでは、術後腹膜炎となる場合があります。壊死状況にもよりますが、多剤抗生物質の投与、腹腔内に膿瘍があれば管を挿入して持続的に体外に吸引する必要もあります。
壊死した際に流出した毒素が血液に入ると敗血症となり、毒素が全身に回ります。腎臓に毒素が回ると急性腎不全となり、一時的に人工透析が必要となる場合もあります。
実は腸閉塞自体も消化器外科手術後の合併症のひとつです。一度手術したとしても再発することも多く、以前に開腹手術を経験されている方は、特に絞扼性イレウスについて理解しておくことが必要です。
まとめ
腸閉塞に対する手術治療の必要性
手術が必要な腸閉塞とは
絞扼性イレウスの手術とは
閉塞性イレウスの手術とは
イレウスの腹腔鏡手術
術後合併症について